56話 修羅場
「リア、アイス美味しい?」
「うん!」
ペットショップからフードコートに移動し、皆でアイスを頬張っていた。
リアは先程の元気のない状態から幾分か回復しており、美味しそうにアイスを食べている。
その様子に胸を撫で下ろし、僕も自分の分を食べ進める。
「…にしてもアカメ、変な組み合わせね。せっかくダブル頼んだのに同じアイス二個にする人いる?」
「…これが好きなんだからいいでしょ」
僕はパチパチするアイス二個で注文を通した。昔食べてからずっとこれなのだ。
姉さんは抹茶とバニラのアイス、リアは苺とチョコレートのアイスでそれぞれダブルを頼んでいる。
……いいんだよ、皆は食べたいのが複数あるんでしょ。僕はこれだけなの。
ダブルにした意味ないじゃん、と陽さんに言われたがそんなことない。好きなものが二倍食べられて意味がないなんてことはないはずだ。
というか、陽さんも似たようなチョコ系統のアイスでダブル作ってるんだから言われる筋合いはない。
視線を感じたので眼をやると、リアが僕のアイスをジーッと見ていたので一口掬って差し出す。
「はい、リア。パチパチして面白いよ」
「いいの⁉」
眼を輝かせてぱくっと頬張るとパチパチした感覚にビクッとする。
「なにこれ!すごい!」
「ふふん、そうだろうそうだろう」
何故か得意げな気持ちになったが実際これは美味いのだ、正当な評価を受けられてとても嬉しい。
すると、今度は自分のアイスと僕を見比べて難しい顔をして唸っている。
「いいよリア。自分のは自分で食べな」
「でも…」
「お兄ちゃんはこのアイスが好きなんだ」
そこでリアは閃いたように僕のアイスに自分のスプーンを刺して掬い、僕に差し出す。
「はい、あーん」
なるほど僕のでやればいいのか、天才かこの子?
素直に従って差し出されたアイスを食べ、冗談抜きで世界一幸せな思いが出来た。
「ね、ねぇリア。私のも食べる?」
「姉さん、リアお腹壊しちゃうよ?」
「で、でもぉ!じゃあアカメがあーんして!」
何でだよ。別にいいけども。
というか、そんな見え見えのトラップにリアを突っ込ませるわけにいくか。
全くこの姉は、僕らとのスキンシップを望みすぎではないか?
まぁ本当に想ってくれているのは伝わるので嫌な気はしないんだけど…。
「え、アカメ?」
姉さんに従って僕のアイスをあーんさせようとしたその時だった。
後ろから聞き馴染みのある声が聞こえたので振り返る。
「あれ?陽さん、葵くん」
あれ?二人とも何でここに?遊ぶ約束ってここだったの?
何だそうだったのか、と顔が見れてちょっと嬉しくなっていると、葵くんが震えた指で姉さんを指差す。
「そ、その人は…だれ?」
何でプルプル震えてるんだ?
それに、姉さんの説明どうしよう…。
おばさんや護兄さん、ユウが家族ではあるけれど、もうこっちも家族みたいな感覚あるし…。
即答出来ずに返答に詰まっていると葵の表情がちょっとずつ怖くなっていく。
え、何で…?
どうしよう何でだ。陽さん助けて…。
そう思って先程から黙っている陽さんに眼を向けるも
「こ、こど、コドドドドドドド」
リアの方を見て故障している。
いや何でだよ何があったんだ。
ていうか陽さんは姉さん知ってるよね?いつもなんか察しいいはずなのに。
もう耐え切れずといった様子で葵くんが僕に掴み掛かってくる。
「え!葵くんなんで!」
「陽ちゃんと!ぼ、僕というものがありながら君って奴は!君って奴はぁ‼」
「ちょ、落ち着いて!誤解だって!」
ほんっとうに!陽さん助けて!
「ドドドドモモモモモ」
まだやってんのか!
