14話 危ない橋と結果論
「……へ?」
あまりに予想外かつ突然で状況が理解出来なくなる。
最近似たような感じで上から襲撃を受けたことを思い出しゾッとするが、その人は僕ではなく相馬の方に落下し、取り押さえて制圧するのと同時に邪霊を両断した。
あまりに鮮やかで一瞬の出来事だったので葵くんを抱えたまま呆然としていると、落下してきた人物から聞き覚えのあることが発せられる。
「……騎士になることも見据えられていたというのにこのザマとは。一条家も堕ちたものだな」
その人物は剣を一振りするとそのまま納め、こちらに向き直った。
「お前たち、大丈夫か。怪我は…しているようだな…」
「な、何で…先生が…」
何で僕たちの担任である長谷川先生が剣を持って邪霊を倒しているんだ?
頭の中で一つの可能性が真実であると大主張してくるが、中々受け入れられない。
いや、だって…そうなるとこれまで僕は相当危ない橋を渡っていることに…。
僕の様子がおかしいことに気づいたのかそこで葵くんが顔をあげると、僕と同じように目を見張って先生を見る。
「な、何で…え、先生?」
似たような反応をする僕たちに先生は頭を掻きむしりながらポケットから取り出したものを見せる。
「ほら、俺は精霊教会の騎士だ。今回相馬には悪魔が憑りついていた。だから今俺が処理したってわけだ」
僕の中の可能性が事実に変わる。
ということは…これまで僕は精霊教会の騎士の前で出来立てホヤホヤの魔力隠蔽を披露していたことになる。
そしてついさっきまで魔力を使って相馬くんに攻撃を仕掛けようと…。
僕はせめて動揺は表に出さないようにと内心冷や汗ダラッダラの状態だが、葵くんと先生のやり取りは続く。
「あ、悪魔って…じゃあここまで度を超して攻撃的だったのも…」
「悪魔の仕業ってことになる。もっと早く気付くべきだった、お前たちを危険に晒すような真似をして本当に申し訳なく思っている」
先生は僕たちに深々と謝罪をした。
「そ、そんな!止めてください先生!」
葵くんは先生の謝罪を前にあたふたしているが、僕にとって重要なのはそこではない。
「先生、相馬の処遇はどうなりますか」
「…悪魔の仕業ということで数日教会の療養所で経過観察をした後、問題ないと判断されればそのまま解放だ。だが…こいつは一条家という名門の出だ。そのまま同じ学校に通い続けることをこいつの親が容認するかどうかは怪しいところだな」
それを聞いて葵くんが目を見張る。
「じゃあ…相馬くんとは、これで離れられる…?」
目から涙を零す葵くんの頭を後ろから撫でた。
そのまま僕に葵くんが飛びついてくるが特に引き離すなどはせずに僕はそのまま頭を撫でた。
「……やっぱりあの時隠していたな」
「あ…ごめんなさい…。先生に言うのが最善かどうか迷いまして…。やっぱりバレてました?」
「四対二の構図で、しかも二の片方が土で汚れているって察しが悪くても何かあったことは分かるだろ…。言いたくないようだったから詮索はしなかったがな」
「ありがとうございます…」
僕が感謝を述べると先生は鼻を鳴らす。
「それよりも、早く傷の手当てだ。葵の方はどこか怪我はしているか」
「そ、そうだ治療!僕は大丈夫です!アカメくん早く保健室!」
「え、ちょっ、わ、分かったから!」
ハッと思い出して弾かれたかのように僕を押して保健室に向かう葵くんに僕は有無を言わさず連れていかれる。
保健室に着くと僕は一人で入り、切られた左頬に消毒と大きめの絆創膏を貼って貰う。
葵くんは陽さんを呼んでくると言い行ってしまった。正直小言を言われそうなので黙っていて欲しかったといえば黙っていて欲しかったが…。
頬以外に目立った外傷はなく、早々に治療を終えて保健室の中で待っていると、息を切らせた陽さんと葵くんが入ってくる。
「アカメ…!」
「陽さん、その…」
どう言ったものかと言葉に迷っていると、陽さんが絆創膏に触れてくる。
そのまま、スルッと僕の首の後ろに手を回して抱き着いた。
「は、陽さ…」
「…ばか」
何も言えず、僕はその抱擁を黙って受ける。
身長が合わず背伸びするような形になっていたので少し腰を屈めて陽さんに合わせた。
「……アカメはそうやって、いつもいつも…」
「いや、今回は不可抗力というかそうするしかなかったというか…いった!」
言い訳は余計だったのか無言で首をつねられる。
陽さんは少し腕を緩めて僕の眼を見て真摯に訴えかけるように話す。
「もう無茶はしないって約束して」
「…分かったよ。善処する。…痛いよ何で⁉」
「約束して!」
そうは言っても…自分の置かれている状況やベル達の顔が思い浮かび、無茶はしないという約束は果たせそうもないのが辛い。
「出来る限りそうするから!」
「できない約束はしないってこと⁉嘘でも言えないのかお前は!」
「だからごめんって!」
何時にも増して強情な陽さんと押し問答していると、陽さんの目から決壊したように涙が零れてくる。
「……っ」
「……こっちが、どれだけ…心配…したと…」
僕はどうしたらいいか分からず、無言で涙を流す陽さんに抱擁し返す。
そのまま頭を埋めてきたので頭に手を置いて受け入れる。
「………ごめんね。心配してくれてありがとう」
「……ばかぁ」
先の強い要求も心配の裏返しなのだろう。僕が不甲斐なかったばっかりに…。
陽さんはそのまま少しだけ泣いた後、葵くんの方に向いていった。
「無事でよがっだよ葵ぐん…」
「え、は、陽ちゃっ…ありがとうね」
涙を流すほど心配してくれた陽さんに葵は微笑みながら感謝を述べる。
葵の表情は何処か憑き物が落ちたような表情で、自分のトラウマを打ち破ったようにも見えた。
結果論かもしれないけれど本当に良かった…と、二人を温かい目で見ていると不意に肩を叩かれる。
そちらを向くと保健室の先生が僕にサムズアップをしていた。
「青春してんな少年。頑張れよ」
「何がです?」
あまりにも場違いな物言いに僕も呆れたツッコミを返してしまった。
キャラの名前を考えることの次にタイトルをつけるのが苦手だと思う今日この頃です。




