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アカメの悪魔  作者: 海蛙
2巻(想定)

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45話 vs.人型

「すまない…俺にはこれが限界だった」

 

弘人くんの近くの邪霊を切り裂きながら戻ると第一声が謝罪だった。


「いや、十分だ。私と共に数を減らすぞ。ある程度減らしたら私はあの人型への攻撃を開始する」


「戦うのか」


「やらなければ終わらない。このままいつまで持つかも分からない以上討ち取るしかない」

 

僕の言葉を受け、弘人くんは覚悟を決めて剣を構える。

 

頼むぞ、皆を守るには今は君だけが頼りなんだから。

 

僕たちは同時に走り出し、邪霊の群れに突撃していく。

 

何度も大量に殲滅しているからか、邪霊の群れは僕が脅威だと判定しこちらに攻撃が集中してくる。

 

ありがたい話だ。これで戦闘に集中できる。

 

僕が正面から邪霊の群れを相手取って数を減らし、死角から弘人くんが数を減らす。

 

それでも中々数は減らず、魔力量が心配になるがもう一度広範囲殲滅を行うか検討している時、ふと人型の邪霊が眼に入る。

 

こちらを見ているが手は出してこない。

 

深淵《アビス》に入った時からずっと同じ体勢。座した姿勢のまま右手を地面に当てている。

 

まさか、と思い精製したナイフを人型に向けて複数投擲する。

 

人型は防御の姿勢を取る。その瞬間、一瞬ではあるが邪霊の召喚が滞った。


「なるほどな…!」

 

深淵自体に下級邪霊の召喚の能力自体はあるが、深淵の主たる人型があの状態…いやあの場所と状態の時にのみ深淵の機能にさらに干渉でき、この異常なまでの召喚能力を発揮しているのか。

 

人型の顔にあたる部分が露骨にしかめられる。

 

当たりだな。そうと決まれば攻め潰すのみ。

 

だが、人型も馬鹿ではなかった。初めて咆哮のようなものをあげ、こちらが干渉する暇を与えないように本気を出したのか邪霊の召喚速度が一気に上がる。

 

そして生徒たちにも攻撃をし始めた。

 

こちらが生徒を守っていることを理解しているのか…中々知能があって厄介だな…。

 

それにあいつが咆哮をあげた瞬間から急に邪霊の統率が取れ始めた。

 

群れとして操る力もあるらしい。

 

どうする、種は分かったがこれでは攻めに転じることができない。


「くっそぉぉぉお‼」

 

苦虫を噛み潰したような気分になりながら策を必死に練っていると、後ろから叫び声と共に光の斬撃が飛んできた。

 

今度は僕にではなく、邪霊の群れに向かって。


「わっかんない……」

 

京香さんは苦しそうな顔をしながらも覚悟を持った目で僕を睨みつけてくる。


「けどッ!今は皆を助けたいって!私がそう思った!今だけ…!今だけは協力してあげる!力を貸せ!」


「随分と上から目線だが…承った」

 

そうだ、それでいい。

 

僕も最近出来るようになったからあまり偉そうなことは言えないけれど、自分の殻に閉じこもっているだけでは守れるものも守れない。

 

自分の願うものを手に入れるためには、必死に足掻いて掬い取らなければならないのだから。

 

京香さんが加わったことにより少し余裕が出来た。

 

元々守る対象が散ってしまっていたから右往左往していただけで、一点に固まって貰っていれば二人もそこそこ戦える。

 

僕は全体的に屠るのではなく一直線に邪霊を屠る方針に切り替え、最短距離で人型に詰め寄る。

 

そしてその手に持った黒き刃を届かせたところで、邪霊の召喚が落ち着く。


「…ようやくだな。覚悟しろ」


「ガアァァァァァ‼」

 

人型が咆哮によって威嚇し、僕は無言で睨みつける。

 

ナイフを持った腕を止められ膠着状態であるが、お互いに魔力の出力を上げていく。

 

相手は魔力隠蔽を使う気がないのか知らないのか、段々と膨れ上がっていく魔力が感じられる。

 

お互いがお互いを負かそうと押し合いが続く中、押し負け後退を強いられたのは僕の方だった。


「ガッガッガッ…」

 

人型が不快に嗤う。

 

勘違いするなよ、これ以上の脳筋なやり方で魔力を消耗するのを避けたかっただけだ。

 

あのまま押し切ってやればよかった…という若干の悔しさを覚えつつ、迫りくる人型を迎え撃つ。


「ガッ!ガァァァ!」

 

