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アカメの悪魔  作者: 海蛙
3巻(想定)

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49話 甘さ

「あ、あの…」

 

 戦闘が終わり、赤い眼の子と包帯の子に歩み寄ると、包帯の子が盾になるように前に出ながらこちらに対話を試みてきた。


 そんなに怖いかな?怖いか。


「助けて頂きありがとうございます。ですが…見ての通り貧しい身で、差し出せるものが何もないのですが……」

 

 何か要求されると思っているのか。

 

 まぁ奴隷という話だったし、善意や無償での施しのようなものはあり得ない環境で育ってきたのだろうな。

 

 ひとまず話を聞くことにするか。


「君たちは何処から来たのだ?」


「はい。ここから西の方にある禁足領域であると、そこの男たちが話していました。恐らくそこからかと」

 

 なるほど。禁足領域を中心に奴隷の売買が横行していて、今回のこれはいわゆる商品の輸出的な感じなのかな。

 

 ふざけた話だ。


「……くしゅっ」


「寒いのか」

 

 赤い眼の子の方が寒そうに頬を赤くし、鼻をすすっている。

 

 確かにこの雨では体温を奪われるか。包帯の子もよく見たら震えている。

 

 全く、気が利かないな僕は。

 

 僕は着ている上着を脱いで包帯の子の肩にかけ、赤い眼の子の方は抱きかかえた。


「え、あのこれは…」


「嫌だったら済まないが我慢してくれ、寒いのだろう。少し移動したところに私たちの拠点がある。そこで休憩していくといい」


「嫌だなんてとんでもない!寧ろ何故ここまで…」

 

 …疑われているな。

 

 それは境遇を考えれば正しい反応と言えるのかもしれない。

 

 だが、どう言ったら信じて貰えるだろうか…。


 同情めいたことなんて言いたくない。この子達のことを何も知らないし、薄い言葉なんて吐きたくない。

 

 ならどうするか…と下を向いて考えると、僕の腕に赤い眼の子がしがみついていきた。


「あったかい…」


「………」

 

 …馬鹿か僕は、初めから答えなんて一つだろう。

 

 そのまま包帯の子に背を向けて歩き出す。


「行くぞ」


「え、あの、話は」


「理由なんてない」


「へ?」

 

 振り返り、もう一度強く宣言する。


「理由なんてないと言ったのだ。私が助けたいから助けた。それ以上でもそれ以下でもない」


「そ、そう、ですか…」


「疑うならそれでも構わない、だが他に当てもないのだろう。このまま野垂れ死ぬぐらいなら賭けてやろうという覚悟ぐらい見せてみろ」


「……分かりました。お願いします」

 

 包帯の子は少々逡巡したように視線を動かしたが、僕の腕に抱かれた赤い眼の子を見て覚悟を決めたらしい。


「よし、では行くぞ」

 

 よく決めることが出来たと心の中で褒める。

 

 この世界で生きていくなら、せめてそのくらいの覚悟は持って然るべきだから。



 


 屋敷の敷地に二人を招き入れ、扉の前で少し考える。

 

 何て説明しようか…捨て猫を拾ってきたとはわけが違うからなぁ……。

 

 受け入れてくれるか若干の不安はあるが、信じてついて来てくれてるわけだし僕が何とかするしかない。

 

 そう意気込んで扉を開け、すぐに僕は抱えていた赤い眼の子を包帯の子に投げた。


「え、なん」


「下がれ!」

 

 一直線に包帯の子に飛来する殺意を全力を以って受け止める。


「よく受け止めたな。これからの訓練もこうした方がいいか?」


「どういうつもり?アルマくん」

 

腕を振り払いアルマくんを後方に退かせる。

 

僕も険しい顔をしているが、アルマくんはそれよりも険しい顔をしている。


「どういうつもり?それはこっちのセリフだ」


「何が…」


「そこの奴、妙な真似をするなよ。少しでも不審な動きをすれば殺す」

 

 後方に視線をやると既にリヒトさんが二人の近くにおり、言ってしまえばいつでも殺せる状態にあった。


「あ、あの!私たちは!」


「黙れ、それ以上口を開けば殺す」


「あ、アルマくんこれは」


「お前もだアカメ。質問にだけ答えろ」

 

 有無を言わさぬその雰囲気に背筋が凍る。

 

 受け答えを間違えれば、二人は死ぬ。


 そう覚悟させるだけの圧が、今のアルマくんにはある。


「何故ここに部外者を連れてきた」


「…さっき助けた。凍えていて身寄りもなかったからここならって思って」


「そいつらが我々の敵ではない確証は」


「確証って……この子達は奴隷で敵だなんて」


「確証は、ないんだな?」

 

 アルマくんの目が一層険しいものへと変わる。


「な、何でそこまで警戒するんだ!僕だって部外者だったはずでしょ!」


「お前の場合はベル様が直々に連れてきた。そしてな、アカメ……我々にはベル様とレイ様を全力でお支えしなければならない使命がある。これは何があっても揺るがない。敵である可能性が少しでもある以上、そこの危険因子を引き入れるわけにはいかないんだよ」


「そ、そんな…でも!」


「黙れ。確証がない以上、何を言っても無駄だ」

 

 ……もう話し合いが通じるような状態ではないか。

 

 アルマくんが言っていることに反論が出来ない。つまりそちらの方が正論なんだろう。

 

 だけど、それでも僕は……。

 僕が無言でナイフを創り出して構えるとアルマくんも無言で構える。


「随分と強気だな」


「…この二人は僕が助けるって決めたんだ。決めたんだよアルマくん。なら、無理だと分かっていても乗り越えなきゃいけない場面だってある」


「だから勝てると?勇気と無謀や蛮勇を履き違えるなという初歩から教えなければ分からないか?」


「それでも折れない覚悟と意志があるんだよ。分かってもらえるまで倒れるつもりはないから!」


「それは出来る奴が言っていいセリフだ!」

 

アルマくんが僕を制圧しようと最短距離で潰しにかかってくる。


 勝てる気なんてまるでしない。

 

 それに天地がひっくり返ったとしてもあり得ないが、万が一アルマくんをどうにか出来たとして、後ろにはまだリヒトさんがいる。


さっさと諦めるのが賢明なんだろう。


だけど…それでも…!

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