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束の間のランチタイムは、かなり穏やかなものでした。

 あの後、ゴエモンさんに報告に行き、後日、ドクター越智から『報酬』として、渋沢さんがゴエモンさんの所に送金されていた。


 ゴエモンさんの話によると、他からの依頼を受けた時の報酬よりも『さらに倍』で送られてくるから、彼も配分に困るらしい。


 それはそうだ。渋沢さんがネットバンキング経由で、1日1000万枚程、それが2日間連続で送られてくるみたい。

 つまり、今回の報酬は渋沢さん3000万枚って事だ。なので、面倒くさがり屋のゴエモンさんには、とてつもなく悩みの種らしい。


 そのため、代わりに機械に強いグソクさんが、私らの元へ均等になるよう、上手い具合に報酬を回している様だ。


 ていうか、毎回思ったけど、カラマリアからの報酬がエグいのよ。


 渋沢さん3000万枚ってさ、一体どこから資金調達をしている訳?

 と、毎度毎度思うのだが、まぁ、裏では臓器売買しているらしいから、そこがカラマリアの心臓部分だと思ってもいいかもしれない。


 私はお気に入りの黒ジャージ上下に身を包まれながら、数字が刻まれた通帳を呆然と眺め、自身の部屋で思い耽っていた。


 と言っても、これはここに来る前の自身の部屋にあった通帳とキャッシュカードで、名前は『竜宮多美子』と記載されている。


 あの時、身分証やらパスポートは消えたのに、何故かこの2つだけは無事だった様で、とても不思議だ。


 普通ならセットで、根こそぎ消えているはずなのに。傍から聞いたらご都合主義っぽいけど、現に手元にある訳だから、事実なのよね。うん。


 そのおかげか、グソクさんが分配してくれたお金は、ちゃんと私の通帳に振り込まれていたが、正直言うと、こんなにもいらないのよ。どうしよう。


 単純に生活に使う程度でいいので、コンビニのATMで上限いっぱいにおろすと、大好きな抹茶オレと抹茶プリンを買った。

 そして、サーフェスに戻り、部屋で呑気に食べて自分頑張ったよ。と褒め讃えるのが、自分への密かなご褒美だ。


 正直いうと、この平穏の日々が好きだからね。何事も無く、平和に続けばもっと良いんだけど……。



――ドンドン



「あっ……」


 しかし、部屋の扉からノック音がするので、開けてみると……。


「よっ。部屋、入ってもいいか?」

「えっ!?」


 何故か大きなコンビニ袋を左手に引っ提げながら、リルドが私の部屋へと躊躇なく入ってきたのだ。

 まぁ、付き合っているから良いけど、一応、女の子の部屋に入る訳だから、少しは躊躇ってよね。全く……。


「ていうかまた、そんなに爆買いして。何買ってきた訳?」

「あー……、焼き鳥と、レモンスカッシュだ。あとはコンビニ弁当諸々……」

「はぁ!? ちょっとそれ、買い過ぎじゃない? しかもその弁当の量……」


 彼は部屋に入ってくると、木製のテーブルにドン。と大量の焼き鳥と冷えたレモンスカッシュ、他諸々のコンビニ弁当やらを置いていたが、量が半端ないって。

 そのせいか、テーブル一面、食べ物で埋め尽くされていた。


 流石に私もそこまで、大食いでは無いんだけど。しかも夏の暑い時期だし……。


「……、何となくだ」

「何よそれ」

「報酬が入ったから、つい買い込んじまったけどな」

「あらま……」

「ま。安心しろ。これ、ほぼ俺が食う分だ」

「いや。ほんと、どんだけ食べる訳!?」

「腹減ったから仕方ねーだろ。でも、食べたかったら、そっから好きなの、食っても良いぞ」

「え! いいの!?」

「あぁ。それだけじゃ、昼足りねーだろ」

「いやいや……」


 別に昼飯は抹茶プリンだけ。て言う訳では無いのよ。

 ミニ冷蔵庫に昼ご飯、ストックしたやつが閉まってあるだけで、プリンで優越感に浸った後に食べようとしていたのに。


「あ。もしかして、冷蔵庫にあるのか?」

「そ、そうだけど……、あ」


 だけど、不安に思った私は確認の為に、咄嗟にミニ冷蔵庫を開けたら……、見事にもぬけの殻だったのだ。


 ぁぁあああ!