攻撃自体はどれも単調なもの。

 

だが威力が桁違いだ。

 

人型が攻撃の流れで地面を殴ると簡単に抉れてしまった。

 

避けるか受け流す以外の択は取れないか…。

 

正直受け流すのもリスキーだ。なるべきならば回避で攻撃の機会を伺っていきたい。

 

減ってはいるが、未だ生まれ続ける邪霊の相手をしている弘人くんと京香さんの方へ行かないよう誘導しつつ対面する。


「ッここ!」


「ガッ⁉」

 

やはり知能があると言っても邪霊は邪霊、攻撃が大振りで隙が出来た瞬間に切り裂く。

 

そのまま態勢を崩したので追撃を…と、ここを狙っているんだろ?


「ガァァァ!…ア?」

 

そのまま追撃しようとした僕へ邪霊が見透かしたようにカウンターを放ってくる。

 

が、攻撃を当てるにはもう半歩遠い。


「バレてないとでも思ったか」

 

さらに致命的な隙を晒した邪霊に容赦なくナイフによる攻撃を行っていく。

 

カウンターを狙っていそうだと感じた時はまさかと思ったが、まさか本当に狙っているとは…。

 

驚きがかなり大きいが、僕の方がまだまだ上手である。

 

そんな小手先のトラップに、アルマくんに教えて貰った僕が引っかかるとでも思ったのか?

 

そこから先は一方的な戦闘だった。

 

なまじ知能が高いばかりにこちらの攻撃に怯えるようになってしまい、生半可なものしか飛んでこなくなった。

 

自分の手の内を全て見切られているような、そんな感覚なのだろうな。


「同情するよ…」

 

気持ちは分かる。僕もアルマくんに散々ボコボコにされているからね。

 

ただ、違いとしてはこれからお前は死ぬということだ。

 

慈悲はない。そもそもこんなところに深淵が形成されれば僕じゃなくとも精霊教会の騎士によって討伐されるのは必然だからだ。

 

何より、お前は僕の大切に手を出した。

 

お前を殺すしかこの場が解決しないというなら、僕も覚悟を決めようじゃないか。


「終わりだ」


「ガ…アアァ…」

 

死を悟りつつも最後の足掻きとばかりに放った魔力を込めて放たれた砲撃。

 

それを躱してしまった瞬間、後悔した。

 

運悪くその先に居たのは邪霊と戦闘を行っていてこちらに気づいていない京香さんだった。


「ッ‼」

 

反射的に全速力で駆ける。

 

だが追いついた頃には弾き返す余裕もなく、直撃を食らいながら何とか京香さんに当たるのを防いだ。

 

だが僕はそのまま吹き飛ばされ、深淵の壁に激突し血を吐き出す。


「え…おまっ…何で……」

 

困惑した声を京香さんがあげる。

 

無事なようだ…よかった……。

 

全くまだまだだな僕は…油断からこんなしょうもない結果を引っ張ってくるなんて…。

 

余りの情けなさに奥歯を噛みしめる。

 

内臓が傷ついている。骨も何本か折れている。

 

だが、修復しつつ気合で何とか立ち上がった。


「ア…悪魔の人!大丈夫⁉…ですか!」

 

後ろから陽さんの声が響く。

 

一瞬名前を呼びかけたな…危な過ぎるだろ…。

 

京香さんは幸いにも気に留める様子もなく、僕に抗議の目を向けてくる。


「何故だ!何故庇うような真似をした⁉」


「…自惚れるな。これは私の失態だ」

 

京香さんは複雑な表情をしているが、本当にそうだからそんな顔はしないで欲しい。

 

そのくらいの実力差があった。魔力だけで見ればトントンかもしれないが技術で圧倒的な勝利を収めることは出来た。

 

攻撃の誘導くらい出来て然るべき、それを怠って周囲を危険に晒すなど…京香さんに説教なんてしてる場合じゃなかったな。

 

僕は息を整えながら人型を改めて見据える。

 

相手も僕に手酷くやられて満身創痍であるが、その表情には下卑た嗤いが浮かんでいる。

 

こちらの弱点を改めて認識したな…?

 

人型は邪霊に対して咆哮を以って簡易的な命令でも下したのか、生徒を狙うように動き始めた。

 

まずいな…。


人型の邪霊は今一度深淵の能力を使おうと元の位置に戻ろうとしている。


それを防ぐには奴の相手をするしかない。


…どうする。

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