sideタミコ&??? 最後は何故か不穏な空気に包まれました。
「どういう、事だ?」
「僕も分からないんですけど、シイラさん、一体何を……」
「……」
私も思ったけど、取り巻き10人の名前を教えて欲しいって。何をするつもり? まさか、真生くん含めて……。
「えっ……」
だけど、ミオ君の顔が先程の穏やかな笑みとは違って、何故か青ざめていたのだ。
「あの、それ、ここじゃなくて、ライムで教えてくれるかな?」
なので、私は咄嗟に彼に言って、無理にでもお開きにしようとしていた。
折角帰ろうとした矢先に、何を言い出すのやら……。
「は! す、すみません。ミオがいたのに、配慮に欠けていました!」
「あのさ。配慮に欠けたとかそんなんじゃないんだけど……」
そして、彼ははぁー。と大きなため息をつきながらも、空になったミルクコーヒーが入った紙パックを片手で潰し、ゴミ箱へ投げ捨てるとこう語り始めたのだ。
「アイツらは群れで行動する事しか出来ない、頭がおめでたい奴らだよ」
「えっ……」
「だから、龍樹がわざわざ、そいつらを相手にする必要は無いって事だよ。良かったじゃないか」
「そう、なのか……」
「うん。ボクはそう思うけどねー。でも何でカンナさんのお兄さんがわざわざ……」
「だけど、なーんであのサイコ野郎が、そんなお花畑みたいな奴らに目をつけているんだか、さっぱりなんだけどよ……」
「それは僕もですよ。彼いわく、カンナに言ったら『お兄ちゃんは関係ないでしょ!』て怒られるから、僕にしか頼めないそうで……」
「……」
「……ミオ君」
「……え? ど、どうしました? タミコさん」
「何かあったら、ナイトさんやフグトラさんみたいな大人達に、助けを求めるんだよ。一人で解決しようと、勝手に無理して動いてはダメ。わかった?」
私は暫く考えた後、青ざめる彼に優しく言いつけたのだ。
シイラさんの事だ。恐らくミオ君の元にもふらりとやってくるかもしれない。
それに、彼が絶対的にミオ君に被害を加えない可能性が、無いとは言いきれないから、対策はしておかないと。
「あ。は、はい……」
「龍樹君も。何かあったら、真っ先にお父さんに頼むんだよ。龍樹君も、ミオ君同様、一人で何でもやろうとしちゃ、ダメ。わかった?」
「あ。は……、はい」
「どうしたタミコ? 突然お母さんみてーになってるけど……」
「とりあえず、帰ろう。話はそれから」
「あ。あぁ……」
「じゃあ。続きはライムで。またね! 龍樹君! ミオ君!」
「は! はい!」
「お、お気をつけて……」
なので、私達はそそくさと病室を後にしたが、まるで嵐の前の静けさの様で気味が悪いのよ。
「……おい。大丈夫か?」
「……うん。とても嫌な予感がしたからね。早くメンコさんの所に……、えっ!?」
そう言いかけた途端、階段付近のベンチに腰かけ、紙パックに入ったイチゴミルクのジュースを美味しそうに飲むシイラさんが座っていた。
空気が先程の穏やかなものとは一変して、体ごと冷凍庫に突っ込まれたかのような悪寒と静寂さが、廊下を包み込んでいた。
「おい。クソシイラ。やっぱお前入院してたんかよ」
「やっほ~。リルド。早く退院したいんだけど、ドクター越智からどうも許可が降りなくてさぁ~」
「そりゃぁ、簡単に降りねーだろうな。お前、根っこからイカれてるし」
「いや、それ関係あるぅ!?」
「あー。悪ぃな。で、そこにいるってことは、偶然を装って。だろうな」
「ご名答。実は待ってたんだ。タミコちゃんと……、リルドの二人をね」
「は?」
しかし、彼はストローを軽く噛みながらイチゴミルクのジュースを飲むと、こう語り始めたのだ。
