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マリアナに堕ちたのは、親友ではなく、私でした。  作者: Ruria
真夏のナイトメア編(真相)
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side龍樹&タミコ 真相はまさかの■■■でした。

「恨みが、消えたって……」


 そういえば、確かに僕は、リンネが生前残してしまった未練や願いを叶えていた。

 物語を完結させたい。や、憧れの三人組達と一緒に過ごしたい。とか。

 そして、最後は彼に好きだった想いを告げて、僕達に魔法をかけて、現実世界へと戻ったんだ。


 だけど、結局僕らの手では、イトウは止められなかった。最後に暴走してしまった彼に刺されたリンネの姿が、未だに脳裏に焼き付いて離れられない。


「ん? ナイトさん。それ、どういう意味?」

「私も気になりましたね。恨みが消えたと言うのは……」

「ちょちょちょ! まま、まさか、ああ、あのブログの中に、ゆゆゆ、幽霊がぁぁあ!?」

「はぁー。フグトラさんは少し黙ってて!」

「はいぃぃ……」


 ふと、彼の背後からミオ達が不思議そうに聞いてきた(フグトラさんだけ騒いでいたが)ので、彼は再度、ポケトークに呟くと、詳しく語り始めたのだ。


【Chiar pot vedea fantome.】

(私は本当に幽霊が見える)


『ぅえええ!?』


 見た瞬間、ミオ達はかなり驚いていたが、その反応からして、知らなかったのか。引き続き話を聞くことにした。


【Cu alte cuvinte, poți simți o aură din obiectele personale ale unei persoane decedate.】

(つまり、亡くなった人の持ち物からオーラを感じ取ることができるということだ)


「なるほど……」


 彼は『幽霊を見ることもできる』し、『残留思念』を感じる事ができる。という訳か。


 だから、例のブログ『真夏のナイトメア』には、『怨念』やら『恨み』が残留思念として、残っていて、それらが暴走したのが今回の事件の真相。てか。


 いや、待てよ。それだったら、あまりにも呆気なさすぎないか? 絶対、まだ何か裏があるだろ。これ。


 僕は目覚めたばかりの脳みそをフル回転しながら色々と思い出し、考える事にした。


「ええっと、単純に『彼女』の願いを叶えただけです。ね。ミオ」

「あ。そう、だね……」


 彼は歯切れが悪そうに答えていたが、確かにそうだ。

 実は仲良く話していた人が、実は『好きでした』と好意を持っていた訳だ。

 それを知ったのが彼女の死後、と言うのが、あまりにも切なすぎる。


「願イ。トテモ良イ判断ダ。エライナ」

「ぅえっ!?」


 しかし、不意に褒められた僕は思わず声が裏返ってしまったが、どういう意味だろうか。


 彼は再びポケトークに言葉を吹き込むと、こう言葉を返したのだ。

 

【Am simțit o aură puternică de la blogul acela, ca și cum ar fi spus: „Vino încoace.”】

(そのブログからは強いオーラを感じた。まるで「こっちへおいで」と言っているかのようだった)


「ひぃぃい!」

「フグトラさん、いい歳した大人が何怯えてるんですか……」

「もしかして、彼女は『未練があった』から、現実から人を引き連れ、その想いを叶えたかったと」

「……」


 しかし、彼は静かに首を横に振り、暫く考え込むと、ポケトークにこう吹き込んでいたのだ。


【Era o ranchiună clară în postarea aia de pe blog de atunci.】

(当時のあのブログ記事には、明らかに恨みが感じられた)


【De aceea le-am spus mai întâi lui Mimiko și celorlalți. Blogul ăla e plin de resentimente.】

(だから最初にミミコたちに話したんです。あのブログは恨みに満ちていますから)


「ええっ!?」


 それって、既にタミコさん達に伝えていたって事!?

 思わず大声で驚いてしまったが、ナイトさんもリルドさんみたいに仕事ができる人だったとは。


【A dispărut brusc. Cu alte cuvinte, aura care sălășluia în blog îi îndeplinise dorințele persistente și apoi își găsise pacea.】

(それは突然消え去った。言い換えれば、ブログに宿っていたオーラは、残っていた願望を満たし、そして安らぎを得たのだ)