故障する陽さん、何故か怒ってる葵くん、面白そうなものが始まったとニヤニヤしている姉さんに首を傾げながらアイスを食べるリア。
あぁ…味方がいない……。
「ご、ごめんねアカメくんっ!早とちりしちゃって!」
「い、いいよ。はは…」
誰も収拾がつけられなかった場、リアが「お兄ちゃんその人たちだれ?」と言ってくれたことで誤解が解けた。
そこから陽さんが正気に戻ってレイ姉さんは知り合いだと説明してくれて事なきを得た。
「と、言うわけで、改めて紹介するよ。僕を弟として扱う変人のレイ姉さんとその妹のリア。以後お見知りおきを、本当に覚えておいて」
もう同じことは起こしたくない…。
レイ姉さんは僕の紹介に合わせてリアを抱えながら前に出る。
「どうも!アカメのお姉ちゃんのレイです!こっちは世界一可愛い妹のリアです!」
「リアですっ!」
息ぴったりだな。リアが可愛い。
「ど、どうも!アカメくんの友達の葵と申します!」
「リアちゃん初めまして。私もアカメの友達の陽だよ」
リアは二人に挨拶され、姉さんの胸に顔を埋めてしまった。姉さんの勢いに合わせて挨拶したはいいものの、まだ人見知りの節はあるらしい。
「二人ともアカメと仲良くしてくれてありがとうね。お姉ちゃんも鼻が高いよ」
「お姉さんじゃないですよね?」
ついに陽さんにまで言われるようになったか。
「もう、陽ちゃんまでそういうこと言って…葵くんも、アカメから話は聞いてるよ。とってもいい子だって」
「え、い、いえそんな!…アカメくんこそとても優しくて…」
何だか居た堪れなくなってくるが、そんな僕の様子など関係なしに姉さんはどんどん詰め寄る。
「それでぇ?どっちが将来私のことをお姉ちゃんと呼んでくれるのかなぁ?」
「お、お姉ちゃんって、それって…」
「なんだったらどっちも私のことお姉ちゃんって呼ぶようになっても」
「えいっ」
「あだっ」
姉さんの頭にチョップを飛ばした、ライン越えである。
これ以上微妙な空気になってたまるか。
「二人とも、この後の予定は?」
「え、あ、この後は映画観ようって話だったけど」
「そっか、じゃあ別行動だね。また予定合わせて皆で遊ぼうよ」
「え、うん。また」
僕は姉さんたちを押してその場を速攻で退散した。
許せ、これが最善だ。
それに今日はリアが主役の時間だ、まだまだリアに色々なものを見せたいので時間が惜しいのも事実。
少し歩いたところで足を止めて姉さんと対面すると、ちょっと膨れ顔を作っていた。リアは僕がチョップしたところを撫でてあげている。
「何で膨れてるのさ」
「アカメって奥手そうだからお姉ちゃん手伝ってあげようとしたのに。どっちも良い子そうだからどうせなら二人共って」
この姉は…今度は強めに引っ叩いた方が良さそうだな。
「二人ってさぁ…基本一夫一妻でしょう?」
「うーん、でもそれって一般の話でしょ?王族とか一定の位があると多妻が認められてるし…アカメ王様になっちゃいなよ」
「姉さんバカ?…っていうか別に結婚するって決まったわけじゃないし!もうこの話終わり!」
「えー、素直じゃないなぁ」
姉さんはまだニマニマして聞きたそうにしてくる…やりづらいったらありゃしない。
「リア!次どこに行きた、い…とか…」
話を無理やり打ち切るようにリアに話を振るが、当のリアは僕たちの話は聞いておらず、明後日の方向を見つめていた。
「リア?」
「え、あ、なぁに?」
そこでやっと気づいたようにこちらを向く。
「どこか行きたいところある?」
「うーんと…分かんない…」
「ならどこか良いところ連れて行こう」と姉さんは張り切りながら歩いて行ってしまう。
先程リアが見ていた方向に眼を向けると、ペットショップ帰りなのか動物を連れた人が嬉しそうにしていた。
ポッピン〇シャワーが一番美味しい。異論は認めない(血涙)




