39話 負けられない戦い
程々の時間が経って湊くんが一人で戻って来た。
「あれ?他の皆は?」
「まだ見て回ってるよ。何となく肩身が狭くて戻ってきちまった」
湊くんの様子から何となく気持ちは分かった。実質女子四の男子一だもんね。
「お前ら今暇だろ?どっか行くか」
その提案に僕たちは頷き、ゲームセンターにまた戻って来た。
さて、何をやろうかと視線をグルグルしていると湊くんに呼ばれる。
「これこれ、パンチングマシンやろうぜ」
どうやら湊くんも身体を動かしたくてうずうずしているらしい。まぁあんな極端な試合展開されたら不完全燃焼か。
それに僕だって男である。こういうのには勿論ワクワクする。
僕らは順番で機械にお金を入れていき、それぞれパンチを打ち込んでいったが
「ぐぬぬ…もう一回!」
「決着がついたのにみっともないぞアカメくん」
結果は僅差で弘人くんに負けてしまった。
ごねる僕に弘人くんが勝ち誇った笑みを向けてくる。
後ろで湊くんは項垂れていた。
「お前らに勝負を挑んだ俺がアホだった…。何でお前ら優しそうな面してそんな力強いんだよ…」
まぁこういうのは力もあるけど技術も大事だから。こっちの治安が悪いだけだからそっちの方が健全だよ湊くん。
続いてレースゲーム、
「ぐっ、もう一回だ!」
「負けたのに見苦しいよ弘人くん」
「何であの状況から負けんだよ…」
僕が一着で弘人くんが二着であった。
ゲームセンター自体は沢山来たことあるからね。その度に兄さんにボコボコに負かされていたから悔しさをバネに上手くなったというわけだ。
この程度の相手、負ける気にもならないね!
続いて格ゲー、
「よっしゃあ!勝ったぁ!」
「何で!最後押してたのに!」
「フレームで優位取ってたので無駄でーす」
「知らない何それ!」
「アカメくん任せろ!今度は俺が!」
湊くんが僕たちをボコボコにして終わる結果となった。
これまで負け続きだったこともあってか盛大に煽り散らかす湊くん。
それを真に受けて悔しさで顔を歪める僕と弘人くん。
「次!次はどれで勝負する⁉」
「エアホッケー行こう!」
「ダメだ!お前らが勝って終わるだろうが!」
次こそは、とぎゃあぎゃあ騒ぐ僕たちを買い物が終わって戻って来た女性陣が見ていた。
「…あれ何やってるの?」
「子どもの様で見るに堪えませんね」
「そう?楽しそうでいいと思うけどな」
「うん。アカメ、すごく楽しそう」
時間はあっという間に溶けていった。
「いつまで入り浸ってるのよ貴方達…」
「「「ごめんなさい…」」」
三人並んで京香さんに呆れられてる。
夢中になっているうちに陽さん達はもう買い物を終えており、連絡がきているのにまったく気づかずもう帰るのを検討する時間になってしまった。
結局決着という決着もつかず、ただ遊びまくっただけになってしまったという。
外を見ると確かに茜が差している。何で気づかなかったんだ…。
「特に弘人、こんなんじゃ先が思いやられます」
「面目ない…」
京香さんは弘人くんと一緒に現場に出ているんだもんな。そうだぞ弘人くん君が悪い。
「京香、あんまり責めないの。弘人がこんな風に振舞うなんて珍しいじゃない」
「上谷さん、ですが…」
上谷さんに擁護をされて京香さんの勢いが少々和らぐ。
「アカメくん達も、今日は楽しかったよ。陽ちゃん達とも仲良くなれたし最高の休日だったわ。また遊ぼうね」
そう締められては何も言えないと京香さんはため息をつく。
「僕も、今日は楽しかったよ。また機会があったら」
「あら、社交辞令みたいな返し方するのね。寂しいわ…」
「ち、違うよ!いつになるか分からないからそう言っただけで!」
そこで上谷さんがクスクス笑っていることに気づき、からかわれたと分かって白い目を向けた。
「…からかったね」
「ふふっ、ごめんね。いつかの屋上での意趣返しよ。思いつめたような顔して何も話さないなんて寂しいことされたからね」
そう言えば…そんなこともあったな。
あそこで弘人くんと京香さんのことも認知できたし、今思えばいい出会いだったな。
「少しは、誰かに頼ることを覚えたかしら」
上谷さんが僕の顔を覗き込むようにして尋ねる。
きっと、以前よりもすっきりした表情をしていることにも気づいているのだろうな。
「…まぁね。でも、初対面でいきなりあんなこと言われても話すわけないじゃないか」
「それもそうね。今度からはアカメくんの信頼を勝ち得てから聞くとするわ」
そこまでして聞きたいものでもないだろ…とは思うが、これからも交友の意志を持ってくれているのは素直に嬉しい。
「アカメ―!もうすぐ電車の時間だよー!」
遠くから陽さんの声が響く。
もうそんな時間なのか…。
名残惜しくはあるけど、またみんなで遊べるといいな。
「じゃ、またね」
「今度は負けないからな!…俺も同じ方面なんだから俺にも声かけて欲しいよなぁ…」
「あはは、まぁまぁ」
湊くんが不服そうに走り始める。
僕はその後ろを苦笑しながら追うのであった。




