第1章 Eの章 Eの告白 第4話 【一期一会の先に】
さらに数年後。
Eは、もう一度、瞳に会いたいと思った。今度は、確かめたいことがあったからじゃない。ただ、あの時、「一期一会」と教えてくれた人に、ちゃんと感謝を伝えたかったのだ。
自分から連絡を取った。アポイントを取った。
待ち合わせは、前回と同じカフェ。他愛のない話をして、お茶を飲んで、別れた。何を話したかは、あまり覚えていない。でも、それでよかった。
帰り際、Eはそっと、小さな紙袋を手渡した。中には、会社帰りに買ったクッキーと、一枚のメモ。
『一期一会。ありがとうございました。』
瞳はそれを見て、少しだけ目を細めた。
「こちらこそ。ありがとう。」
Eは微笑んだ。
それだけのことだった。でも、それができた。それが、何よりの成長だった。
Eは思う。
あの日、自分が見たものは何だったのか、今もわからない。でも、それでいいのかもしれない。
「真実」は一つじゃない。見た人の数だけ、物語がある。そして、その物語の一つに、自分も参加していた。それだけで、十分だった。
視線の連鎖は、どこまでも続く。たとえ、その先に「誰もいなかった」としても。
それでも、私は今日も、誰かを見ている。そして、誰かに見られている。
一期一会。その言葉を、今度は私が誰かに伝える番なのかもしれない。
---了---
※続く『Eの選択』でEの章は完結となります。
本編となる『彼女の計画』、スピンオフの「彼女の教室」、「彼女の喫茶店」も、ぜひ、お楽しみください。




