幕間 故に…
「…ふざけんな。ふざけんなふざけんなふざけんなッ‼」
空に茜が差す頃、一条相馬は自身の苛立ちを隠そうともせず周囲に当たり散らしながら帰路についていた。
自販機横のゴミ箱を蹴り倒したためゴミが散乱するが、そんなことは相馬には関係なく、昼の出来事に思考のリソースは割かれている。
(揃いも揃ってこの俺に楯突きやがって…元を辿れば全部あのアカメとかいう奴から始まっている気がするな…)
横にいる陽?という奴も女のくせに鬱陶しいが筆頭はどう考えてもあいつだ。
あいつに感化され、これまで媚びたり不干渉を貫いてきた奴らも反抗の兆しが出ている。今日の湊がいい例だ。
そして何よりムカつくのは葵だ。
これまでは俺に媚びへつらうことしか出来なかったくせに、あいつらと関わって少し抗ってくるようになった。これまでは俺に呼ばれたらヘラヘラしてこっちに来たってのに。
あいつは絶好の玩具だ。男のくせに女みたいなことしてる異常性もあるが、顔が良いってのがいい。
葵を虐げてきた日々を思い出し、下劣な笑みを浮かべる。
相馬は葵をいじめることにある種の快感を見出している。
相馬にとって葵は、例えるなら草食の小動物であり、自分は肉食の大型動物である。
反撃してこない葵を虐げることによって優越感や支配欲を満たし、そこに葵が持つ女性性がかけ合わさることによって本人は自覚していないが間接的に性的な快楽を満たすことにも繋がっていた。
葵は自分の物である、それが相馬にとっての長年の認識。
だからこそ、許せないのである。
「今一度誰が主人であるか、しっかり教えてやらねぇとなぁ…」
相馬は下卑た笑みをより一層強めた。
葵に再度己の立場を理解させ、自分の元から離れられなくなるように。そして自分のものから葵が去った元凶であるアカメとかいう不届き物に報いを受けさせるために。
本当に薄汚れた、あまりにも醜い在り方である。
…だからこそ好かれるのだ。
相馬から力を得るために、そしてある種の協力をするために、邪なる存在は相馬へと接触を図ろうとしていた。




