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アカメの悪魔  作者: 海蛙
3巻(想定)

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73話 剣闘試合

 三人で闘技場まで暫く歩く。


 途中好機の目のようなものを度々向けられたが、やはり姉さん達は有名なのだろうな。


 闘技場の目の前まで来たところで見知った顔が前に立った。


「お待ちしておりました。レイ殿、アルマ殿…そしてアカメ殿」


 一か月前に会った隻眼の男、ファングだった。


「えぇ、うちのアカメをよろしくね」


「かしこまりました」


 そう優雅に言う姉さんの顔にはいつの間にか、蝙蝠を模したかのような綺麗な仮面がついていた。


 よく見たらアルマくんも狼の仮面をつけている。いつの間に…。


「それではこちらに、アカメ殿は私と共にお願いします」


 ファングの指示通りに、僕は姉さん達とは別れ別室に通される。


 そこは待機所のような無骨な場所であり、中には誰も居なかった。


「では、ここでお待ちください」


「……あの、口調戻してくれませんか?なんかムズムズします」


 そこで僕はずっと違和感のあったことを戻してくれるよう頼んだ。


 いつかの日、僕に凄んできた人が敬語で話してくるのは凄く気持ち悪い。


「貴方は闘技場の参加者ではありますが、ベル殿からお借りしているゲストでもあるのですよ?」


「いいから、直して」


 問答無用と言わんばかりの僕の口ぶりにファングはため息をつく。


「分かったよ…逃げずに来たみたいだな?褒めてやる」


「どうも…リアは無事か?」


「約束通りだ。最も、お前が負ければそれまでだがな」


 ファングはそう言って、頭を掻きながら部屋を出て行こうとする。


「精々頑張れ、みっともねぇ真似すんじゃねぇぞ」


「リアを返す準備をしておけ。今からやった方が後々スムーズだぞ」


 「言っとけ」と言い残し、部屋を出て行ってしまった。


 始まるまでの間、僕はストレッチをしながら精神統一をしていた。


 色々不安なことや雑念が浮かんでは来たけれど、ゆっくりと静かに、少しずつ消していった。


 そして、時は来た。


「ッ!」


 いきなり目の前の壁が動き出し、上に広がる。


 そこから割れんばかりの声が濁流の如く入って来て耳を劈く。


 遂にか…。


 魔力を静かに、されど確かにゆっくりと巡らせ始める。


 顔に仮面を出現させ、僕は開けた道を進んで行った。


 近づくごとに聞こえてくる声が大きくなっていく。


「今宵貴方が目撃するのは新たなる悪夢の始まりか!それとも伝説の始まりか!悪魔となってまだ日の浅い若輩者!されど確かに進み続け、今この舞台へと足を踏み入れた!」


 やかましい実況のような声が飛び込んでくる。それに合わせ、会場の熱も上がっていく。


 僕が姿を現すと、その熱は一気に最高潮となった。


「さぁ!王に見出されし存在よ!お前は何を見せてくれるんだ!我々の期待に応えてみせよ!己が願いを掴み取れぇッ!」


 なんだ期待って、そんなものどうでもいい。


 殺しの現場を喜んで見ようとする連中の気なんて知るか。


 僕は、僕の望みを叶えるためにここに居る。


「では、主催であり支配人でもあるこの御方、アヴァリス様より挨拶をお願いします!」


 話を振られたアヴァリスはマイクを持ち、全体を見渡すように睥睨する。


「そこの小僧は何を隠そうベルと同じ力を持っている。まぁ地力は天と地ほどかけ離れているがな…。ひと月前は雑魚も良いところだったが、果たしてどこま…」


 そこまで言ってアヴァリスは口を止める。僕の眼に気づいたからだ。


 さっさと始めろ、そう言いたげな眼を。


「…クハっ!もう御託はいいな!見りゃ分かんだろ!ここに剣闘試合の開催を宣言する!さぁ!殺し合えぇ‼」


 アヴァリスの宣言が響き渡り、闘技場が割れんばかりに盛り上がる。


 それと同時に僕がいる場所と反対側の門が開き、ぞろぞろと悪魔が出てくる。


「……」


 僕は近くの燭台の影からナイフを形成し、僕の方に射出させて掴み取った。


 何か変などよめきが起こったけど、まぁ僕には関係ない。


 出てきたのは五人ほど、まずは小手調べという事か。


 そのうちの一人の大柄の男が、舐めたように僕を見下ろして近寄ってくる。


「いくら化け物と同じ力だってよぉ…まだひよっこだろうが。こんな奴を殺すだけで大金が手に入るなんて安いもんだよなぁ」


 ゲラゲラ不快な笑い声を響かせてる。


「…一つ聞こう。これから出てくる私の相手は、皆貴様のような理由の奴なのか?」


「舐めた口利いてんじゃねぇぞ。知らねぇけどそうなんじゃねぇか、お前は猛獣の群れの中に放り込まれたウサギってわけだぁ!」


「あ!お前ずりぃぞ!」


 大男は持っていた棍棒を振りかぶり、その後ろの男が非難を浴びせる。


 さしずめ、とどめを刺した奴には追加報酬、みたいな感じなんだろうな。


 …まぁ、良かったよ。


 そういう理由なら遠慮なく殺せる。


 僕は棍棒を受け流し、首にナイフを当てそのままクルッと位置を入れ替えながら切り裂く。


「かッ⁉ゲホッ…!」


「悪く思うな」


 背中から心臓にナイフを突き刺し、そのままナイフから魔力を炸裂させる。


 心臓を破壊された大男は力なく倒れ、息絶えた。


 次。


「ッ!こいつ強いぞ!」


 今更過ぎるが、やっと殺し合いであることを自覚出来たのか残る四人が本気になって構える。


 僕は今しがた死体になった大男の身体を相手に向かって放り投げる。


「何をっ…」


 さて、余談であるが、基本的に生きている相手に魔力に関する干渉を行おうとするとレジストされることになる。


 相手が悪魔や精霊教会の騎士なら少なからず魔力に対する耐性を持っており、それを超えた魔力量で干渉しなければ影響を与えることが出来ない。


 僕の能力も例に漏れず、生きている相手の影を利用しようとすると当然レジストされる。


 余程実力差があればそれを突破できるけれど、今の僕にそれは難しい。


 だが、死体となれば話は別だ。


「がぁッ!」


 大男の死体から生み出された無骨な影の槍が他四人を下から貫いた。


 悲しいことではあるが、死体となった身体に生きている判定はないらしい。


 感情や想いがこの力のエネルギーだとするのなら、所謂魂にこそエネルギーの核があるのではないかと考えられるが…この現象がはたまた別の理由で成り立っているのかどうかは謎である。


 だが、今は利用させて貰おう。


 あっという間に五人を瞬殺して見せた。これでアヴァリスも分かっただろう。


 チマチマ生半可な相手など出してくるな、時間の無駄だ。使う駒を考えろよ、と。


 しかし、パフォーマンスとして魔力を使い過ぎた。今の相手程度なら魔力なんてほとんど使わずに倒せた。


 次から気を付けるとしようか。


「…早くしろ、次だ」


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