「実は頼みたい事があってさ~。僕からの依頼、受け取ってくれるかな?」
「おいおい。急な依頼は受け付けてねーぞ。しかも『報酬付き』じゃねーと動かねーからな。て、元従業員のお前なら知ってたと思うが……」
「そーだったぁ~。まぁまぁ、報酬はちゃーーんと用意してあるから安心してよ~」
「そうなのね……」
だけど、何なんだろう。夏なのに、とてつもなく寒気がするのよ。
それに、シイラさんの漆黒な瞳が、いつもより焦点がズレていて、全く笑ってないように見えるんだけど。それが人間味が抜けた生物みたいで、怖いのが本音だ。
「まぁ、退院してから。になるけどさ。実はタミコちゃんにまつわる情報があったのを思い出してさ~」
「え!? 私に関する事、ですか?」
「そうそう! それを『報酬』にしようと思うんだけど、どうかな?」
「まさか、それって……、『アビス』に関する事。ですか?」
「……」
私は恐る恐る聞いてみるが、彼は軽く瞬きをしながらも、イチゴミルクのジュースを美味しそうに飲むと、沈黙の末、こう答えたのだ。
「……。半分当たり。半分は違うかな~」
「……は?」
「おいおい。毎度回りくどかったけど、今回は相当回りくどいな。何考えてんだ。お前」
リルドもいつも以上に警戒しているせいか、私を守るかの様に、彼の前に立ち塞がっているし。
「ま。ここでは詳しくは言えない。て事にしとくよ。それに……」
すると、彼はイチゴミルクのジュースを飲み干した末、ベンチから立ち上がると、リルドの耳元でこう呟いたのだ。
「報酬の内容は、リルドにも、聞いて欲しい事でもあるからね。それじゃ。僕は『後始末』の準備をするから、まったね~!」
「……」
そして、彼は意味深な言葉を残すと、笑顔ではらりと手を振りながら、その場を立ち去ったのだ。
「おいおい。後始末ってなんだ。まさか……」
「……。あまり、深く考えない方が良さそう」
「ていうか、タミコがそんなに青ざめてんの、珍しいな」
「あー……、それは……」
私は言葉を濁しながらも相槌を打ったが、相変わらずシイラさんは不気味だ。
先ほど言った『後始末』の準備って何!?
それと、メンコさんは『彼の方がヒガンさんより、行動が分かりやすい』とは言っていたけど、私にとっては、未だに掴みにくい人だ。
分かりやすいと話し込んでも、笑顔ではらりとかわしては、核心を刺してくる様な感じでやってくるから、とてもやりづらいのは事実だ。本当に面倒臭い人。
「さて。メンコさん、来てるかな」
「あぁ。来れば良いが、まさか、ナイトとデートとか行ってねぇだろうな」
「えぇー……。だけど、私達を置いて行く様な、自分勝手な行動、するかな?」
「どうだろうなぁ……。ん?」
階段で噂話をしながら降りていくと、すれ違い様でナイトさんと遭遇したのだ。
「あ……」
「Salute! ルーク!」
「んだよ。次から次へと……。ナイトじゃねーか」
「アハハ! エスピーノ代ワリ、アリガトウデス!」
「なーにが代わり、ありがとうだ。バカ」
リルドはというと、相変わらずの兄弟感満載の軽口を叩きながら、彼の頭に軽く頭チョップしている。
「イダッ!」
「どーせ『美々子』とランチデート、してたんだろ」
「!?」
どうやら、彼は翡翠色の目をまん丸くしながら驚いているから、図星の様だ。
全く。メンコさんもそうだけど、ナイトさんもリアクションが分かりやすすぎるのよ。
ほんと、二人揃ってリア充め。と内心小突きたくなる。
「エト……、ソレハ……」
「ったく。分かんねーと思ってたか。バレバレだ。バカタレ」
「アー! バカイウ、ダメ!」
「んじゃ。ちゃーんとミオのSPの仕事、頑張れよー」
「……、multumesc」
