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第1章 Eの章 Eの真実 第7話 【その後】
あのメモが何をもたらしたのか、Eは正確には知らない。
でも、その後、社内の空気は変わった。
噂は加速し、やがて噂は社内を超えて広がった。
数週間後、Eはネットで見かけた。
「非常階段、見えてましたよ」——その言葉が、小説の中で使われているのを。
心臓が止まった。
(あのメモの言葉だ……)
さらに数ヶ月後、その小説が炎上しているのを知った。モデルが特定されたとか、プライバシー侵害だとか——
遠くで、何かが燃えている。
Eはそのすべてを「遠くから」見ていた。
自分が置いた一枚のメモが、どこか遠くで大きな火になっている。その火は、自分の手の届かない場所で燃え続けている。
でも、近づけない。近づくべきではない気がした。
Eは思う。
(私のあの一枚が、この連鎖の始まりだったのかもしれない)
でも、後悔はしていない。
あの時、初めて「わからない」まま、それでも「正しいと思うこと」をしたから。
もしあの時、何もしなかったら——また同じ後悔を繰り返していた。




