50話 三流…二流…
お互いが譲れぬものを抱え、激突しようとしたその時
「何してるの!」
「「ッ⁉」」
突然階段の上からレイ姉さんの怒りの声が降ってきて僕とアルマくんは同時に止まる。
ね、姉さん?どうしてここに?
レイ姉さんはそのまま階段から降りてきて僕たち二人の前に立つ。
「二人とも、今の訓練の雰囲気じゃなかったでしょ!本気でやり合う気だったでしょ!喧嘩でもしたの⁉お姉ちゃんに話してみなさい!」
「い、いや、ちがっ、姉さん違くて」
「何が違うの!ほら二人ともごめんなさいしなさい!早く!」
「れ、レイ様これには訳が」
「早く!」
強情なレイ姉さんに折れ、僕たちは仕方なく謎に二人とも謝る羽目になった。
レイ姉さんと一緒に降りてきたリナさんと後ろのリヒトさんは笑うのを我慢してプルプル震えている。こいつら…。
アルマくんは顔を赤くして別の意味で震えている。何か、ごめん…。
僕らがいつもとは違う剣呑な雰囲気を出していたからレイ姉さんも焦ってしまったのだろうか。僕らからその雰囲気が霧散すると、少し落ち着きを取り戻していた。
「…それで、何があったの?」
「はい、アカメが部外者をこの屋敷に招き入れまして…」
「ふぅん…」
レイ姉さんはそこで初めて僕が連れてきた二人に眼を向けた。
少しぴくっとなったような気がしたが二人を見定めるようにジッと見た後、僕に向き直る。
「アカメはあの二人をどうしたいの?」
真剣に向き合って答えようと思い、仮面を解いて姉さんを見る。
「助けたい。だけど僕一人ではどうしようも出来ない。だから、この屋敷に置いてあげて欲しい」
「置くこと自体に問題はないわ。だけど、その二人が私たちの敵ではないと断定はできないのよね」
「それは…そうだけど、でも…」
「もしその二人が裏切った場合、アカメはどうする?」
考えてもいなかった質問に固まってしまう。
あの二人が裏切った場合…僕は、どうすれば……。
「……けじめとして、僕の首一つでどうにか…」
「三流ね、そんなことお姉ちゃんが許しません」
「ッ…なら、責任を持って僕がその二人をころ」
「二流。」
「……」
なら、どうすれば受け入れて貰えるんだ…・
考えようにももうどうすればいいのか分からず、悲痛な顔をする僕に姉さんはため息をつきながら頭を撫でた。
「でもまぁ、アカメの覚悟は伝わったわ。いいよ、あの二人はこの家で責任を持って守ってあげるわ」
「よろしいのですか?レイ様」
「いいの。弟の初めての我儘だもの、こんなに切実そうなら聞いてあげなくちゃ」
「…ありがとう」
「どういたしまして」
でもね、と姉さんは僕にだけ聞こえるように耳打ちしてくる。
「まだまだだよアカメ。ベルならもっと尊大で傲慢な答えを以って納得させてくる」
「……なんでベルが出てくるのさ」
「喋り方とか意識してそうだから。それにアカメはあのくらいになれるポテンシャルあるんだから、もっと多くのものに手を伸ばすために心も身体も強くなってね」
「…頑張る」
「よろしい。じゃあ今回は今まで頑張ってきたご褒美ということで」
レイ姉さんは真剣な雰囲気を霧散させると僕が連れてきた二人に寄っていく。
「わ、私たちはどうすれば…」
「アカメに感謝しなね。ここに居ていいよ、アカメに免じて守ってあげる」
レイ姉さんはリヒトさんに下がるように命じ、包帯の子から赤い眼の子をひったくる。
「あ、あのっ」
「ねぇねぇ、お名前は?」
「…リア、です」
リア、と名乗る赤い眼の子は姉さんに少々怯えながらも勇気を出して口を開いた。
「リアちゃんっていうのね。リアちゃんはどうしたい?」
「…お姉ちゃんと、そこのお兄ちゃんと一緒がいいです……」
リアさんの答えを聞いて満足そうに頷くと、今度は包帯の子に眼を向けた。
「貴方の名前は?そしてどうしたい?」
「……私は名前がありません。顔もこうして見えないのでずっとフェイスレスと呼ばれていました。…そしてお許しいただけるのなら、ここに置いて頂きたいです」
包帯の子の意見も聞いて姉ちゃんはさらに大きく頷くと…リアさんに頬擦りしながら抱きしめ始めた。
「二人ともいらっしゃい!新しい家族として歓迎するわ!」
…え?
「ね、姉さん?」
さては初めからリアちゃんの可愛さにやられてたな?赤い眼の子っていうのもあって親近感湧いてそうだし。
「リナ!二人用に部屋を見繕ってあげて!リアちゃん!フレイ!部屋は別々がいい⁉一緒がいい⁉」
「一緒がいいです」
「ふ、フレイって私のこと…あ、は、はい、リアと一緒がいいです」
「分かったわ!リナ!大きめの部屋を用意して!」
「はーいかしこまりましたぁ!」
話がトントン拍子に進んでいき、唖然とするしかなかった。
本当に一芝居打たれていたのか…元々住ませる気だったんじゃ……。
そこまで考えてかぶりを振る。
皆の僕への問いかけは本気のものだった。敵か味方かも分からないこの世界で迂闊な行動をしたのは僕の方。
それを皆は受け入れてくれたのだ。
当たり前と思ってはいけない、これからも同じように助けたいなら我儘を通せるぐらいの力をつけろ。
横を見るとアルマくんもトントン拍子に進んでいく様子に唖然としていた。
「…レイ様あいつらに眼を向けた時からこうするつもりだったんじゃ……」
あ、やっぱりその側面はあったんだ。
僕が苦笑いで見ているとアルマくんも僕に視線をやり、少々照れくさそうに逸らした。
「…今回だけだぞ。またやりたきゃ、自分で出来るぐらいの力をつけろ」
「うん、分かってる」
アルマくんはそれだけ言って立ち去ろうとし、最後に僕の肩に拳をとんっと当てた。
「俺に向かって来るとはな。…いい覚悟だったぞ」
「ッ!うんっ!」
アルマくんはバツが悪そうにそそくさと立ち去ってしまったが、これが喜ばずにはいられるか。
だって師匠に褒められたんだ、誰だって嬉しくなるに決まってる。
一時はどうなるかと思ったが、何とか上手く行ってホッと胸を撫で下ろした。
50話まできましたね。100話のハーフ話二バーサリーってね。
…ごめん。
まだまだ書きます読んでってね!




