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アカメの悪魔  作者: 海蛙
3巻(想定)

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82/97

72話 試合当日

 温くなった夜の風を浴びながら、ゆっくりと身体をほぐしていく。


 いつもはこんなに念入りにやらないけれど、今日は万全を期したい気持ちだから。


 粗方ほぐし終わると、今度はジャンプしながら身体に動く感覚を慣らしていく。


 魔力の流れも澱みない、戦いの前だと言うのに酷く落ち着いている。


 目標をただ一つ心に据え、ちゃんと集中できるからだろうか。


 最後のジャンプで思いっきり宙に跳び上がる。


 夜空は澄んでおり、所々に雲はあるけれど、満月を覆い隠す雲は何一つとしてなかった。


 …待っていて、リア。


 そのまま一回転して着地すると、フレイが僕を呼びに来てくれた。


「アカメさん、そろそろ…」


「うん、ありがとう」


 フレイに先導され向かった先は厨房。


 いよいよ剣闘試合本番である。


 やれることはやった、後は全力でやるだけだ。


 厨房につくとシアさんを始め、レイ姉さんやリナさん、そしてッ⁉


「まだいたのか血の兵士!」


「は?ちょっ!」


 アルマくんを模した血の兵士だと反射的に認識して魔力収束で一気に強化した拳で殴りかかる。


 いつもならこの速さと力ぐらいで相手の防御を弾けるのだが、今回は簡単に受け止められてしまった。


 姉さんまさかまた強化個体を⁉


「…おい、いきなり殴りかかってくるとはどういう了見だ?」


「え…あ、えっと…あはは…」


 血の兵士から声が聞こえたので、まさかとは思ったが…本物のアルマくんでしたね、はい……。


 いや、ね…戦い過ぎて反射で攻撃しろって身体が勝手に…


「か、身体が…勝手に…ね?あはは…」


「俺が何したってんだよ…」


 アルマくんは僕に呆れたようにため息をつく。ホントごめん…。


 だけど呆れたのも束の間、すぐに笑みへと変わる。


「でもまぁ…中々強くなったじゃねぇか」


 その言葉に僕は表しようもない高揚を覚えた。


 やっぱり、師匠から褒めて貰えるというのは嬉しいものだ。


「魔力操作を覚えたらここまで伸びたんだ。アルマくん達も早く教えてくれればよかったのに」


「馬鹿言え、本来だったら教えるのはもっと後だった。お前は身体技術の基礎がまだ出来てないんだからその段階はまだ早いぞ。さっきだってもう半歩早く踏み込めば当てれるかもしれなかったのに」


 まさか小言を言われるとは思わず、苦い顔をしてしまう。


 せっかく頑張って強くなったのに……重点的に言われるのが小言って……。


「それに魔力操作はリヒトが主だろうが。お前は何で教えなかったんだよ」


「それはそうだろう」


「うわっ!」


 気配もなく後ろに回り込まれていたので、思わずびっくりしてしまう。


 そろそろこのいきなり現れるの止められないのかな?


 まぁ本人がどこか面白がっている節があるし……当分は終わらないだろうな。


 リヒトさんが僕を仕方のないものを見るような目で見てくる。


「そもそも自分で気づけるものだろう。こんなところまでわざわざ教えていたら私が教える価値などない」


「……さいですか」


 全く教える気はなかったということが分かりました。


「二人とも、アカメくんも頑張っているんです。大事な勝負の前に心を乱すようなこと言わないでください」


 シアさんがそう言ってくれて二人とも口を閉じるけど、「いやでもさぁ…」みたいな顔してる。もうやめてよ…。


「…そう言えば、ベルはどこ?」


「やることがあるからって出ていっちゃった。どうせ勝てるだろう?って」


 姉さんが教えてくれたが…言っている姿がありありと想像出来るので思わず息を吐くような笑いが出る。


 あいつは…そういう奴だよな。


「アカメ」


 姉さんは僕をぎゅっと抱きしめる。


「大丈夫、アカメは強くなったよ。お姉ちゃんが保証する。だから、リアと一緒に帰って来てね」


「勿論」


 僕は特に憂いを出すこともなく即答した。


 そこ答えに満足したのか、姉さんは顔をあげて微笑む。


「では、そろそろですね」


 シアさんはパンデモニウムまでの転移ゲートを広げてくれた。


 向こう側の遠くの方から微かに活気のある喧騒が聞こえてくる。きっとアヴァリスの剣闘試合の客だろう。


「じゃ、行ってくるね」


「アカメさん!リアと無事に帰って来て下さい!」


「うん、必ず」


 皆に手を振り、ゲートを潜る。


 そして、この夜にも関わらず一際強い明かりを放つ円状の大きな建物に眼を向けた。


「…あそこか」


「だね、行こっか」


「へ?」


 後ろを向くと姉さんとアルマくんがいた。


「え…なんで?二人とも?」


「そりゃあ、私達だって名のある悪魔だもん。招待されてるよ。いつもは無視してるけど今回はアカメが出るからね。しっかり見るよ!」


「俺はレイ様の護衛だ」


 えぇ…もう送り出す雰囲気だったじゃん…。


 だから姉さんいつもよりも華やかなドレス着てたのね…。


 何だそれ…と思いながらも、まぁらしいっちゃらしいか、と思い直しため息をつくのだった。


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