side龍樹 現実に戻ったが、何故かカヲスな展開が待ってました。
「……」
目覚めると、前みたいに、病室のベッドに横たわっていた。
エナドリ中毒で入院した時とは、また違った感じだ。点滴が無い。
試しに軽く頬をつねってみたら、痛覚を感じた。痛い。そうか。やっと現実に戻れたんだ。
「大丈夫か?」
すると、白衣姿の父さんが、覗き込むようにこちらを見ていたので、思わずこう言ってしまった。
「……、勝手に行動して、ごめん……、なさい」
「謝るな。なんも悪くねぇだろ。お前は」
「うわっ!」
そして、思いっきり頭を撫でられた後、父さんはこう話してくれたのだ。
「ここに搬送された生徒達はさっき、みんな目が覚めたぞ。何があったか分からないが……」
「……そっか」
「あぁ。お友達も目が覚めたみたいでな。隣の病室だから、運動がてら、顔を見に行ってこい!」
「……あ。う、うん」
「それと、お前……」
「ん?」
僕はベッドからむくりと起き上がろうとした時、父さんからこんな事を言ってきたのだ。
「……益々、死んだ母さんに似てきたな」
「……は?」
「あぁ。そりゃ、驚くか。お前が小さかった頃に、事故で亡くなったがな。彼女はお前に似て、記憶力も凄かったし、天然で無駄に正義感が強かったからな。ははは!」
「……それ、初めて聞いたんだけど」
「あー。今言ったからな。それじゃ、回診があるから、続きはまたな」
「あ。うん」
いつものやり取りが戻った感じがした。
でも、まさか父さんの口から、母さんの話が出てくるとは思わなかったけど。
小さい頃に見たことある程度の朧気だが、覚えているんだ。
僕を産んだ母さん。一度で良いから会って、話したかったな。
でも、そんな父さんとの何気ないやり取りが、こんなにも温かいなんて。穏やかな気持ちになる。
夏の日差しが病室の窓から差し込んでいるせいか、とても眩しいけど、生きた心地がする。
なので、寝ぼけ眼でベッドから起き上がり、スリッパを履きながら、夢の中で起きた事をあれこれと考えていた。
――トントン
「あ。どうぞ……。ぅええ!?」
「なーんで急に驚くんだよ~。やっほー!」
すると、病衣姿の……、シイラさんが突然、僕の病室にやってきたのだ。あ。カンナのお兄さんの方だ。相変わらずヘラヘラと笑っている。
「はぁー。普通に驚きますって。何でここに……」
「あー。実は僕さぁ、現在『過労』で入院中なんだ~」
「それ……、リルドさんとほぼ一緒じゃないですか」
「違うよ~。リルドは君とおんなじで、過剰摂取で入院。僕は倒れたカンナをここに運んでいた時に、院内で突然ぶっ倒れて入院だからね~」
「えっ……」
驚きのあまり、口をポカンとしてしまったが、シイラがこうなったの、真生は知ってるのか?
