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アカメの悪魔  作者: 海蛙
3巻(想定)

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48話 悪魔の作法

 聞き慣れない悲鳴が聞こえたと思って来てみれば…本当にどういう状況だ?

 

 現在はアルマくんの修行中。最近は大分戦闘にも慣れて魔力操作も様になって来たので一人でスローンの中で悪魔共との戦闘を行っている。

 

 ベルと来たあの時は分からなかったが、今ははっきりと分かる。

 

 何処に悪魔が潜んでいて、何をしようとしているのかが。

 

 ベルの屋敷が一種の強力なテリトリーとなっているので目立つほど強い悪魔はこの辺りを避ける。現在の僕が動き回るのにも好都合である。

 

 まぁ実力差が分かるような奴らはあんな化け物集団が住み着いている場所に近づこうなんて思わないよな…。

 

 そんなわけでいつものように実践的な戦闘訓練を行っていたわけであるが、異変を感じ取ってきてみればこれである。

 

 小さな…赤い眼の女の子が泣き叫び、包帯ぐるぐる巻きの顔が分からない奴が殺されかけていて、周囲の男どもはげひゃげひゃ汚い嗤いを垂れ流している。


「答えろ、これはどういう状況だ」

 

 そうは言ってみるものの、突然現れていきなりこんなことをすれば怖くて口を開けないのもしょうがない。


「た…」


「ん?」


「たすっ、けて…くだ、さい!」

 

 赤い眼の少女は眼に涙を一杯に溜めながら僕に懇願してきた。

 

 赤い眼か…全く見たことがなかったのに、ベルにレイ姉さんと続いて三人目だぞ。

 

 ここ数か月の間に現れすぎだろ。赤い眼のバーゲンセールか?


「お、おい兄ちゃんよぉ」

 

 緊張から解けた男の一人がこちらを舐めたような態度で見てくる。


「俺らが誰か分かってんのか?俺らに手を出せばあのボルドー商会が黙っちゃいねぇぞ?」


「何だそれは」

 

 本当に何だそれは。


 こっちは悪魔になって日が浅いんだ、知っている前提で話さないで欲しい。


 こちらが本当に知らないのが伝わったのか驚いたような顔をされる。


「知らねぇのかよ、もぐりかてめぇ。悪魔の間じゃ名の知れた奴隷商会だぞ」


「……この国で奴隷は禁止されているはずだが?」

 

 他国の状況は知らないがユートリピア聖王国に限っては奴隷の売買、そもそも持つことを禁止されている。

 

 それはいかに治外法権の禁足領域とて例外ではない。

 

 露骨に敵意を帯びた僕にまずいと思ったのか、後退りながらヘラヘラ笑う。


「お、表向きはそうだがなぁ…餓鬼じゃねぇんだ分かるだろ?そういうもんなんだよ世の中」


「…それで?この子たちは奴隷か?」


「あぁそうだ、分かったのなら邪魔すんじゃねぇよ。こいつをはっ倒したことはなかったことにしてやる」

 

 男は僕の肩にわざとドンッと肩をぶつけて通っていき、赤い眼の子と包帯の子を連れて行こうとする。

 

 …何かは知らないが、大きい名前がバックについていれば手が出せないとでも思っているのか?

 

 何かの威を借りなければ粋がることも出来ない小物が…見逃すと思うのか?


「待て」


「あ?」

 

 僕はゆっくりと男達の方に向き直り、睨みつける。


「そのボルドー商会っていうのには逆らってはいけないってのが暗黙のルールなんだな。知らなかったよ、私はまだこの世界に疎くてね」


「お、おう。分かればいいんだよ。ならさっさと行けよ」


 言葉とは裏腹に底知れぬ雰囲気を放つ僕に男は気圧される。


「だけど、もっとシンプルなルールが悪魔の世界にはあることは知っているか?」


「な、何を…」

 

 先程勇気を出して助けを求めてきた女の子の方を見る。

 

 足には枷が付けられ傷だらけで、身体にはいくつもの痣が出来ていることが分かる。

 

 悪魔なのは見て取れる。魔力操作も覚束ないことから成ったばかりであることも。


 アルマくん達よりも幼く見えるのに悪魔とは、可哀想に……。

 

 回復も碌に出来ていないことから、栄養も与えられないことも分かる。

 

 劣悪な環境の中、そこの包帯の子と勇気を出して逃げてきたのだろう。

 

 その覚悟に、僕は報いようと思う。


「弱い奴は奪われるというシンプルなルールだ。そこの子達、奪っていくぞ」


「ッ粋がるなよ!」

 

 粋がっているのはどっちだよ。

 

 人数は先程一人減らして四人、周囲を取り囲むような陣形を作られる。

 

 そのうちの一人が先んじて剣を振りかぶる。

 

 だがその甘い剣筋を咎め、弾き返して胸の中心辺りを強打する。

 

 遅れて他の三人の攻撃、何の問題もないな。

 

 四方を囲まれた状態から一方向開いたのでそちらに後退しながら迎撃を行う。

 

 ほら、せっかく囲んでいたのにほぼ一対一だぞ。どうするんだ?


 「こ、こいつ強いぞ!」


 「怯むな!もう一度囲めば!」

 

 もう一度囲ませてあげると思っているところが甘いな。

 

 前から二人目の足元に突っかかるように影から足場を形成し転倒させる。

 

 すると三人目は道を塞がれ、先頭の男一人が孤立する。

 

 一対一でこの練度の差なら負けるわけがない。

 

 振り抜かれた剣に沿うように捌き、そのままがら空きの顎に衝撃が走るように掌打を加える。

 

 あと二人、囲めなくなったね。

 

 魔力隠蔽と視線誘導、体術を駆使し気配を消す。


 「どこ行きやがッ⁉」

 

 真横に回り込み、二人が一直線になるようにして蹴りを叩きこむ。

 

 勢いに任されるまま壁に激突した男二人、どちらも気絶したようだ。


「……ふぅ。まあまあだな」

 

 殺さずに無力化して制圧完了、我ながら強くなったものだ。

 

 まだまだリヒトさんの見様見真似だから格下相手にしか通じないけれど、ひとまず姿を消したように見せれたし。

 

 今回のことでボルドー商会っていうのにもう目を付けられることは確定している。

 

 だけどちょっとでもいちゃもんを防ぐためには部下は生かしておいた方がいいだろう。

 

 報告はされるだろうけど、死んで帰ってこなかったらどっちみちバレるだろうし。

 

 全く面倒だが、この子達を助けるって決めたのだから。仕方がなし。


 一息ついた後、振り返って改めて助けた子達の方に向かった。

立入禁止区域って仰々しいので禁足領域に改名しています。内容的にはまるで同じです。

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