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アカメの悪魔  作者: 海蛙
3巻(想定)

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53話 屋敷探検

 夜になってからベルの屋敷に赴き、いつものようにアルマくんが待っている訓練場に足を運んだのだが…


「おーうアカメ、来たか」


「…どういう状況?」


 胡坐をかいて頬杖を突くアルマくんの肩にリアちゃんが乗っている。


 リアちゃんはアルマくんの頭をわしゃわしゃといじっているが、アルマくんは諦めたかのようにぼけーっとしている。


「お兄ちゃん!」


「こんばんはリアちゃん。それでアルマくん、どうしたの?」


「フレイがリナに仕事教わってんだ。その間俺がこのチビの面倒を見ているというわけだ」


「な、なるほど…」


 何でアルマくんが、とは聞かないでおこう。聞いたらなんか面倒そうだし。


 しかしフレイさんが…大方、何もせずに世話になっている状況が落ち着かなくて自分からお願いでもしたのかな?


 僕は訓練を始めるために端に荷物を降ろそうとした時、アルマくんからリアちゃんぽすっと肩に乗っけられて渡された。


「へ?」


「今日の訓練は休暇だ」


 アルマくんはそのまま訓練場を立ち去ろうとする。


「ちょ、ちょっと待ってよ!いいの本当に⁉」


「ずっと訓練続きだからな。最近は外での実践も増えてきて負担が増えただろうし、どっかで休みはやらねぇとって思ってたんだ。そいつに構いたそうにしてたし丁度いいだろ」


 何故バレた…アルマくんも段々僕のこと分かってきているのか?


