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アカメの悪魔  作者: 海蛙
3巻(想定)

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69話 血の兵士

「…人?」


「そ、アカメの魔力量と多分同じくらいのね」


 そこには僕が普段持っているナイフと同じくらいの血の武器を持った、同じ背丈くらいの血の兵士と呼べるようなものが出来上がっていた。


 心なしか僕にちょっと似ているような…。


「じゃ、戦ってみようか」


「え?」


 姉さんがそうにこやかに言った瞬間、血の兵士が僕目掛けてナイフを突き出してきた。


「うわっ」


 反射で躱し、まずは相手の動きを見ることに注視する。


 なるべく隙が少なくなるように深追いはせず、機を伺いつつ突破口を見出すための攻撃の仕方。


 どちらかと言うと想定が相手が武器を持っているというより素手の時の戦い…か…た…。


 いや、これって…。


 試しにフェイントをかけて見ると割と簡単に引っかかったのでそのまま懐に飛び込んで喉元を突き刺す。


 血の兵士は力なく倒れ、液体となって消えてしまった。


「おーっ、凄いおめでとう!」


「姉さんどういうこと?これ僕だよね?」


 拍手して褒めてくれているところ悪いけど、疑問に思う事が多すぎてそれどころではない。


 今戦った血の兵士は僕そのもの、正確に言えばアルマくんと戦い始めて日が浅い時の僕の動きに酷似しているように思えた。


 再現?ただ血を操れるってだけでそんなこと可能なのか?


 姉さんはふふんっとドヤ顔をすると懐から小さい小瓶を取り出した。


「これ、アカメの血ね」


「えっ、きも」


 普段は絶対に言わないであろう台詞が思わず飛び出てしまった。


「ちーがーうー‼能力上必要になることがあるの!いくら私でも血まで集めて愛でたりしません!」


「あ…ごめんそうだよね、流石にね」


 流石に反射で傷つくこと言ってしまったから謝ったけど、日頃の行いのせいでもあると思うんだよね。


「分かってくれたよね!嫌いになってないよね!ぎゅーして!」


「いや何でよ嫌いになんて…あぁもう分かったよはいはい…」


 あまりに自然な「えっ、きも」過ぎて不安になったのか確認のハグを涙目で求められた。


 ……何この時間。


 特に嫌がることもなくさっさとハグしたことで落ち着いたのか、気を取り直して説明が再開される。


「…こほんっ。で、この血なんだけどね、今みたいな血の兵士を作る時に核となる人の血を入れるとその人を再現できるの。今のは私が手助けした時点の実力のアカメだね」


「え…凄くない?」


 今度は打って変わって凄さに感心してしまった。


 だから既視感があったのか…あれは紛れもなく僕だった。


「勿論制約はあるよ。魔力量はコピーする人を参照するんじゃなくて私が込めた分しか持てないし、固有能力は使えない。つまり魔力操作しか使えないってことだね。今のアカメに持たせてたのは私が作った血の武器だから固有能力じゃないよ」


「なるほど…」


 つまり魔力操作しか出来ないけれど、その人の戦い方や基礎的な戦闘能力自体はコピーされた兵士を創り出せると…。


 え…やっぱり凄くない?


 それが出来るなら…と嫌な予感が僕の頭をよぎる。


「ふふんっ、凄いでしょ。だからこういうことも出来るのっ」


 散らばった血に魔力を込め、次の血の兵士を作り出す。


 段々と形作られ、現れたものは…。


「……だと思った」


 目の前には少し背丈の小さい生意気そうな男の子、そうアルマくんだ。


「魔力量自体は今のアカメより少なくしているよ、さぁー勝てるかなぁ?」


 レイ姉さんがゴーサインを出すと、血の兵士は黒い稲妻を帯び、勢いよく突撃してくる。


 分かっちゃいたけどッ、速い!


