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アカメの悪魔  作者: 海蛙
1巻(想定)

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22話 決着

より熾烈になる戦いの最中で、僕は思い出す。

 

ベルに叩きつけられた言葉を。

 

僕は本当に腑抜けなのだろう。今こうしてボコボコに殴られているのだって、そのしわ寄せだ。

 

そして、僕が負ければそのしわ寄せは陽さんにいく。

 

ベル、僕はここにきてようやく覚悟が決まりそうだよ。


僕は、大切な人の命が天秤にかけられなければ自分の命の振り方も満足に決められないような…どうしようもない餓鬼かもね。


だけど、今この瞬間からは、辛くてもちゃんと選び取っていきたいと思う。


「ほらがら空きですよぉ!」


「ぐっ!」

 

無理やり腕の上から攻撃されて腕を弾かれ、そのまま開いたところに蹴りを叩きこまれる。

 

後方に吹き飛ばされながら、護兄さんの言葉を思い出す。

 

僕の今の理想…それは陽さんを無事に送り届けることだ。

 

なら、それを阻害する要因は…捨てるしかない。

 

僕は倒れた状態からゆっくりと起き上がり、スーツの悪魔を見据える。


「おらこのまま死んでもいいんでッ⁉」

 

スーツの悪魔は起き上がったところに追撃を加えてこようとするも、闇から創り出されたナイフで迎撃され、無理やり後退させられる。

 

もう少しで首がざっくり切り裂かれるところであったスーツの悪魔は薄く切り裂かれた首元を触ると、喜びの表情を浮かべる。


「やっとですか!待ちくたびれましたよ!」


「そういうのはいいから、構えろ」

 

僕はコンタクトを外して投げ捨て、深き赤い眼を携えながらナイフを構える。

 

僕の顔に髑髏の仮面が形成される。

 

覚悟が決まる。心が据わる。魔力が安定し、視界が開ける。

 

僕なら…やれる。


「殺してやる、かかってこい」


「是非ともッ!」

 

スーツの悪魔が感極まった様子で突撃してくる。

 

魔力による強化は今日一の強さだが、これまでより遅く見える。

 

踏ん切りがついて覚悟が定まったのが理由か、今は酷く冷静だ。

 

右の拳が飛んでくる、当たれば致命打となるが当たらなければ問題はない。

 

僕は半歩身をずらして躱し、合わせるようにナイフを滑らせる。


「ッぐぅ!」

 

あと一歩そのまま前に出ていれば喉元にぶっ刺さったのだが、横に転がり飛んだことでギリギリ回避される。

 

今までの僕とは何かが違うことを悟ったのか、冷や汗を伝わせながら今度は油断なく僕を見据える。


「…本気ですね」


「そう言ってるだろ。陽さんを解放してくれるなら見逃してあげるけど」


「ご冗談を!」

 

スーツの悪魔は近くにあった礫をいくつか僕に投げ飛ばし、それとともに僕に突撃してくる。

 

先程から打撃による戦闘ばかり、おそらく固有能力は持っていない格の低い悪魔なのだろう。

 

その分を魔力操作で補っているようであり、当然僕より上手なわけだが…。

 

礫を避けられるものは避け、隙を晒すことになりそうなものはナイフで迎撃する。

 

そのすぐ後にスーツの悪魔が迫ってくるが、問題なく捌いていく。

 

そもそもアルマくんの打撃を防げるのならこれに苦戦する理由はないのだ。

 

威力は手加減してもらっていたのでスーツの悪魔の方が上だが、攻撃のバリエーションやテンポ、読み合い…その他諸々全てアルマくんの方が上だ。

 

最早一撃も入れさせる気はない。

 

攻撃を的確に捌き、弾き、隙を見て取れたらカウンターを行う。

 

そうして一つ、また一つと傷が増えていき焦ったのか、収束により力を込めた大雑把な一撃が飛んでくる。


「馬鹿が」

 

収束は諸刃の剣である。


一点に集中させるということはその他の部分は脆くなるということ。


僕は受け流しながら振りかぶられる拳の少し奥、腕の関節近くを狙ってナイフを振るう。


「がぁぁぁあッ!」

 

腕を切り飛ばされ、大量の鮮血が地面に滴る。

 

身体の欠損は通常の再生よりも大きなエネルギーを使う。

 

ないものを一から生やすのだから当然といえば当然だ。

 

しかもかなり冷静さを欠いている状態であるため、無駄な魔力消費で回復を行ってしまっている。

 

先程から与えている切り傷といい、中々魔力を消費して焦っているだろう。

 

