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アカメの悪魔  作者: 海蛙
3巻(想定)

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幕間 手を差し伸べた代償

「お、お許しを…許し…あぁぁあッ!」


 西にある禁足領域、パンデモニウムにある建物の一室で男の絶叫が部屋中に反響する。


 その絶叫を最後に事切れてしまったようで、物言わぬ屍と化して血で汚れた床に転がっている。


「チッ、もうくたばりやがったか」


 その男を絶命に追い込んだ張本人、ボルドーは心底不愉快そうに死体を蹴り上げる。


 その仲間が死にゆく様子を、他の四人は怯えながら見ていることしか出来なかった。


 ボルドーにとって今回の取引はとても重要なものであった。


 東の地、スローンで見つかった赤い眼を持つ珍しいガキ。


 そのガキをこちらの言い値で買うという気前のいい客が現れ、この取引を経て奴隷商会もかなりの飛躍を遂げるはずだったのだ。


 だが、情報の伝達ミスなのか、東側の支部がよほどの阿呆の集まりなのか、いつもの奴隷の引き渡しと同じような方法で運ばれてきた。


 それだけならまだしもよりによって奴隷の脱走を許し、あまつさえ奪われ、のこのこ空箱を持ってこちらに来たというわけだ。


 あまりにもふざけた顛末にボルドーは怒髪天の怒りを覚え、そして最早一周回って冷静になってしまう程であった。


 他の四人も後で締め上げるとして、あちらの支部も一度解体して一新した方が良さそうだ。無能に用はない。


 このチャンスを棒に振るような真似をしたんだ、全員に報いを受けさせねば気が済まない。


「…しかし、赤い眼に仮面か」


 この無能に懲罰を与えていた時に聞き出したことであるが、どうやら襲撃者はそのようなナリをしていたらしい。


 スローンにいる仮面をつけた赤眼、その特徴を聞けば真っ先に思い当たる化け物が一人いるが流石にそれはないと被りを振る。


 いくらこの無能共とて、かの王と相対すれば流石に格の違いも分かるであろう。


「よう、荒れてんなボルドー」


「ッ‼アヴァリス様!」


 後ろの扉から発せられた声に反射的に振り向き跪く。


 部屋に入って来たアヴァリスと呼ばれる男は身長は二メートルを超える程であろうか。筋骨隆々の体躯に黄金の貴金属を全身に身に着けている。


 何よりその放つ雰囲気が、目の前の男こそ絶対的な強者であり喰らう側なのであるということを有無を言わさず理解させられる。


 強欲のアヴァリス。強者犇めくこのパンデモニウムの地で一、二を争う力の持ち主であり、私の主でもある。


「何があったんだ、話してみろ」


「はいっ!実は…」


 最悪不興を買って殺される可能性もあることに心の底から怯えながらも、努めて表には出さずに事の顛末を淡々と語った。


 嘘を言うなどあり得ない。そんな自殺紛いのことをして死んでいった奴をボルドーは何人も見てきたから。


 全てを話し終えた頃、アヴァリスは考えるように顎に手を置いた。


「なるほどなぁ…じゃああれは本当なのかもなぁ」


「あれ、と言いますと?」


 どうやら不興を買ったわけではないことに安堵しながらも、ボルドーはアヴァリスに質問を投げかける。


「最近ベルの屋敷に見知らぬ奴が出入りしているらしい。しかも、ベルと同じ赤眼の仮面野郎がな」


「なんと…」


「あのベルに弟子かぁ?それともガキが出来たとか。いずれにせよ傑作だな」


 アヴァリスはゲラゲラと笑っているが、こちらは笑う気など毛ほども起きない。


 かの王がこのような些事に一々干渉してくるなどあまり考えられない。であるならば、奴隷を奪っていったのはそいつか。


 しかし、それではどうしようもないことも同時に分かっただけではないか。


 かの王とは別の奴が攫って行ったとしても、奴隷である赤眼のガキがいるのはあの屋敷に違いない。


 あの化け物集団の中から奪い返せと?不可能だ…。


「ボルドー、仕事の引継ぎをしろ。向かうぞ」


「え…ど、どこに?」


 苦虫を嚙み潰したような気分を味わっていたところに、アヴァリスはそう告げてきた。


 アヴァリスは逆に、お前は何を言っているんだとでも言いたげな表情をボルドーに向ける。


「決まっているだろう。スローンだ」


「っ!取り返しに向かわれるのですか⁉」


 真っ先に選択肢から除外した行動をアヴァリスが取ろうとしているため驚いてしまった。


 アヴァリスなら…とも思うが、あの屋敷の使用人が複数相手なら流石に分が悪いだろうし、かの王相手ともなると流石に…。


「なんだ?この俺には出来ないとでも言いたげな顔だな?」


「めっ、滅相もない!」


「まぁ、言いたいことは分かるがな」


 アヴァリスは笑みを浮かべ、跪くボルドーを見下ろす。


「なぁに、俺も馬鹿じゃない。手はあるさ。それにだ…俺の庇護下に入っているものは全て俺のものだ。この俺から奪っておいてただで済むと思われたんじゃあ俺のプライドが許さん。例え、相手がベルであったとしてもなぁ…」


「っ…!」


 ボルドーの頬から冷や汗が伝う。


 自分のものに手を出され、我が主は怒っているのだと直感的に理解する。


 その強烈な気配に当てられ、息を殺していた無能四人は泡を吹いて気絶してしまった。


 次元が違う…何とも頼もしい…。


 ボルドーは諦めるしかないと思っていたものがもう一度手中に収まるのだと確信し、頭を垂れた裏で下卑た笑みを浮かべるのであった。


そこそこ文量があったので幕間だけ投稿して一日分にするという暴挙に出ます!

いっぱい投稿するとクドいかもとか…すまん!

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