25話 黎明
僕が泣き終わった頃、もう少ししたら空が白みだしてしまうと僕たちは慌てた。
とりあえずベルにお願いして送って貰おうと部屋の扉を開けると、待っていたかのようにベルが居た。
「……聞いてたの?」
「そんな無粋な真似はせん。そろそろだろうと来てやっただけだ」
「…それはどうも」
性格が悪いベルの事だからどっちか分からず、訝し気な眼で見つめるが本人はどこ吹く風だ。
「アカメと陽ちゃんはいどうぞ!新しい制服でーす!」
レイ姉さんとリナさんが現れて、僕たち二人分の制服をプレゼントしてくれた。
どうやって仕入れたかは聞かないが、サイズまでぴったりなのは怖いのでどうにかしてもらいたくもある。
「ありがとうレイ姉さん、リナさん」
「え!あ、ありがとうございます!どうやって?」
「聞かなくていいと思うよ」
陽さんが後でお金を払うと言うと断られていた。
僕も前回断られたが、どこからお金は出てくるのだろうか。
ベルが送ってくれるということなので外に出ようとすると、入り口付近にアルマくんが壁に寄りかかって腕を組んで待っていいた。
「あ、アルマくん」
僕がどう切り出すかとおどおどしているとアルマくんは近づいて僕の肩に腕を置く。
「また次からボコボコに指導してやるからな。覚悟しておけ」
「っ!うん!よろしく!」
何でこいつ喜んでいるんだ…という目を向けられたが、また変わらず受け入れてくれるというだけで今の僕には嬉しいのだ。
外に出ると背中に陽さんを背負い、僕は首根っこを掴まれるという位置取りで飛び立とうとする。
ちょっと待て。
「ちょっと待って」
「何だ。時間がないのだろう」
「いやそうなんだけど。そうなんだけど…」
「べ、ベルさん。アカメが可哀想というか…」
陽さんがベルにそう打診してくれるが鼻で笑われた。
「安心しろ陽とやら。アカメはこの程度で根をあげたりはしない」
「いや僕今嫌だって…あぁ何で行くんだよ!ちくしょうめぇぇえ!」
「きゃあぁぁぁ!」
僕の返事を待たずしてベルは飛び立った。
陽さんと僕、別々の悲鳴が空に木霊する。
「ベル!流石に酷いぞ!」
「流石にとはなんだ。それにお前に関してはこうやって運ばれるのは経験済みだろう」
「僕が気絶した時やっぱりこうやって運んだんだな⁉」
あの時は黙秘していたのに、最早隠す気なかったなこいつ。
陽さんの方は一周回って適応できたのか、周囲の景色に目を移している。
「…凄い、飛んでる」
「初々しいな、初めの頃のアカメを見ているようだ」
「もう何でもからかわれているように聞こえるよ…」
しかし、自分で移動してきた後にこれを体験するとまだまだベルの実力には遠く及ばないと自覚できる。
僕よりも圧倒的に速い速度で移動しているのに呼吸一つ乱していないのだから。
「それよりもだ」
僕の視線を知ってか知らずか、ベルが口を開く。
「こんな時間になった言い訳は考えているのか」
「あ!そうだどうしよう!お母さん心配してるよぉ‼」
陽さんは今晩母親とご飯を食べる予定だったことを今思い出したのか、急に焦り始めた。
話しやすいようにと気を遣ったのか知らないが、ベルが僕を肩に担いでくれた。
始めからそうしてよ…。
「僕は一応連絡を入れておいたんだけど…まぁ心配されているよねぇ…」
「どうしよう…悪魔が~なんて話出したら大事だし…立入禁止区域に行ってましたなんて言えないから嘘つくしかないよね…」
「前回は不良に絡まれて逃げていたで通したけど…今回も同じで…は流石に通じないよなぁ…」
「私それで行こうかな」
「あ、ずるい!」
「でも、どの道心配されるよねぇ…」
「一緒に居たってことにした方がまだ大丈夫かな」
「そうかも、じゃあさ…」
ベルに運ばれながらああでもないこうでもないと作戦を立てる。
話している内に何だか楽しくなっていって時々笑いが零れた。
それを聞きながらベルはただ無言で、しかし何処か愉快そうであった。
段々と空が明るくなり始める黎明の時、二人の悪魔と一人の人間の姿がその空にはあった。
ここまでが一巻分として想定していた内容になります
ここまで読んでくれたそこの貴方、本っ当にありがとう!
貴方が読んでくれているから続けられている節は大いにあります
まだまだ毎日投稿は続けていく予定なので読みたくなったらいらしてくださいな