こちらに攻略の糸口が見えなくなってきたのか、スーツの悪魔の顔には絶望の表情が見えた。


「こ、こんなはずが…。私が死ぬわけ…」


「なんだお前、死にたくなかったのか」

 

自分を殺せと言っておいて変な話だとは思うが、まぁ本音というなら分からないでもない。


「こ、これは私への試練ではなかったのか!ほ、本当にこいつのための…私は、踏み台ということなのかぁ⁉」

 

段々と何かに気づいたのかただ単に気が触れただけなのか、錯乱したように騒ぎ始めるが僕にはそんなこと関係ない。

 

ゆっくりと、悠然と近づいていくと、スーツの悪魔は怯えたように背を向けて全力で後退する。


「う、動くなぁ!この女を殺すぞ!」

 

そうして陽さんの胸倉を掴んで脅しをかけてくる。


「その薄汚れた手で触るなッ!」


「ひっ!」


僕の怒号に怯みはするもそこに勝機を見出しているのか手放しはしない。

 

先程までの余裕は何処に行ったのか、生きるのに必死だな。


「い、いいのか!本当に殺してしまうぞ!」


「やってみろよ」


「は?」


「そこはもう僕の間合いだ。お前程度の速さなら陽さんに攻撃が届く前にその腕を切り飛ばせるぞ」


「な、はったりに…」


「やってみろよ」

 

僕の雰囲気から本気であることを察したのか、徐々に陽さんから手を離して一歩、二歩と後退していく。

 

そして壁まで下がり、後退する場所がなくなるともう我慢できないとでも言うかのように壊れた窓から建物の外へ飛び出てしまった。

 

陽さんを解放するなら…と言ったが、もう逃がすつもりはない。

 

あいつの裏には誰かが居ると分かる。放っておけば、また僕らに危害を加えにくるだろう。

 

相手方への見せしめも兼ねて…ここで葬ってやる。


「アカメッ!待って!」

 

陽さんに呼び止められるが僕は聞かずに窓から外に出る。

 

申し訳ないけど…顔向けできる状態じゃないかな…。

 



建物の屋根に立つと、スーツの悪魔が建物の上を飛んで逃げていくのが見える。

 

すぐに追いついてッ…!


「……いったぁ…ッ」

 

酷い頭痛と倦怠感が僕を襲う。

 

これは経験がある、魔力が枯渇寸前までいっている証拠だ。訓練中に何度か経験して酷い目にあった。

 

序盤の冷静さを欠いた魔力操作、身体の大きな修復を何度も行ったことによって招いた結果であり、自分がまだまだであることを自覚する。

 

だけど…あいつだけは…。

 

僕は悲鳴を訴える全身に鞭を打ち、スーツの悪魔を追う。

 

幸か不幸か、あちらも戦闘による疲労は蓄積しているためそこまでの速度は出ていない。

 僕は全力で追いすがった。

 

魔力のカラカラな身体から絞り集め、出せる最高速度を持って移動する。

 

そうして、もう目と鼻の先の位置まで捉えた。


「ひ、ひぃぃ!」

 

スーツの悪魔が近くの高い建物に飛び移って逃走を図ろうとする。


「許すわけないだろう…!」

 

ここで仕留める、そう決めて魔力を振り絞り、追いついて高所を取ろうとするが


「な、ここでっ…!」

 

身体回していた魔力が滞る。

 

まともに身体を動かせない。もう頼れるのはナイフ一本だけ…。

 

ここまで来て…と嘆いていたその時、身体に浮遊感を感じた。

 

驚いて背中に視線を移すと、紅い、血で出来た翼のようなものが生えていた。

 

…全く、お節介な姉さんだ。

 

僕は得られた翼と共に一気に建物の側面を駆け上がり、スーツの悪魔の上空を取る。

 

月下の元、その光によって映し出された影の姿が空に浮かぶ。

 

深紅の翼を携え、闇そのものを思わせる短剣を振りかぶり、それよりもなお深く、暗く、赤い瞳を輝かせるその姿は、まるで…


「あ、悪魔……っ」


「終わりだ」

 

僕は全力でナイフを振りかぶり、スーツの悪魔の首を切り飛ばした。

 

もう十分致死の欠損ではあるが、それでもまだ再生しようと足掻く身体。それすら許すまいとダメ押しで悪魔の弱点、心臓にナイフを一突きし抉り切った。

 

心臓は魔力を生み出す源、いくら悪魔として死後に復活できたといっても心臓を断たれては生きていけない。

 

その身体は力を失い、物言わぬ骸となって落下していく。


その後を追うように、力の入らない身体を宙に投げ出し僕も落下していった。

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