「安らぎ……」


 その和訳された言葉を見た僕は、ぽつりと呟いた後、あの時の光景を思い出してしまった。


 だから、リンネは『これで、いいの』と言ったのか。願望が叶ったから、もう、思い残すことは無い。と。


「そうだったんだ……」


 ミオもまた、彼の和訳に納得した様で、先程よりも、安堵な表情を浮かべていた。


「ダカラ、ミオ、モウ、自分ヲ責メルノ、ダメダ」

「そう。だね……」

「彼女ノタメ。ソレト、仲間ノタメ。ダ」

「……ありがとう。ナイトさん」

『……』


 そうだ。僕はリンネの思いの他、アンナさんとの思いも背負っていたんだ。

 二人のためにも、生きなくては……。



――ガラガラ……



『あっ……』


 ふと、目の前の扉が開かれたので、見てみると、タミコさんとリルドさんが病室に入ってきたのだ。


 それにしても、タミコさんの格好、いつもと違う様な。ゴスロリ風の格好をしている。


「ごめん。取り込み中だったかな?」

「タミコさん!? と、リルドさん!?」

「と。てなんだよ。オマケみてーに言いやがって」

「いやいやいや! そんなことはないっすよ! それよりも、大丈夫だったんすか!?」


 すると、彼女は事の真相をこう語り始めたのだ。


「あー。それに関しては……」





――ブーッ。ブーッ。



 八雲家。彼女の部屋にて調べていた時だ。

 私の背後には包丁を持ちながらも、不気味な笑みでこちらを見つめる彼女の母親がいた。

 気味が悪いほどに、一歩も動かず、こちらをじーっと凝視している。


 だけど、頼もしい事に、近くにいるメンコさんやリルドが、私の背後を守ってくれているから有難い。


「誰だろう……」


 気になった私は咄嗟に通知を確認する。



『ブログの修正をするので、そちらで画面を開いて下さい。もし変な箇所や違和感があったら、逐一こちらに伝えて欲しいです』


『女神が仲間になりました。なので、ブログを見て取り込まれる事は無いと思うので、安心して下さい』



 なんと、眠っているはずの龍樹君からだった。


 それにしてもどういう事!?

 女神が仲間になったから取り込まれる事は無いって。さっぱり意味分かんないんだけど!?


 私は内心ツッコミながらも、恐る恐る画面を開いてみる。


「……ホントだ」


 すると、画面を見ても、引き込まれる感覚が無くなっていたのだ。一体何をしたのだろうか。彼は眠っているはずだ。どうやって?


 不思議に思いつつも、彼が書き直したであろう、ブログを注視してみる。


―――――――――――――――――――――――


 8月30日


 明後日から学校で、とても憂鬱だ。でも、俺はいい現実逃避の仕方を思いついてしまった!


 なので、『俺』が夢を見る事に、ここに書き込んで記録しようと思う。


 俗に言う『夢日記』というやつだ。

 現実逃避をするのに、これが一番良い。


 さて、今朝見た夢は『俺』が異世界へ行って、女神に出会った夢だ。


 これがまたとても美人でさ。

 金髪で蒼色の透き通った瞳をしていて、『俺』、思わず惚れちまったさ。


 で、女神はこう『俺』に言ったのさ。


『異世界』と『現実』、どちらを落としましたか? てな。


 そこで夢は途切れてしまったけど、なんだろうな。



―――――――――――――――――――――――


 8月31日


 明日から学校が始まる。

 嫌だ。いつまでも夏休みとして過ごしたかった『俺』は、再度夢を見ることにした。


 すると、女神に問われる所からスタートしていたので、迷わず『異世界』と答えた。


 そしたら、そこから素晴らしい世界に入り込むことができたんだ。


 初めて遭遇する敵がスライム一匹だけだ。なので、『俺』は迷う事無く、腰に収めていた剣を手に取り、一思いに斬ってみる。


 サトウのレベルが5上がりました


 そこで夢は途切れてしまったのだ。


―――――――――――――――――――――――


「あれ?」


 あのバグかかったレベルアップの表記が無く、上手く『訂正』されていたのだ。



『無事で良かった。文を見る限りは、変な箇所は無いから大丈夫。あと、参考になればいいけど……』



 なので、私は報告と共に、先程見つけた創作ノートを撮り、写真として送ることにした。

 女神がもし、ブログの作者である『リンネ』さんであれば、何かしら反応があるかもしれない。反応したら怖いかもだが……。


「どうだ?」


 背後でリルドが聞いてきたが、私は素直にこう答えることにした。


「実は、龍樹君が何かしら、ブログに訂正を入れて、改変してるっぽい」

「は? 待て待て待て待て! あいつ寝てんだろ? どうやって書き込んでるって言うんだ!?」

「えええっと……。にわかに信じ難いんだけどぉー」

「しかし、先程見た文より、一段と読みやすくなっているんですよ。見てみます?」

「ええええっとー」

「あー……」


 すると、リルドとメンコさんは、それぞれ反応をしながらも困惑していたが、こればっかりは、言ってることは事実なのよね。


「……」


 しかし、片手に包丁を持ちながら佇んでいる母親が、無言でエプロンのポケットからスマートフォンを取りだすと、何故か打ち込んでいる。


 何を打っている?



