26/46
第2章 沙織の章 第5話 【共犯(本編『彼女の視線』前夜)】
純から同人誌の誘いが来た。
「一緒に作らない? 私の文章と、沙織の絵で」
沙織は、純の原稿を初めて読んだ。
そこには、ある男性の観察記録が克明に綴られていた。
彼の仕草、彼の言葉、彼の秘密。
読んでいて、背筋が寒くなった。
この人は、人の心の奥底まで見ている。
そして、それをそのまま書いている。
でも、同時に、別の感覚が沙織の中に湧き上がった。この文章に、私の絵がついたら……想像しただけで、指の先がピリピリと痺れた。
まるで、触れてはいけないものに手をかけた時のような感覚。これは、今までの「優しい絵」とは違う。もっと深く、もっと危険な場所に、自分の絵が入っていく。
それが、恐ろしく、そして――たまらなく気持ちよかった。
同人誌が完成した夜、沙織は一人で出来上がった本を眺めていた。自分の絵が、純の文章と並んでいる。その一文一文を、自分の絵が支えている。
私は、この人の刃に、色を塗った。
その自覚が、沙織の中で何かを確定させた。
同時に、全身に鳥肌が立つのを感じた。