 部屋を出て行こうとするアルマくんにリアちゃんが手を振る。


「ばいばいあるま」


「さんをつけろ、さんを」


 そう疲れたように言って今度こそ姿が見えなくなった。


 強めに言ってきそうなのに。きっと、僕が居ない間にこのやり取りを何回もしたんだろうな…。


 突然設けられた暇、上を向いてリアちゃんと視線を合わせるとこてっと首を傾ける可愛らしい仕草をする。


「散歩しよっか」


「うんっ!」




 リアちゃんを肩に乗せ、フラフラと広い廊下を練り歩く。


 考えてみれば僕もこんなにちゃんと屋敷の中を歩くのは初めてだな。


 新鮮な気持ちで進んでいると部屋から声が聞こえてきたので覗いてみる。


「はい、もっと背筋を伸ばして。ベル様に仕える者として恥ずかしい態度は厳禁よ」


「はい!リナさん!」


 ちょうどフレイさんがリナさんに教えて貰っている最中だった。


 こちらに気づいたリナさんが手を振ってくる。


「あ、一旦休憩でいいよフレイ。アカメくんにリアちゃん、どうしたの二人で?」


「アルマくんの訓練がなくなったから二人で屋敷を散歩しようって。ね?」


「ねっ!」


 リアちゃんが元気よく返事をする。可愛い。


「ははーん、アルマの奴サボったなぁ。でもまぁよく耐えた方でしょ」


「アルマくんにリアちゃん任せたのリナさんなんだ…」


 まぁ、そんなこと出来るのは僕の知る限りベルとレイ姉さんとリナさんぐらいのものか。


 フレイさんがおずおずと前に出てくる。


「すみませんアカメ様…リアの面倒を見て貰って…」


「あぁいいんですよフレイさん、お気になさらず。ただ…」


 言い淀む僕にフレイさんは首を傾げる。


「ただ、やっぱり様付けは止めて貰えませんか?何だかむず痒くって…」


「え、いやしかし…」


 何だか困ったようにしているがこちらだって困っているのだ。


 命の恩人かもしれないが僕は身分としてはただの学生で、様付けなんて縁遠い場所にいる。


 お互いにいやぁ…とかでもぉ…とかやっていると痺れを切らしたリナさんが口を挟む。


「もう!呼び方なんて何でもいいでしょ!フレイはアカメさん呼び!アカメくんはフレイ呼び!これでどう!」


「待って何で僕が呼び捨てなのさ⁉」


「一個ずつずらさないとフレイがやり辛いでしょ!我慢して!」


 そう言われては何も言えない…元々要求したのは僕だしな…。


「分かったよ…それでいいですか?フレイ」


「わ、分かりました!アカメ…さん」


 お互いに照れくさそうにもじもじしているとまだ不満げなリナさんが口を開く。


「アカメくんは敬語もやめる。それとリアちゃんも呼び捨てにしなよ」


「何で要求が増えるのさ⁉」


「いいじゃん別にここまで来たならさ。フレイばっかり呼び捨てはリアちゃんも可哀想だし。ほら、試しにリアちゃんのこと呼んでみて」


 何でこんなこと…とも思うが、のせられるままにリアちゃんの方を向く。


「…リア?」


「なぁに?」


 またもや首をこてっとしてキョトンとした眼を向けてくる。可愛すぎだろ、うちの弟のユウといい勝負だ。


「ふむ、これは中々…」


「リナさん、ですね…!」


 二人が何処か示し合わせたかのように納得し合っているので少々不本意である。


「何?そのリアクション?」


「いやぁ、赤い眼も相まって二人が良い兄妹に見えるなぁって」


 フレイさんがリナさんの言葉に激しく頷く。


 僕が、リアの、お兄ちゃん……。


 何だかしっくりくるようなこないような…。


 だけど、他の人には分からない苦しみを共有しているわけで…。



 レイ姉さんもこういう気持ちで僕を迎えてくれたのだろうか。


「お兄ちゃん、あっちいきたい」


 リアが僕の髪を引っ張って外に出るよう促してくる。


「あ、ごめんね。行こうか。ではお邪魔しました、頑張ってねフレイ」


「はい!アカメさんに報いることが出来るよう頑張ります!」


 フレイは包帯の奥でふんっとやる気を出すように鼻で息をする。


 そんなに気張らなくても…でも、前向きなのはいいことか。


 去り際、言い忘れていたことがあって扉からひょこっと顔を出す。


「あ、フレイ。メイド服似合ってるよ。その調子」


 それだけ言って部屋を出た。


 部屋の中からパリンっと何かが割れる音が聞こえたが、さっそくやらかしてしまったのだろうか。ゆっくり成長していって欲しい。



・・・


「…はぁ、アカメくん無自覚にそういうこと言うんだ……」


・・・



 しばらく廊下を歩いていると今度はリヒトさんに出会った。


「おや、アカメか。アルマとの訓練はいいのかい?」


「はい、今日は休暇だそうです」


 突然リアちゃんがリヒトさんに会うなり背中まで降りて隠れてしまう。


「随分と怖がられてしまったようだね」


 そういえばあの時リヒトさんはいつでもフレイとリアを殺せるような位置に居たっけ。


 でもアルマくんはもう警戒されてなかったな…何か別の要因があるのではないかというのは黙っておこう。


「その子も赤い眼だしポテンシャルは十分だから固有能力を持っているはずなのだがね。いつかこの屋敷の戦力になってくれそうだ」


「あ、確かに…」


 赤い眼は悪魔としての適性の最高峰、当然リアにも固有能力は備わっているはず。


 まだ魔力操作も分かっていないようだし使うのはまだ先かな?


「フレイも中々ポテンシャルはあるようだし、二人まとめて鍛えればそれなりかな」


「え、フレイにも固有能力が?」


「あぁ、僕には何となく分かるんだよ」


 知らなかった…二人とも僕が思っているよりずっと優秀だったんだな。


 まさか追い抜かれるなんてこと…いや流石に……。


 特に理由はないけど、次回からの訓練はもっと張り切ろうと心に決めた。理由はないけど。


「お、やる気になってくれたようで何よりだ。精進してくれたまえよ」


「元からやる気ですけど?焦ってないですけど?」


「おっと失礼。でも、こんな風に廊下をほっつき歩いていたって残り二人の使用人を見つけることは出来ないよ」


「分かってますよ。それ目的じゃないですから」


「ならいいんだ。あの二人はシアのように上手くはいかないからね」


 リヒトさんはそれだけ言い残して僕たちが歩いてきた廊下の奥へと消えて行ってしまった。


 リアはリヒトさんが行ったことを確認すると肩からひょこっと顔を出す。


「リア、リヒトさん怖い?」


「……ちょっと」


 なるほど、まぁ目的の為なら手段を選ばなそうな人ではある。


 それでも僕の師匠の一人でもあるわけで、出来るならば仲良くして欲しくはあるが…。


そのまま僕たちは、シアさんのいる厨房へと足を進めていった。


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