 僕以下の魔力量のはずだろッ何でこんな動きが出来るんだ⁉


 始めは何とか対処できていたけれど、二手、三手を撃ち合い続けているうちにどんどん後手に回り、最後は腹に肘を打ち込まれ床に伏せさせられる。


「ッげほ!げほっ!」


「うん、まずはこのアルマ擬きに勝てるようになるところからだね」


 なるほど…確かにこれは姉さんが適任かも。


 いつもアルマくんと戦う時は明確に手加減されているのが分かってボコボコにされはするけれど、どこか真剣勝負の緊張がなかった。


 だけど、今姉さんが作り出した血の兵士はスペック自体はほぼトントン、あるのは純然たる技術と経験、実力差だけだ。


 それに…いつもなら届かないアルマくんの顔面に一発お見舞いするチャンスだ…絶対に攻略してやる…。


「…姉さん、ところでこの黒い稲妻みたいなのって?」


「ん?見るの初めて?魔力隠蔽をしないで一定の魔力量込めるとこうなるんだよ。アルマがどういう魔力の使い方してるのかも見て貰おうと思って」


 魔力隠蔽しないとこんなことになるのか、初めて知った。


 しかし魔力の使い方か…今までとにかくがむしゃらに戦うことだけに注力し過ぎてあまり意識していなかったかもしれない。


 基本は全身を巡らせて、要所で収束させて一点強化するのが基本だと思ってたけど、何か違うのか?


「…姉さん、もう一回」


「うん、行くよ」


 姉さんの合図でもう一度血の兵士と打ち合う。


 だが、やっぱり基本的な魔力操作は同じッ!?


 傍から見える結果は先程同様、今度は足を払われてそのまま後ろ回し蹴りをかまされ後方に吹き飛ばされる。


 …なるほど、これは確かに熟練度の差だ。


「アカメ、だいじょ」


「姉さん、もう一回」


 姉さんの言葉を遮って再戦を要求する。


 やってみたくなった。確かにこれが出来れば僕は劇的に強くなるかもしれない。


「分かった、行くよ」


 姉さんの合図が下り、今度は僕から攻撃を仕掛ける。


 早速やってみるか…ここっ!


 僕は普段の速度より圧倒的に速い速度で間合いを詰めた。


 そしてそのまま攻撃へ、いつもなら簡単に受け止められてしまうが今回の実力は五分。


 そしてこれなら…。


 血の兵士は僕の拳を受け止めようとしたが、受け止めきれず弾かれ態勢を崩される。


 いける!そう思い、がら空きになった右半身に追撃を叩きこもうとして


 ちょっと強くなった普通のパンチをトンッと当てただけで終わった。


「……ありゃ?」


 僕は血の兵士に腕を掴まれ、引き寄せられてそのまま顔面に裏拳を叩きこまれた。


「いッ…っ!」


 いつもより強化の回っていない身体に攻撃をぶち当てられたので悶絶して転がり回る。


 心なしか、アルマくん擬きが呆れたようなため息をしている気がする。


「アカメ!大丈夫⁉」


 姉さんが心配して駆け寄ってくるが、僕は内心で喜んでいた。


 失敗した、だけどこれは使える。


 アルマくん擬きを見て取って学んだことは、僕より強化のテンポ、切り替えが圧倒的に速いことだ。


 加速の瞬間、攻撃の瞬間、守る瞬間、全てにおいてアルマくんは魔力収束を瞬間的に使っている。


 収束は諸刃の剣、使えば強化した部分以外が脆くなってしまう。だから奥の手だと考えていたが、これが出来るようになれば話は違う。


 出来ることの幅が圧倒的に増える、戦闘のスケールが跳ね上がる。


 惜しむべくは僕の練度不足か。まだまだ収束の切り替えが戦闘のペースに追いついていないし、攻撃に転じている時は前のめりになって防御しなきゃいけない時に手間取る。


 先程の醜態はこれによって引き起こされた。


 課題はある、だが光明は見えた。


 ならあとはやるだけだ。


「掴んだみたいだね」


「うん、姉さんお願い!」


「じゃあ行くよぉ!」


 こうして、姉さんによる地獄の超強化特訓は幕を開けた。


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