「ま。そりゃ。驚くか。何で僕みたいなタフな人間が、こんなの纏って入院しているのか」
「確かに驚きましたが、もしかして……」
「あ。実はここに来たの、お礼を言いに来たんだよね~」
「お礼? ですか?」
「うん。いつもさ、カンナの事、気にかけてくれて、ありがとう。兄から改めて、礼を言わせて欲しい。て思ってね」
「それで、来たんですね……」
いや。こちらこそ、カンナには助けられっぱなしだ。
頭を小突かれたりと、色々やられるけど、彼女は正論しか言わないから、一緒にいると、とても気が楽なんだよね。
他の女子とは何か一線を画する、というか。
「それと……。真生に関しては安心していいよ~。ラボでお預かり中だから」
「そうですか……」
「うん。僕は暫く、彼の対応にも追われていたからね。君やカンナの事、気にかけてやれなくて、申し訳なかった」
「ええっと……」
何だかこの時のシイラさん、普段のサイコ発言する倫理観バグった人から、普通の成人男性になっているような……。
「それと、実はタミコちゃん経由で、カンナから聞いたんだよね」
「何を……」
しかし、彼は一瞬、真顔になると病室の扉に鍵をかけ、こう告げてきたのだ。
「この、ナイトメア事件の『真相』に、真生が大いに絡んでいた事を」
「っ!!」
「その反応だと、知ってたんだね。全く……」
「えっと……」
「あー。知らないとでも思った? ま。僕もそこまで、煩悩に塗れた、脳内お花畑ではないからさ~」
「まぁ。それは……」
だけど、この人にはやっぱり、何やっても敵わない。
ニコニコ笑いながらも、静かに爆弾を落としてくるから、下手に怒られるより、何倍にも恐怖心が増してくるんだ。怖すぎる。
僕は怖さのあまり、たじろぎながらも相槌を打つしか方法が無かった。
「それに関しては安心していいよ~。退院したら、ちゃーんと『躾』ておくから」
「……」
だけど、何でこんな事を、わざわざ僕に言ってきたのだろうか。タミコさんにでも言いに行けば済む話なのに。
「でも、何でそれを僕に?」
「ん? あー。そうだねー……」
しかし、彼は何かを考える仕草をしつつ、こう語り始めたのだ。
「君ならタミコちゃん達から、僕に関する事を言ってきたとしても、ちゃんと『言い訳無く、伝えられる』と思ったからね」
「ええっと……」
つまり、僕の事を伝達係か何かでも思っているのだろうか。
時たま、こんな風に言ってくることもあるから、油断大敵だ。
「ま。簡単に言えば、真生は悪い事をしたら、『必ず言い訳をする』から、それを『防止』するための君なんだよね」
「……は?」
さっきから何を言っているんだ?
彼は突然変な事を言い出してきたので、開いた口が塞がらなかった。
「だってー、龍樹君は『とても記憶力が良い』からね~。一言一句外さない程の正確さだ。だから、僕にとっては、とっても頼りになるんだぁ~」
「えええっと……」
しかし、彼はこっちの反応もお構い無しで、相変わらずのテンションで、続け様にこう話してくる。
「ま。端的に言えば『真生とグルでいた生徒』の名前を全員、覚えている範囲で良いから、僕のライムに送って欲しいんだよね」
「えっ……、ぜぜぜ、全員ですかぁ!?」
「うん。それに、カンナに言ったら『お兄ちゃんは関係ないでしょ!』て怒られるからさ~。龍樹君にしか頼めない訳よ」
「あ。そう、なんですね……」
思わず相槌を打ちながら聞いていたが、まさか、シイラさんからそんな頼み事をしてくるとは。
驚きのあまり、言葉を失ってしまった。
それにしても、『真生とグルでいた生徒』の事を聞いて、何をするつもりだろうか。
だけど、これは二人だけの問題だ。
無闇矢鱈に聞いたら、その場で彼に消されかねないのが目に見えている。
なので、ここは素直に答えた方が良いか。
「は、はい。分かりました。何人かは確かに覚えてはいるので、後でライムに送りますね」
「ありがとう。とても助かるよ」
「は、はぁ……」
「では。また思い出したら、気軽にライムに送っていいからね~。んじゃ!」
そう言うと、彼はそそくさと病室を後にし、部屋の中には僕一人だけ残った状態となったのだ。
まるで嵐が過ぎ去った後の静けさの様で、病室は静かだ。
「ふぅー……」
僕は一旦、深呼吸をする。
気を落ち着かせるためだ。
恐らく彼は、真生に悪影響を及ぼした人を、順番に、片っ端から躾ていくのだろうな。しかも法律グレースレスレな方法で。
まぁ、どういう方法かは、自分から知りたくもないが。
それに、八雲さんの件はどう考えても『彼一人』では出来ないからね。パパ活させられたり、集団リンチに遭った。とか。
それが彼に届いているとしたら、カンナも将来的に狙われる可能性があると察したからだろう。
先見の明がある。とでも言っておこうか。
けど、あの取り巻きは、かなり厄介だった記憶がある。
例えるなら、真生みたいなのが10人ぐらいいる感じだ。
どうやって処理していくのだろう。
まぁ、彼から見たら『レアな商品がいっぱいある!』という感覚だろうな。常人には理解できないや。
でも、僕はミオやカンナが元気に傍にいてくれるだけでいい。
だから、彼がやろうとしている事も、今後、『目を瞑って』行く事になるかもしれない。
逆に汚れ仕事を彼に担わせてしまった、という申し訳なさもあるかもだが……。
「さて。ミオの所に行こっか……」
一息落ち着いた僕は、病室を後にすると、隣の病室へと向かった。プレートには『熊野澪』と取り付けられている。
「確かに隣だ……、ん?」
――ごめんなさい……。
ふと、彼の謝る声が聞こえてきたので、そっと扉に耳を澄ましてみる。
――ナイトさん。怪我は大丈夫……、ですか?