 そういえばお昼にエイトレイブンに行って、弁当も買おうとしていたのに、抹茶プリンに気を取られてしまい、すっかり忘れていたのだ。


 やっちまった! どうしよう!

 再度、コンビニに行くのも面倒臭いし、本当にこのままだと昼飯プリンだけ。になってしまう! あーもう!

 私は思わず、青ざめた状態で頭を抱えてしまった。


「ふっ」

「あー! 今、鼻で笑ったでしょ!」

「だっせー。て思っただけだ。冷蔵庫ん中、空っぽじゃねーか!」

「だって……、あると思って……」

「しゃぁねーなぁ。ほら。食えよ」

「これって……」


 すると、彼がコンビニの袋から、美味しそうな唐揚げ弁当と塩ダレが付いた焼き鳥を雑に取り出すと、割り箸と共に、私に渡してきたのだ。


「あ。ありが、とう」

「べ、別に。昼飯、食えて良かったな」

「あ。う、うん……」


 なので、私の部屋で彼と共に、昼食をとることになったのだ。

 部屋の中でのコンビニ弁当の食べ比べ、と言っても良いぐらい、買い込んでいるみたいで、かなり豊富な種類だったけど何だろう。


 私には焼き鳥に唐揚げ、彼のは豚カルビ弁当にネギが間に挟まっている豚串って。謎の鶏と豚の推しが凄いのですが……。


「それにしても……」

「何だ?」

「サラダだよね? これ……」


 だけど、よくよく見ると、カップサイズのサラダもしれっと入っていたのには驚いてしまった。生野菜は一切無いけど一応、彼なりに体調管理をしているつもりなのだろうか。ほぼ高カロリーなのが笑ってしまうが。


「あぁ。マカロニサラダだ。それがどうし……」

「あー。これも好き!」

「そ、そうなのか」


 私は静かにこくりと頷くと、マカロニサラダが入ったカップを手に取り、パカッと器用に開けると、ぱくりと口にする。


「う、うん! 美味しいっ!」


 マカロニと絡んだハムと、薄く輪切りにされたきゅうりとマヨネーズの風味と食感が、癖になるっ!


 思わず笑みが零れてしまった。


「……」


 しかし、何故か彼は、一瞬私を見て固まってしまったが、突然どうした!?