だけど、軽く言うとナイトさんは上へ、リルドは私と共に下へと降りて行ったのだ。
「……、悪ぃな。タミコ」
「ううん。少し和んだから平気」
「そっか……」
そして、再び二人きりになると、階段が静寂な空気へと包まれた。
「最近、ナイトさんと仲良いよね? 昔からあんな感じだった?」
「かもな。俺、最近はツブヤキにも顔出す事が多くなったからな。でもアイツ、連絡先は頑なに教えねぇのよ」
「ふーん。メンコさんにはすんなり教えたのに?」
「ホントそれな。それ知ってるゴリラ女、やっぱすげーなぁ……」
「だから、ゴリラ女はやめなさいって。それ聞いて怒られても知らないんだから」
「あー。悪ぃ」
「はぁ……」
だけど、相変わらずの口の悪さは全く変わってなくて安心したけど、メンコさんの事、ゴリラ女というのはやめなさいって。
なので、私は呆れ気味にため息をつきつつ、病院を後にしたのだった。
その後、駐車場でメンコさんと合流したが、彼女は何故か火照った顔で「あ。二人共、おかえり~」と言っていたのだ。
まさか、車内でイチャついてたのか?
確かに上は緑色でオフショルダーの服を着ていたから、変に気合いが入ってるなぁ。とは思っていたけど……。
でもいいや。恋が少しでも進展したなら。
私は他人事のように思いつつ、車の窓に映る黄昏の空と、高層ビルの群生を眺めていたが、そういえばあのお母さん、どうしたんだろうか。
思い出しても仕方ないとは言え、未だに気になるが……。
*
「……はっ!」
目が覚めると、何故か私は凛音の部屋にいた。
何でここに。いや。つい先程、友人と名乗る三人組にスマホを盗られて……。あぁ。思い出した。
なので、再度スマホを見ようと、凛音の骨壷の前に置かれたスマホを手にし、見てみるが……、ない!
初期化されていたせいか、凛音が大事にしていたイトウ君も消えてしまい、何もかも無くなってしまった。
あぁ。凛音。ごめんね。ごめんね。お母さん、貴女を守れなかった。
あの時だってそうだったわ。
私は凛音が小さい頃から、ベローエの信者だった。というのも、近所の人から『やってみない?』と勧誘されたのがきっかけだった。
なので、よく幼い凛音を連れて、一緒に両手を合わせて念仏を唱えていたわ。懐かしい。
あの時の凛音は、天使のように可愛かった。
戻れるならば、もう一度『素直で可愛い幼い』凛音がいた時代へ戻りたかった。
だけど、凛音は大きくなっていくにつれ、一緒に念仏すらも唱えてくれなくなったわ。引きこもっては神に念仏を唱えるのではなく、スマホにいるイトウ君に話しかけていて……。
いつからこんな風に変わってしまったのでしょうね。
そのせいか、彼女が深い傷を抱えて帰ってきたとしても、『信心が足りない』とか『もっと願わないから罰が当たる』とか。
だけど、教祖様が言っていることは正しいと思うわ。
そうでもしないと……。
私は少しだけ膨らんだお腹を擦りながら、凛音の部屋を後にし、リビングへと向かう。
今度はもっと、『信仰心の強い子』にならなきゃね。
そして、膨らんだお腹を擦りながらも、私はこう一言、笑顔で語りかけたのだ。
「もうすぐで、ママに会えるねぇ。凛音」
これにて、真夏のナイトメア編は、終了です。
今回は『創作とは』『AIとは』と、SNS上で疑問に思っていた事を色々考えつつ、この章に入れてみました。
まだまだ続きますが、一先ず、ここまで読んでくださった方々、本当にありがとうございます。
『このキャラが好きになった』等、ありましたら、感想等で言ってくださると、今後の執筆活動の励みになります。
リアクション、☆、レビュー、どれも糧として頑張っていきますので、応援よろしくお願い致します。




