幕間 見習いと先生
「…嘘、あれ先生の弟だったの」
アカメと初めて会った日の夜、弘人は京香へ小言を言っていた。
アカメくんが先生の弟であったこと、仮にそうじゃなかったとしてもあの態度はあまりに失礼過ぎること、もう少し落ち着いて行動しろということ。
アカメくんには悪いが、先生の弟であったという事実を伝えれば京香も冷静になってくれると思って利用させて貰った。
結果はまずまず、少なくとも周りが見えずにあんな態度を取ることはなくなるだろう…はず…多分。
真面目で勤勉であることは京香の取柄でもあるのだが、最近は行き過ぎている部分もある。これを機に冷静になって欲しいものだ。
「よぉっすお前ら。調子はどうだ?」
先生の声が響き、僕らは背筋を伸ばして声がした方向に身体を向ける。
「あ…悪い…。いきなり声かけたら緊張するよな…」
先生は少々落ち込んだように反省している。
あまりかしこまられるのが好きじゃないらしく、上司にあたる人物は無自覚に緊張を与えてしまうということも意識しているため僕たちとの関係を未だに測りかねているらしい。
俺たちとしてはいい上司に会えたと喜んでおり、それも伝えているのだが…どうも世辞の一種だと思っている節があり、本人的には中々納得いっていないようだ。
先生は「お、そうだ」と手を叩くとキラキラした目を僕たちに向ける。
「お前ら一条高校に行ったよな。どうだ、俺の弟は居たか?」
そう言われ、今度は京香の方が落ち込んだように反省ししょぼくれる。
「な、なんだ?何かあったのか?」
マズイ質問をしたのかと焦る先生に落ち込む京香。
ため息をつきながら今日の事の経緯を説明すると先生は微妙そうな顔をする。
「なるほどなぁ…。あんまうちの弟を虐めてくれるなよ?」
「そ、そんなつもり…じゃ…。…ごめんなさい…」
言葉を発しながら徐々に声が細くなっていく京香の様子に先生は苦笑する。
「ま、これから仲良くなれんだろ。京香の真面目さはいいところだから、それが分からないうちの弟じゃない。あんま思い詰め過ぎんなよ」
「……はい」
それでも中々気力が戻らない京香に弘人はため息をつく。
まぁでも、この様子じゃいつもみたいに単騎突撃はしていかないだろうからそれはそれでありかとも思う。
「それじゃ、そろそろ時間だ。見回りに行くぞ」
「「はい!」」
先生の言葉に俺たちは気を引き締める。
ここから先の領域は…命のやり取りの時間だから。