 だけど、見ないふりをしては、何食わぬ顔でカルビ弁当を口にしていたから、まぁ。いっか。


「……良かったな。食えて」

「あっ……」


 彼はそう呟くと、春雨サラダを手に取り、私と同様、パカッと開けると慣れた手つきで食べ始めたのだ。


 でも、本当に彼、ルーマニア人なのよね。

 箸を持つ所作とか、春雨の食べ方がほぼ日本人なせいか、思わずじーっと見てしまった。


「いや。別に……、って! 何ジロジロ見てんだよ! はよ食え! 弁当冷めるぞ!」

「今、夏だからそんな冷めないとは思うんだけど……」

「いいからゴタゴタ言わずに食えって!」

「はいはい!」


 しかし、彼は見られたのが余程恥ずかしかったせいか、思いっきり顔を真っ赤にしながら私に食え食え! と言ってきたのだ。


「どうした? 顔真っ赤で、熱あるの?」

「は? ねーよ! バカ!」

「あー! バカ言った! それ、メンコさんに聞いたら怒られるよ!」

「うるっせぇ! バカ! っていうか、でも、お前に対してはそんなんじゃ……」

「ふーーん……」


 だけど可笑しいなぁ。

 いつもの冷静な彼とは違って、言葉が曖昧で表情は困惑とか複雑。みたいな顔をしているのよ。それがまるで、恋バレしたナイトさんみたいで……。


「……わかった! そういう事にしておくねっ!」

「……は?」

「熱無いなら安心した。て事だよ。また、倒れられたら……、私もその……、心配する。から……、ね」

「……そーかよ」

「ぅん。さて、と。ご馳走様! とっても美味しかったぁぁ!」


 なので、私はたどたどしくも、満面な笑顔で両手を合わせてそう言うと、そそくさと後片付けをする事にした。


 だけど、私のテーブルの傍には、まだまだ弁当の山が積まれているのだが……。


「これ、どうしよっか……」


 日付を確認すると、明日明後日も大丈夫そうだった。


「あ。俺もご馳走様。そーだ。これ、やる」


 すると、彼は再度、積まれた弁当の山から彩りが良さげな弁当二つと、麺類を2つ、私に渡してきたのだ。


「は!? 急にどうして……」


 思わず聞き返してしまったが、それ全部、食べるつもりじゃなかったの!?

 驚きのあまり、声が裏返ってしまった。


「んあ? あー。冷蔵庫にストック、もう無いだろ。やる」

「あ。ええっと……」

「それと、今度買ってくる時は、野菜多めのも、買っておく。その、肉ばっかでごめんな」

「あ。いや。謝る事ないって。めっちゃ美味しかったから……」

「……ふっ。また、暇だったら来てやる」

「何よそれ」

「じゃ。筋トレしてくるわ」

「はぁー……」


 そして、彼は片付けた後、上から目線でそう言うと、颯爽と部屋を後にしてしまったのだ。

 何が肉ばっかでごめんな。暇だったら来てやる。筋トレしてくる。よ!


 わざわざ言わずに無言で行けばいいのに……。


 私は満腹に満たされた胃袋に、抹茶オレを流し込むと、爽やかな抹茶の香りで更に満たされていった。


 そういえば、あれから、あのブログ事件に関しては、普通に『ナイトメア事件』として、各SNSで広まったらしい。


 しかも、『呪い、オカルト系』の感じで流れたものだから、『見たら気が狂う』という物だったが、今はそんな噂は何故か、一つも流れていない。と。


 今回に関しては、全て、『らしい』で〆なければ、心の整理がつかなかったと思う。

 結局は解決ではなく、『未解決』で終わってしまったから。


 それに……、龍樹君に言っていた、『取り巻きの名前を教えて』や『後始末』をしないと。と言ったシイラさんの発言も、何かと不気味すぎるのよ。


 あと、真相が曖昧なのに、ドクター越智からの報酬が変に高かった事とか。

 正義感丸出しで突っ込まない方がいいとは思うけど、まさか……。ね。


 無駄にほじくり返さなければ良いけど、今は依頼も全く入って来ていないから、私達の出番は、今のところは、無し。よね。



 そういえば、あれから3日ほど経っていたけど、ミオ君も龍樹君も、カンナちゃんも、無事に退院したのかな。それにしたら早すぎるか。うーん……。


 あと、あの時、ナイトさんとメンコさん、何処かランチデートに行っていたみたいだけど、どこに行った事やら。


 それと、あー。シイラさんの事、すっかり忘れていた。真生くんとは、あれから上手く行ってるのだろうか。


 あのキルマイ騒動を起こしたぐらいのメンヘラ具合だ。あまりラボにずっと置き去りにしすぎると、逆にシイラさんが物理的に危ない様な……。でも彼は『後始末』の準備の最中だろうに。


 さてと……。

 私も頭をスッキリさせたいから、体を動かそう。と。

 なので、早速部屋を出て、トレーニングルームへと向かったのだった。

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