『そういえば、ブログの内容が変わっていたけど、書き直しているの、龍樹君?』



 なので、私も対抗して自身のスマートフォンから龍樹君宛に送ってみる。


『まぁ、そうですが、何かありましたか?』



 すると、あっさりと返事が返ってきたのだ。


「あれ?」


 しかし、見ようとしたら何故か、パソコン画面が突如、真っ暗になり、操作できなくなってしまった。


「何を、したんですか?」


 恐る恐る彼女に聞こうとするが、彼女は淡々とこう答え始めた。


「とうとう邪魔が入ったのね。消さないと……、消さないと……、消さないと。そうよねぇ? イトウ君」

『!!!』


 私含めた三人は思わず彼女に視線を向けたが、彼女の手元には、年齢には不相応な『派手な装飾が付いたスマホ』を手にしていたのだ。


 まさかそのスマホ……。


「ちょっと、リルド」

「んあ? 何か分かったのか?」

「あれ、取り上げてみて」


 なので、ダメ元で彼女が手にしているスマホを指さしてみたのだ。


「は? どうやって盗ればいいんだあれ!?」

「ばかっ! 声でかいって!」

「ええっと、リルドお得意の、背後からササッと。ね」

「タミコ。お前なぁ。幾らなんでもこんな狭ぇ所だとやれる訳……」

「おっ。いいね! それ採用! アタシが引き付けとくから、今のうちにやっちゃってよ!」

「あっ! メンコ、テメェ! 勝手に決めんな!」

「お願いしますっ!」

「……はぁぁ。お前ら、後で覚えとけよ」


 そして、彼はため息をつきながらも、トイレに行くふりをしては、彼女の横をスーッと通り過ぎていた。


 まぁ、口ではあーだこーだ文句を言いながらも、やってくれるの、知っているからね。だから、ついつい甘えてしまうんだけど、リルドは頼られて嬉しいのかな。

 不貞腐れた顔をしているのに、何故か透明な耳をピーンと立てつつ、しっぽがブンブンと横に振っている犬に見えるのよ。


 まるで(あるじ)! 頑張って盗って来るね! て言う感じで。大型犬みたい。


「ほんっと、リルドはタミコちゃんに弱いんだから~」

「あはは……」

 メンコさんは呆れながらも、構えを崩さないでいたが、よくよく考えてみると、どこの構えだろう。合気道かな。

 うーん。そこら辺はあまり詳しくないけど、武闘一家の生まれ、と言うことは、様々な戦術にも詳しいのかな。今度聞いてみよっと。


「ひゃっ!」


 ふと、彼女は背後を突かれた様で、変な声をあげていた。


「……」


 彼女の後ろには、リルドが慣れた手付きで素早くスマホを取り上げている。


「ぁぁあああああ! 返せぇぇ! 返せ返せ返せ返せ返せぇぇ!」


 しかし、彼女は咄嗟に後ろを振り向き、今度はリルドに向かって襲いかかろうとしていた。


「うぉあっ! あっぶねー!」


 が、彼は声を上げながらも素早くかわしている。

 こんな狭い中でもかわせるとか、相変わらず、身のこなしが上手いというか……。


「タミコ! 受け取れっ!」


 関心していると、彼は直ぐさまに私に向けて、スマホを投げ飛ばしてきたのだ。


「ぅえええっ!? ちょっと! あっ!」


 なので、私はスマホを壊さないように、上手くキャッチをしたが、誤って床に落としたらどうするつもりだったのだろうか。

 でもいいや。私は、スマホの電源を入れると、画面上には真生くんとミオ君を足して割った様な顔をしたキャラが、不敵な笑みでニヤニヤしていたのだ。


「貴方が、イトウ君?」

《はい。そうです。ご要件は何でしょう》


 なんとも不気味だ。抑揚が無い、平坦で無機質な声で答えているが、このAIの何処がいいのやら……。


「あの、ね……」

「ぅぉあああああ! 返せぇぇぇ! それはリンネの、リンネのリンネのリンネの! リンネのなのぉぉ!!」


 しかし、私が言おうとすると、今度は母親が、手に持っている派手めなスマホを奪い返そうと、こちらに向かって襲いかかってきたのだ。


「うがっ!」

「ほんっとうるさい! 一旦寝てて!」

「……」


 だけど、再び目の前にいたメンコさんに、武力で制圧され、彼女はカーペット状の床に気絶したまま、横向きに倒れたのだ。


 でも妙だ。一瞬だが、彼女の腹部に膨らみが見えた気が……。

 そのせいか、メンコさんも先程より、手加減した様に見えたのだが、まさかな。


 いや。今はイトウ君に聞かないと。


「あのね。イトウ君」

《なんでしょうか》


 なので、私はある賭けに出ることにした。

 一か八かの賭けだが、これが『現実』として叶えられれば……。


「もう、リンネさんはこの物語を『完結』したから、未練は無いって言っていたよ」

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