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アカメの悪魔  作者: 海蛙
3巻(想定)

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51話 未来で

「調子はどうですか?」


「あ、貴方は…」

 

 屋敷に帰ってきてから数時間が経過した。

 

 フレイさんとリアちゃんのことはリナさんやシアさんが世話をしてくれるということだったので、僕はいつもの訓練をアルマくんと行った。


 今日の立ち合いはいつも以上に苛烈だった。


 アルマくんの僕への評価が上がったからとポジティブに考えてもギリマイナスになるぐらいの厳しさだった…。


そうしてくったくたになった頃、こうして二人の様子を見に来たというわけだ。


「お兄ちゃん!」


「わ、ちょ」


 リアちゃんが僕を見るなり眼を輝かせて抱き着いてきた。


 随分懐かれたものだなぁ…何でだ?


 別れた時とは様子が違い、清潔な服にお風呂にでも入ったのか身体も綺麗だ。


 足枷もないし、元気に走れているところを見るとちゃんとご飯も食べさせて貰ったようだ。


 テーブルのところにお菓子もあるし…いい匂いがこっちまでくる、シアさんが作った焼き立てかな?


 フレイさんの方も元気そうだし、包帯も新しいものに取り換えられている。


「アカメ様」


 フレイさんは両足を折りたたんで床に座ると頭を下げた。


「助けて頂いたこと、感謝をしてもし切れません。私たちを受け入れるのに随分と無理を通したご様子でしたし、何とお礼を申し上げればよいか…」


「や、止めてくださいフレイさん!あの時にも言った通り、僕が助けたいと思ったから助けたんです」


 無理やり身体を起こさせるがフレイさんの申し訳なさそうな雰囲気は解けない。


「ここまでして頂いたのに…私には何も返せるものがありません。こんな醜女など抱きたくないでしょうし、お金になるものだって……」


「何言い出すんですか止めてください⁉」


「ですがッ‼」


 随分と思い詰めた様子だ。ベルのせいで…おかげで、表情が隠れている人相手でも何となく分かるようになってきた。


 きっと、こんなに人から何かを貰ったことがないのだろう。


 向けられる善意が、きっと怖いのだろう。


「フレイさん」


 僕はしゃがんで眼線を合わせ、フレイさんの目を見た。


 包帯の奥から覗く目は、とても不安そうに揺れている。


「確かに、貴方が今返せるものは何もないのかもしれません」


「ッ…はい、そうですね…」


 改めて突きつけられた現実に、フレイさんは沈痛な顔をして項垂れる。


 別に恩を返せというつもりはないのだが、本人の気が済まないというのなら僕に出来ることをするだけだ。


 この子達は自分の意思で抗い、逃げることを選んでここにいるのだ。


 未来を生きる力が、この子達にはある。


「なら、未来で返してください」


 僕の言葉にフレイさんは項垂れた頭をあげた。


「僕が未来で、貴方を助けて良かったと思えるような、そんな特大の恩返しをしてください。貴方もリアちゃんも幸せになって、尚且つ僕にも恩恵をください。それが、僕が貴方に望むことです」


 フレイさんは静かに涙を流した。零れる雫によって包帯に涙の跡がくっきりと残る。


 自分で生きようとしない者に未来はない。


 自分で選べない者に、望むものは掴めない。


 ここ最近で痛い程理解した僕が得た教訓を、フレイさんにも渡そうと思った。


「……中々難しいことを言いますね。私も幸せになれと?」


「はい、勿論です。僕はここの家主に似て強欲なんですよ。生半可なものだったら怒りますからね?」


 せっかく助けたんだ、どうせなら幸せになって貰いたい。


 その障害をなぎ倒すための力を、僕は今養っているのだから。


 フレイさんは涙を止め、強い目をした顔で僕を見据えた。


「承知致しました。貴方様に受けたこの返せぬほどの恩義、一生をかけて返していきます」


「うん、よろしくお願いします」


 様付けされるのは恥ずかしいからやめて欲しいけど……あと一生じゃなくても……。


 そんなくだらない返しが頭に湧くが全部かき消す。


 これは彼女の覚悟の問題だ。ここでそれをどうこう言うのは失礼になる。


 リアちゃんがフレイさんに駆け寄り頭を撫でる。


「泣いてる?どこかいたいの?」


「…大丈夫…これはっ、違く、て……」


 フレイさんはリアちゃんと強く抱きしめ、改めて涙を流した。


 リアちゃんは変わらず「よしよし…」と頭を撫でている。


 僕はそんな様子を微笑ましく見ていたのであった。


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