15話 仮面
捌く、弾く、反撃…防がれたので体勢を立て直し、追撃を捌く、捌く…
「ベルー、リナにお茶淹れて貰うんだけど飲む?」
「貰おう」
「今日はお茶菓子も見つけたんです。良ければご一緒にどうぞ」
「え、お菓子?やった」
捌く、はじッ、フェイントか!躱して体勢を…ここ反撃!…躱されたが体勢は戻せた、捌け、弾け…
「ほう、中々良いものだな」
「お口に合うようで良かったです」
「これも美味しいけどこの前のチョコレート!あれの美味しさが頭から離れないよぉ…」
「ふふっ、まだ少し残っていますのでお持ちしましょうか?」
「ほんと!リナ大好き!」
「気が散るんですけど⁉」
戦闘の手を止め、思わず叫んでしまった。
何でこんなところでテーブルと椅子広げてお茶会なんてやっているんだ…僕がおかしいのか…。
「よそ見とは、随分強くなったものだな」
「ッ‼」
一瞬目を離した隙にアルマくんに即座に間合いを詰められる。
鋭いストレートが飛んでくるも何とか弾き…しかし弾かれることすらも織り込み済みで攻め込むアルマくんの追撃の手は止まらない。
逆の手で掴み掛かられるもこれも何とか弾き、その拍子にアルマくんの態勢が崩れた。
チャンスと思い安易に踏み込んでしまった。だが罠であった。
意識の外から足が払われ一瞬であるが宙に浮かされる。
そんな明確な隙を見逃して貰えるはずもなく、そのまま後ろ回し蹴りで後方に吹き飛ばされる。が、何とか収束でダメージを最小限に抑え、持っていた影から作り出したナイフを投擲し、アルマくんの追撃を防ぐ。
そのまま着地し、ちょっとした影になっている部分から即座に次のナイフを作り出して次に備える。
「ほう」
ベルはいつの間にか立ち上がって僕たちの訓練をあごに手を据えて見ていた。
「中々やるようになったな。魔力操作も以前と比べ澱みなく使えるようになり、闇影の理も随分と慣れたようだ」
「だからお世辞はいいって、まだまだなのは理解しているよ。闇影の理も慣れてきたのはこの動きだけだし」
以前は闇影の理で影や闇の部分に触らなければ武器を作り出せなかったが、今では多少離れていても遠隔で作り出せるようになった。
武器は遠隔で作り出す意味はあまりないが、障壁のようなものの形をイメージして作り出すことによって防御や足場としても使えるようになった。
だがそちらの方は遠隔が故に魔力消費が激しい上に練度もズタズタ、とても使えると言えるものではない。
「戦闘のセンスも磨かれてきたな。その内アルマも超えるか?」
見え透いた発破にアルマくんは少し不機嫌そうな表情を浮かべる。
「ベル様…それはアカメをボコボコにしても良いということで?」
「そうは言ってない。だが、本人の言う通りまだまだだということを理解させるのも良いと思っただけだ」
アルマくんは「そうですか…」と言って戦闘態勢を取る。
全く勝手なものだ…ベルは本当に性格が悪い。
正直捌き切れるイメージは湧かないが、今日の僕は何だか調子がいい。
やれるところまで抗ってやる、とナイフを構え直し、僕の方から突撃を開始する。
「!お前それ…!」
不意にアルマくんが驚いたような表情を浮かべるが僕にそんな余裕はない。
「ちょ、止まれ!おい!」
アルマくんの動きに切れがない。どうしたのだろうか…お腹でも壊したか?
少々卑怯だがこれはチャンスとも取れる。いつもはボコボコにされてこちらの攻撃なんてまともに受けて貰えないが、今なら…!
歯切れの悪い動きをするアルマくんに対し僕は猛攻を続ける。
そして放った拳をアルマくんがまともに手で受け止めた。
「やった!初めて…あれ?」
「止まれって…言っているだろうが!」
「いっだぁ⁉」
僕の拳を握りつぶさんとするぐらいの握力で固定され、そのまま逆の手でゲンコツが下された。
たまらず地面に倒れ伏す…何でいきなりこんなことを…。
ベルが肩で笑いながらこちらにしゃがみ込んでくる。
「まぁ、意図せずして格の違いというのも分からせられたな…。クッ…いや失礼…」
「何笑ってんのさ…」
確かに無様は晒したがそこまで煽らなくてもいいじゃないか。
ベルは少し笑った後、僕の顔にノックをするようにコツコツと音を立てて叩いた。…コツコツ?
凡そ顔が叩かれて出る音ではない音が響き、僕はそこで初めて異変に気付く。
「……なんだ、これ?」
「ある程度力に慣れてきたとはいえ、もう仮面を出現させたか」
僕の顔は周囲の意見曰く仮面で覆われているらしい。
リナさんに持ってきて貰った鏡で確認すると、何とも悪趣味な髑髏を模したような仮面をつけている。
「…え、なにこれ」
「私たちの力の一部だ。個人ではなく象徴として在れ、ということだと私は解釈している」
「……本当にどういうこと?」
訝し気な視線を向けるとベルは「その内分かる」とだけ言っていきた。
ベルに教えてもらう時、ちゃんと教えてくれる時とほとんど何も言っていないのと同義な時の振れ幅が凄い。
「というか、ベルのその悪趣味な仮面も能力だったんだね」
「…貴様そんな風に思っていたのか」
いやだってそうだろう。
ただでさえ悪魔と呼ばれる存在なのに、それを強調するように山羊を模した仮面をつけているなんて悪趣味と呼ばずして何と言えばいいのだ。
「悪趣味度で言えばアカメも大概だけどね」
「分かってるよ…っていうかこれどうやって外すの?」
「引き剥がせばいいだろう、やってやる」
アルマくんが腕を回してこちらに近づく。
「ま、待って。何か凄い馴染んでるからさ、無理に引きはがそうとすればそれこそ顔ごと…」
「どうせ治るんだからいいだろう。俺に任せろ」
「もしかしなくても、さっき攻撃止めなかったこと根に持ってる?」
「そんなことはない、うっかり首ごと持って行っても文句言うなよ」
「そんなことあるよね⁉首ごと持ってかれたら文句も何もないんだけど⁉」
立ち上がって全力で後退するがアルマくんはじりじり距離を詰めてくる。
まずいまずい…どうやって引っ込めるんだこれ…。
やり方も分からないので必死に戻れ戻れ戻れ…と唱えていると何とか仮面は消失した。
「よしっ!」
「…ちっ」
何で舌打ちするんだよ、隠す気ないじゃないか。
僕はずっと黙っていたベルにも抗議の眼を向ける。
戻すのに必死だったが、よく考えたらベルがやり方を教えてくれればこんなに慌てずに済んだはずだ。
てっきり性悪が発動してこちらを愉快そうな眼で見ているかと思ったが、ベルは俯いて何か考え事をしているようだった。
「ベル?」
「……明日、少々変わった訓練を行う。心の準備をしておけ」
「え…いや準備ったって…」
ベルはそれだけ言い残して早々に立ち去ってしまった。
様子がおかしいと感じたのは僕だけではなかったようで、レイ姉さんやアルマくん、リナさんも一様にベルの様子を訝しんでいるようだった。
…どうしたんだ、ベル?
今日で投稿し始めて二週間、投稿を始める前までは考えられなかった人数の方に読んで貰えてとてもホクホクです!
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