3話 新たな家族
ベルと握手を交わした時、急に扉が開け放たれた。
「ようこそ我が家へー‼」
「へっ?」
思わず間抜けな声をあげてしまう。
シリアスな雰囲気をぶち壊して部屋に入って来たのはとても綺麗な女性だった。
黒を基調にしたシンプルなドレスを身に纏っており、透き通るような長い白髪をしている。
そして、瞳は赤い。
今まで誰ともあったことなかったのに今日で二人目だ。赤い眼が意外と珍しくないのかと錯覚してしまいそうになる。
「全く、シリアスな雰囲気出してるから入りにくかったじゃない」
「それでも入って来たのだから豪胆さが伺えるな」
「終わりを見計らってたの。空気読めないみたいに言わないでくださーい」
白髪の女性はベルと気安いやり取りを交わした後、僕に目を向けた。
「改めて、歓迎するわ。私はレイ」
「ぼ、僕はアカメです。よろしくお願いします、レイさん」
「…固い」
「え」
「ベルとは普通に喋ってるのに何で私には敬語なの?私も同じにして」
いきなり何を言い出すんだこの人は?
「え、えっと、はい。じゃなくてわかったよレイさん」
「…レイお姉ちゃん」
「はい?」
「なんか弟が出来たみたいで嬉しいからレイお姉ちゃんって呼んでくれる?」
「………嫌です」
「あぁ!敬語にも戻ってるし‼何でいいじゃん減るもんじゃないでしょ!」
「なんか嫌!なんか嫌です‼」
出会って早々わちゃわちゃしている僕たちにベルがため息をつく。
「…レイ、頼んでいたものは」
「あ、あるよ。ちょっと待ってて」
言われて思い出したかのように廊下に出て行ったレイさんはすぐに戻ってきて僕に荷物を差し出してくる。
「これ、学校の制服。もうボロボロでしょ」
「え、あ、ありがとう!こんなことまで…」
「いいのいいの、もう家族なんだし」
「ありがとう…。…ちなみにどうやって手に入れたの?」
「忍び込むなんて朝飯前よ、お金は置いてきたから安心して」
悪魔ってのは何でもありなんだな。
もうこれまで常識は通じないのかな…と遠い目をしていると、レイさんが僕に眼鏡をかけてくる。
「あの、これは…?」
「それ、赤い眼を隠してるんでしょ。なら伊達眼鏡もあった方がちょっと気持ち楽になるかなって。私の持ってる中で似合いそうなやつあげるよ」
そういえば何で赤い眼のこと知ってるんだろう、と思ったがあの悪魔にも知られていたしもうどこから知られていてもおかしくないので飲み込んだ。
今レイさんが言ったことと全く同じ理由で普段伊達眼鏡をかけていたので何だか理解してもらえたようで親近感が湧く。
「ありがとう、大事に使うね」
「弟のためならこれくらい」
「弟じゃないけどね」
初対面なのに。ブレないタイプかこの人。
「では、そろそろお開きとしよう」
ベルが会話の頃合いをみてそう言う。
「えー、もっとお話したい」
「それは結構だが、もうじき夜が明ける。アカメを送り届けなければ向こうの家族も心配するだろう」
「あ、そうだ!どうしよう…」
あまりに怒涛の展開過ぎてすっかり忘れてしまっていた。
おばさんはちゃんと寝てくれているだろうか…いや、心配で捜索願を出そうとしている可能性も…。
アワアワしている僕を見て今思い出したのかというようにベルが息を吐く。
「上手い言い訳を考えておけ。というわけだ、お話とやらはまた明日でいいな?」
「むぅ…仕方ない」
渋々といった様子でレイさんからの了承を得ると外に出てベルにおんぶされる形になった。
「ちょっと恥ずかしいな、これ」
「これが一番早い。首根っこ掴まれて運ばれるよりマシだろう」
「………え、待ってよ。まさか僕が倒れてる時そんな雑な運び方してないよね?」
「………。」
もう絶対にベルの前で気絶しないと心に決めた瞬間であった。
その場でレイさんともお別れをし、僕を背負ったベルはもの凄い勢いで上に飛び上がった。てっきり走っていくものだと思っていたためかなり驚いたが、もう何でも有りっぽいのでリアクションするだけ無駄というものだ。
「…凄い、こんなに速く…」
「この程度で驚いて貰っては困るのだがな」
語りの節々で思うがベルって相当強いんだろうな。
そんな人が味方に付いてくれている安心感と敵に回った場合の恐怖半々の気持ちで手に汗を握っていると、程なくして僕の自宅の前に着いた。
ベルはそのまま僕を降ろして早々に立ち去ろうとする。
「今夜迎えに来る。自室で控えていろ」
「え、あ、ありがとう!」
「あぁそれと、今日は家から出るなよ」
「?…まぁゆっくりするつもりだったけど」
「ならいい」
それだけ言い残して立ち去ってしまった。
あっという間に見えなくなっていくベルを見て、当然なのだろうがかなり加減して移動してくれていたと知る。
力の使い方を教えると言ってくれたが、僕にもあのぐらい出来るようになれるのだろうか…。
「護!明るくなってきたし私ちょっとアカメを探してくるよ!」
「落ち着けっておばさん!まずは教会に捜索願を出すのが先だ!おばさんは教会に行く!探すのは俺がやるから!」
遠くの空を眺めて思案していると家から騒がしく出てくる二人がいた。
一人はマリアおばさん、もう一人は護兄さんである。
「分かったよ、でも出したらすぐに…アカメ⁉帰って来たのかい‼心配したんだよ全く‼」
「アカメ‼よかった…今までどこに⁉」
「あぁ…えっとぉ…」
当然ではあるが、心配した二人に鬼気迫る表情で詰め寄られる。
さて、スーパー言い訳タイムの時間だ…なんとか切り抜けるぞ。




