「指スマ2」
牡蠣は海老と共に狩へ出かけていた。
この世界では生き物は絶滅しかけている。
それでも生きるためには、残された獲物を狩り、食べなければならない。
今日の獲物は猪だった。
二人は大きな木の上に身を潜め、下を歩く猪を静かに見つめる。
「もう少し近づけばいけるな。」
「うん。でも焦らないで。」
海老が小さく囁く。
牡蠣の指スマは強力だ。
親指を使って放つ技であり、放った瞬間に親指は消滅する。
しかし、その代償と引き換えに、指スマを受けた相手は跡形もなく爆発する。
外せば指を失うだけ。
だからこそ確実に仕留めなければならない。
猪がゆっくりと木の真下へ近づいてきた、その時だった。
ゴゴゴゴゴ……。
突然、大地が揺れ始める。
「え……?」
海老が顔を強張らせる。
次の瞬間、地面が盛り上がり、巨大な口が姿を現した。
鋭い牙が何列にも並び、その口は木の幹へと勢いよく食らいつく。
バキィィッ!!
太い幹が一瞬で噛み砕かれた。
「やばい!」
牡蠣たちは飛び降り、間一髪で地面へ着地する。
巨大な口は何度も地面を這い、生き物を探すように周囲を飲み込んでいく。
――地へ移動線。
数年前から世界各地に現れるようになった災害。
まるで地面そのものが生きているかのように動き回り、見つけた生き物を容赦なく喰らう怪物だった。
猪は逃げ惑う。
しかし地へ移動線は一直線に迫り、その巨大な口を開く。
牡蠣は静かに前へ出た。
「これは使いたくなかったが、やるしかない。」
海老は息をのむ。
「まさか、あれを?」
牡蠣は右手を握り締める。
二本の指に全神経を集中させ、ゆっくりと構えた。
「指ースマー2!!」
人差し指と中指が剣のようになり光った。
直後――。
ドゴォォォォンッ!!
閃光が世界を包み込んだ。
爆音と共に衝撃波が大地を削り、木々を吹き飛ばしていく。
土も岩も、猪も、そして地へ移動線までもが巻き込まれ、一瞬で消え去った。
気が付けば、そこには何も残っていなかった。
広大な大地がごっそりと消失し、巨大なクレーターだけが静かに口を開けていた。
海老は言葉を失う。
「……やっぱり、強すぎる。」
牡蠣は苦笑しながら、消えた親指を見つめた。
「だから使いたくなかったんだ。」