――心配ナイ。ミオ、平気カ?
もしかして、片言で話している人がナイトさんか?
そういえば、ナイトさんは確か、リルドさんの双子のお兄さんらしく、今はミオのSPとして、学校の送り迎えをしたりしている。と、カンナからそんな事をチラッと聞いた様な……。
だけど、あまりにもかっこよすぎて、校門前には女子高生がわんさかいたらしく、帰るのに時間がかかっちゃった。てミオが愚痴っていた様な。
――ボクは、平気です。でもナイトさん、ボクがスマホを取られそうになって、暴れていたのを、止めてくれたのに……。
――コレクライ、平気ダ。痛クナイ。
「……」
もしかして、ブログを見続けていて、スマホを取られそうになった際に、暴れてしまった事を謝っているのか。
そういえば、僕もクラスメイトがスマホ片手に何かを凝視していたから、変だと思って取り上げようとしたんだ。
そしたら、相手がいきなり怒りだしたから、抑えるのに大変だった事を思い出した。
あ。学校で起きた出来事だ。その相手は保健室に連れて行かれたみたいだが。
――でも……、でもっ! ごご、ごめんなさい! ヒガンさんやフグトラさんにも、迷惑かけちゃった。どうしよう。ナイトさん……。
――Nu te mai învinovăți.
「!?」
しかし、彼は聞いた事のない言語を話していたため、詳しくは聞き取れなかった。
何を言ったのだろうか。気になったけど、暫く待つことにした。
――どういう、意味ですか?
――自分ヲ責メルノ。ダメ。
――でも……。
――ミオ、エライ。エライ。
――ええっ!? そんな……。
「!?」
気になり過ぎた僕は、少しだけ開いていた扉の隙間から病室の中を覗いてみると、背丈もリルドさんにそっくりな赤髪の人が、優しく彼の頭を撫でていたのだ。
――ボクはエラくないよ。それに、八雲さんの想い、無下にしちゃったし……。
――ムゲ? ソレ、チガウ。
――だって、相手はボクに好意を抱いてたんだ。好きだったんだよ! それなのに……。ボクは……、ボクは……、ぅぁああああ!
――……。
ミオはあの時の僕の様に、子供の様にわんわんと泣きながら、ナイトさんにしがみついていた。
隙間からでも見えてしまったが、見ないふりをした方が良いかもしれない。後で来よう。
そう思い、そっとその場から離れようとした時だった。
「おや? 龍樹君じゃないか!」
「ぅええ!?」
「あー。こんちゃっす! いつもミオさんの事、気にかけてくれて、ありがとーっす!」
「あ。あ、あぁ……」
背後から声がしたので振り向いたら、ミオがよくポンコツと愚痴っていたヒガンさんとフグトラさんが声をかけてきたのだ。
「ダメですっ! しーっ!」
「はっ! すみませんね。お取り込み中でしたか……」
「ったく、少しは空気を読むように心がかけて下さいっすよ。ヒガンさんは」
「それは貴方も同じでは?」
「だから、今ミオはナイトさんと大事な話を……」
――ガラガラッ!
