58話 新しい家族
「本当ですか⁉ありがとうございます!」
ペットショップに戻り、あの時の店員さんに伝えるとすんなり飼わせてくれた。
ちゃんとした人に飼って欲しいと午前中に聞いたばかりなので、まさかの対応に少し驚く。
「い、いいんですか?適当な人には売らないんじゃ…」
「はい適当な方には売りません」
店員さんはアルビノの猫のケースの前でしゃがみ込む。
「貴方達はこの子の目を見ても気味悪がるどころか寄り添うような眼をしていました。誰にでも出来ることじゃないです。今こうして話していても命をぞんざいに扱うような方達ではないことも何となく分かります。だから、飼って貰えるなら貴方達のような人だったらいいなぁって思ってました」
「……お姉さん!私頑張る!」
リアが涙跡の残る顔で、それでもフンっと気合をいれて店員さんに宣言する。
その様子を見て、店員さんも優しく微笑んだ。
「うん、大事にしてあげてね」
「うん‼」
店員さんは準備をするからレジ前で先に会計を済ませて欲しいと奥に行ってしまう。
「お会計は…こちらになりますね」
うわぁ…たっか…。
やっぱり僕も少しくらい手伝った方がいいんじゃ…
姉さんは何でもないようにクレジットカードを出して一言
「一括で」
凄いなほんと。
本当に僕程度の助けなんていらなかったし、この金額をポッと払えるのもそうだし…何故か苦笑いが止まらないよ。
アルビノの猫の会計と一緒に、子どもにも分かるような猫の飼い方のガイドや猫を飼うにあたっての最初に必要そうな装備一式を購入した。
一緒にお願いした以上、当然僕にも責任はある。
一緒に勉強するぞ!と拳を上げると、リアも真似して「する!」と宣言した。
先程からリアのやる気が漲っていて大変可愛い。
まだかまだかとソワソワしながら、あのアルビノの猫を待つ。
やがて店員さんが奥から出てくる。手にはケージが握られている。
「猫さんっ!」
リアは駆けだしそうになるが、姉さんと手を繋いでいなければいけないことを思い出し、姉さんを引っ張りながら近づく。
店員さんはリアの前でしゃがみ込み、リアの眼を見る。
「この子、幸せにしてあげてね」
「うんっ‼」
今日一の暗雲が晴れたような元気な返事が響き、ケージを託される。
流石にリアには重いので僕が代わりにケージを預かり、布をどかして中を覗き込むとアルビノの猫が不思議そうな顔をしている。
リアは姉さんと僕の方を振り返り、花が咲くような笑顔を見せる。
「ありがとう!お姉ちゃん!お兄ちゃん!」
「うん、よく頑張ったねリア」
「ちゃんと面倒みるんだよ、お姉ちゃんも頑張るから」
店員さんはその様子を見て、穏やかな笑顔を浮かべていた。
「ところでリア、名前は決めたの?」
改めて建物を出て帰路についた辺りで聞いてみた。
パッとは思いつかないだろうから難しいかもだけど、名付け親はリアがいいし、リア自身に考えて欲しい。
リアは上を見上げて難しい顔をして唸っている。
「うーん…、ことばわかんない…。難しい…」
「そっかぁ…じゃあさ、リアが覚えてる綺麗なものから名前を取るとかどう?」
「おぉ、姉さんそれいいかも。リアはどう?」
「うん!きれいなものきれいなもの…」
リアは少し考える素振りを見せた後、急に僕の方を振り返る。
「どうした?」
「お兄ちゃんの眼、綺麗だった!」
え、口説き文句?何処で覚えてきたの?
それに何故…どこでそう思ったのかは分からないが、でもすっごくキラキラした顔で言ってくるし……うーむ…。
「じゃあ、その子の名前はアカメで」
「なるわけないでしょ」
紛らわしいったらありゃしない。
「なら…ルビーとかどう?」
「るびー?」
「赤くてキラキラしてる綺麗な石だよ。家に帰ったら見せてあげる。それで違うなって思ったらまた考えよう」
え、ルビーあるの?本当に金持ちなんだな。
若干引きつった笑顔をしていると姉さんが急にアルビノの猫のケージをひったくり、代わりに手に持っていた荷物を全部僕に預けてきた。
「あの姉さん、これは?」
「いやぁ、早く見せてあげたくなっちゃって。この子たちは責任を持って私が連れて帰るから、アカメは後から頑張ってきてね」
「え?いやちょっ」
とまって、と言い終わる前に姉さんは爆速で屋敷の方向にすっ飛んでいってしまった。
あっという間に遠くに行ってしまい、見えなくなってしまった…。
人通りのない路地に進んでいくから怪しいと思ったんだよ…。
そんな速度出したらリアと猫が!とも思うが、そんなことに気づかない姉さんじゃないので大丈夫だろう。
さて…雑用押し付けられて逃げられたな…。
しかも名付けの瞬間に立ち会えないかもしれないという時限爆弾を置いて。
へー、なるほど?そういうことするんだ…。
「ふっふっふ…。あの姉めぇ、上等だよ‼」
僕は荷物に配慮しつつ、現状で出せる最高速度で猛ダッシュするのだった。




