4話 魔力の基礎
「アカメ兄ちゃんそれ取って」
「ん、これね」
夜、僕は家で弟のユウと遊んでいた。
おばさんと護兄さんには不良に絡まれてバレないように隠れながらコソコソ逃げてきたため遅くなったという言い訳で何とか乗り切った。
本当か?という目で見られたが、実際変質者に絡まれたということでニュアンスとして全部が嘘ではないし、結果論とはいえ五体満足で帰ってはいるのでそこまで追及はされなかった。
「ふわぁ…私そろそろ寝ようかねぇ…」
「あぁ…奇遇だな、俺もそう思ってた…」
おばさんと兄さんがそうぼやく。
時刻は二十一時手前といったところだが、僕のせいで夜通し起きていた二人はもうくたくたになっている。
「ごめんね二人とも、心配かけて」
「別にアカメは悪くないけどよぉ…次からは連絡手段を忘れるなんてことはしないで欲しいぜ」
「う、うん…ごめん」
スマホは普段は持ち歩いているが運悪く今回は学校に置いてきてしまっていた。
まぁ例えあったとしてもあの状況では思いつきもしない程余裕がなかったけれど。
おばさんとユウ、兄さんはそれぞれの寝室に戻っていったため、僕も自室に戻る。
風呂にも入り寝巻の恰好となっている。通常であれば後は寝るだけなのだが、それを私服に着替え直した。ベルは迎えに来ると言っていたのでもうそろそろくる頃であろう。
そして窓を開け、外を見ると
「~~~~っ‼」
「お前はリアクションが顔に出やすいタイプなのだな。実に愉快だ」
もう既に窓辺で待機していたベルがいきなり現れ、僕は声にならない声をあげた。
こいつ実は性格悪いな?…いや性格いい奴はいきなり人の腕バッサリやったりしない。
「今日はコンタクトをしていないのだな」
「家族の前では大丈夫、それにこれから行くところでは誰も気にしないでしょ」
「それはそうだ」
僕はベッドに寝ているように見える偽装をちゃちゃっとしてベルの背中に乗せてもらった。
離れていく家を見ると家族への申し訳なさが増してくるが、必要なことであると割り切るしかないだろう。
「……どうやって飛んでいるのか分からなかったけど、何かを踏んで移動しているのか」
「ほう、もうそこまで見えるのか。流石に早いな」
何となくではあるが今まで見えなかったものが知覚できるようになってきた。これが所謂魔力という力なのだろうか。
「慣れてきたということなのだろうな。これなら魔力操作もさっさと覚えられるかもしれん」
「魔力操作?」
「すぐに教える、ほら着いたぞ」
ベル宅に着くとレイさんが両手を広げて出迎えてくれた。
「アカメー!昨日ぶり!お姉ちゃんと離れてとっても寂しかったでしょう!」
「昨日ぶりレイさん、今日は家でゆっくり過ごせたよ」
「茶番やってないで早く入れ」
不服そうな顔をするレイさんを置いてベルに続いて屋敷に入る。
そのままついて少し歩くと開けた場所に通された。
「力の使い方を教えると言ったな、基本はここでやる。私が居なくとも好きに使っていい」
「…分かった。それで、僕は何をすればいい」
「まずはさっき話した魔力操作を覚えてもらう」
ベルは右手の人差し指をピンと立てると、そこに魔力が集まっていく。
「それが、魔力ってやつだよね」
「やはり見えているか。それに…ふっ、上々じゃないか」
そう言ってベルが少々笑ったように見えた。仮面を被っているからあまり分からないが何となくは伝わってくる。
「魔力操作は我ら悪魔にとって基本のキとも言える。悪魔として生を受けられたとしても大半の死んでいくやつがこの魔力操作の何たるかを知らずに死んでいく」
「それは…なんで?」
「そうだな…例えば、お前は魔力が見えるだろう。それで私がどれほどの力があるか測ってみるがいい」
僕はベルを注視するが…びっくりするほど何も分からない。
しかめっ面になるほど凝らして見ても結果は変わらなかった。
「分からない。普通の人と全く同じに見える」
「そうだな。それは私が魔力操作によって欺いているからだ」
ベルは先ほどと同じく指先に魔力を集中させていく。
「悪魔になれば基本的に体内で魔力が生成されることになる。それを隠せなければ駄々洩れとなり、精霊教会の騎士や他の悪魔に感づかれることになる。前者に見つかった場合は即刻討伐、後者の場合でも運が悪ければ殺される」
「な、なるほど…」
「これは戦闘になった場合にも役に立つ。力量を悟らせない、技の起こりをギリギリまで隠す、魔力の消費の無駄をなくす…あらゆる場面において魔力操作が無駄になる場面はないと言っていい」
ベルは指先に集めていた魔力の存在を大きくしたり小さくしたりバラけさせたり希薄にしたりと様々な操作を行いながら僕に教授する。
「よってこれからお前には魔力操作の訓練を行ってもらう。課題は自身の魔力の隠蔽。出来るならばこの土日、二日間で習得してもらう。出来なければ出来るようになるまで月曜からの予定は学校含め全てキャンセルだ」
ベルは指先の魔力の塊を僕に打ち出し、向けたままの指先で僕を指しながらそう宣言した。
僕は軽く額を小突かれた感覚を覚えながらベルの言葉に頷く。
「今日家から出るなと言ったのは僕が魔力の隠蔽が出来なくて危険だからだよね」
「一応私がお前の魔力を隠してはいたが、万が一ということもあるのでな」
いつの間にそんなことを…いやありがたいけど。
「アカメ頑張って!お姉ちゃんも手伝うよ!」
「困ったらお願い。それでベル、どうすればいいだろう」
「そうだな、まずは…」
そうして僕はベルとレイさんについて貰って魔力操作をこの二日間で習得することとなった。