その瞬間、病室前の扉が勢いよく開かれ、ナイトさんが鬼の形相でこう言ってきたのだ。
「何シニ来タ。今、取リ込ミ中ダ」
『ひぃぃい!』
「用アルナラ、早ク言エ」
「あぁ。ええっと……」
「……」
あまりの怖さに僕達は声がひっくり返って固まってしまったが、なんなんだこの迫力は。
てっきりリルドさんみたいに優しい人かと思っていたのに。
見た目が緑色の半袖パーカーに黒いカーゴパンツ。片目は黒い眼帯で覆われ、両腕組みながらも無言で仁王立ちをしている。
そのせいか、SPと言うより、溜まり場を取り仕切るギャングのリーダーにしか見えないから、余計に怖いんですが……。
「ナイトさん。誰が来たんですか?」
「アァ。ヒガンサン達、来タ」
すると、背後からミオの声がしたので、あっさりと彼は答えていた。
「あー。ポンコツ三銃士か。ムルツメスク! 下がっていいよ」
「リョウカイ。先程ハ失礼シタ」
しかし、彼はそう言うとミオの元へと戻り、軽く手招きしてきたのだ。
だけど、先程のあの気迫は何だったのだろうか。物凄く命を取られるような殺気がしたのだが……。
「全く。三人揃って盗み聞きとは、呆れましたよ。はぁ……」
「え!? ミオさん! 俺達は来たばっかっすよ! 盗み聞きしてたのは……」
「そうですよ。盗み聞きしてたのは……」
しかし、フグトラさんとヒガンさんは、僕の方をじーーっと見つめてはそう言ってきたのだ。
「は!? ちょっと! ええっと、じゃあ、またね。ミオ……」
公開処刑された気分で恥ずかしくなった僕は、思わず言い訳をしながら病室から逃げ出そうとした。
「ドコへ行ク」
「ひぃぃいい!」
「マダ、話シテルダロ。ココデマテ」
「は、はは、はぃぃ……」
しかし、いつの間にか僕の背後にいたナイトさんの気迫に負けてしまったため、渋々空いているパイプ椅子に座ることにした。
「……で、どこまで盗み聞きしてました?」
「ええっと……。ご、ごめんなさい! ミオがナイトさんに謝る所から今まで、全て聞いていましたっ!」
「はぁ……。正直言って、恥ずかしいですよ。龍樹。ボクはナイトさんに『だけ』、色々と話そうとしていたのに……」
彼はベッドテーブルに置かれた牛乳パックに入ったミルクコーヒーを飲むと、軽くため息をついていた。
「そんなっ! ナイトさんにだけ、秘密の話をするって……。もしかして俺、ミオさんの護衛、クビっすか!?」
だけど突然、フグトラさんが何故か訳分かんない事を言い始めたのだ。
「いやいや! フグトラさん! ボクはまだそんなこと、一言も言ってないでしょ!」
「だってー……」
「ちょっとミオ様! ナイトさんはミオ様専属のSPですが、専用では無いですよ! 『デットプールのみなさん』のものですよ!」
「いやいやいや! ヒガンさんも何変な事言ってんの!? ボク独占してないから!」
「しかし……」
「あーもう! 二人のせいで話が色々と可笑しいことになってるんだけど!? 一旦、ガチで黙ってて!?」
『は、はぃぃ……』
そのせいか、一時カヲスな展開となってしまったが、ミオの一喝で二人は大人しくなったのだ。
でも、何でこんなにも話がややこしくなる!?
ナイトさんはというと、三人のやり取りを見ては両腕を組んでフッ。と軽く笑っている。
「はぁー。ごめんね龍樹。いつもこんな感じなんだ……」
「あ。いや。何だか賑やかで楽しそうだな。て思って……」
「そうか? だって、ツブヤキでも、ヒガンさんが推しに全集中しちゃって、収集がつかなくなることが度々あって……」
「そそ、そんなっ! 私はただ、頑張って負担が無くなるように色々とやっているだけなんですよ!」
「と言いながらも、経費度外視で、裏メニューだか新メニューだか、マスターと共謀して勝手に開発しないでくださいよ! 覚えるこっちの身にもなってください!」
「ありゃりゃ。バレちゃいましたか~」
「それは完全にバレるっすよ。何やってんですか。ヒガンさん」
「あ。フグトラさんは、昼間っから優雅に抹茶オレを飲んで業務をサボってる。ってマスターからライムで伝言がありましたけど……」
「ギクッ!?」
「ったく……。二人共ボクがいない間に、勝手気ままにやらないで下さいよ。まぁ、サボっていたら、ナイトさんからの鉄拳制裁が下るように、マスターと彼に伝えておこうと思っていましたので……」
「ひぃいい! そそそ、それだけは勘弁して下さいっすぅぅぅ!」
「……」
でも、ミオは何だかんだ毒舌を吐くけど、とっても楽しそうだなぁ。
前の時より明るくなった彼を見て少し一安堵してしまった。
「それにしても、まさかミオさんに、全部バレてしまうとは……」
「そうですね。私としては、不覚を取りました」
「あの、フグトラさん。ヒガンさん。バレない前提で動くの、やめて欲しいんですけど。全部ボクにバレてますからっ!」
「……フッ! アハハハハハ!」
すると、ミオの隣で静かに聞いていたナイトさんが、堪えきれずに笑っていたのだ。
『ぅえええ!?』
思わず声を揃えて彼に視線を向けていたが、何かツボに入ったのだろうか。僕は事の顛末を静かに見守る事にした。
「ヤッパリ。ミンナ、好キデスッ!」
『ナイトさぁぁぁん!』
「見テテ、面白イナ。飽キナイ。アハハハ!」
だけどナイトさん、見た目はリルドさんにそっくりなのに、一旦打ち解けると陽キャの様に眩しい笑顔で明るい人なんだな。
あの時の殺気は何処へ行ったのやら……。
「あれ? ナイトさん、来た当初より、日本語覚えました?」
「ハイ! エト……、エット……」
しかも、ミオの質問に、何故か眼帯で隠してない方の翡翠色の瞳が、右往左往と動いて視線が泳いでいる。
「はーーん。もしかして、影で『姉御』に教えて貰ってたんですね。手とり足とり……」
「なるほど。だからあの時、『美々子』と……」
「Nici vorbă!? Nu se poate!」
すると、彼は翻訳を忘れてまた、聞き慣れない言葉を発していたのだ。
何語だろうか。後でミオに聞いてみよっかな。彼、いつの間にか『ムルツメスク!』て言語を慣れた感じで言ってたから。
「あーりゃりゃ。いきなりストレートに言ったらダメですよ。そこの緑髪と銀髪のポンコツコンビ」
『んなっ!?』
「えっと……。ミオ」
「あー。龍樹、知らなかったっけ?」
「なな、何がぁ!?」
ふと、ミオから雑に振られたので驚きつつも、僕はこう答えることにした。
「もしかして……、ナイトさんの想い人は、めめ、『メンコ』さんって事?」
「なーんだ。分かってたんだー」
「Nu mai spune nimic!」
「……」
ナイトさんはと言うと、顔を真っ赤にしながらもミオがこれ以上暴露されないように、母国語を言いながら必死に彼の口を塞ごうとしている。
それにしても、何なんだこのカヲスな状況は。日本語やら謎の言語がやたらめったら頭上に飛び交っているんだが。
ツブヤキの従業員達は、裏ではいつもこんな感じなのだろうか。
僕には想像もつかない程の、混沌とした空間でもあるし、何ともグローバルな雰囲気だ。
「あの……、みなさん……、じゃあ僕はこの辺で……」
なので、申し訳なく思った僕は、恐る恐る、病室を後にしようとした。
「……待テ」
「ふぁぁあ!?」
しかし、再度ナイトさんに止められたが、今度は先程の殺気が無い。が、先程の笑ってた顔とは一変して、少しだけ真顔になっている。
「キニナル事、アル」
「ええっと、何でしょうか?」
すると、彼は自身の緑色の薄手のパーカーのポケットから、ポケトークを取り出すと、こう言い始めたのだ。
【Resentimentul a dispărut la un moment dat de pe blogul acela. Ai făcut ceva?】
(あのブログからいつの間にか恨みの感情が消えていた。何かしたか?)




