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マリアナに堕ちたのは、親友ではなく、私でした。  作者: Ruria
真夏のナイトメア編(異世界転移)
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sideタツキ 真夏のナイトメア~設定が穴だらけのバグった創作世界で、僕はリライトする~(転)

「よっ! 龍樹。助けに来たよ!」

「カンナっ!」


 そして彼女は僕を見るなり、笑顔でこちらに向かって歩いてきたのだ。

 しかし、服装は武闘家のせいか、軽装スタイルの赤い防具を身につけている。

 そのせいか、黒いレザーブーツと右肩には茶色いレザーアーマーみたいな軽い装飾が施されている。

 と、かなりかっこいいスタイルで露出が多めになって、目のやり場に困ってしまう。


 おまけに彼女はスタイルが良いからな。そのせいか、学校でも男女共に、憧れや好意の眼差しを向けられることが多いんだ。


「ってか、なーんでわたしに会って早々、ジロジロと見てる訳!?」

「……えっ!?」

「こんの、むっつりスケベ!」

「はぁぁあ!? むっつりスケベじゃねぇって!」

「きゃはははっ!」


 まぁこの通り、相変わらず辛辣だ。カンナらしい。

 隣ではリンネが僕らの会話を聞いて笑っている。


「ところで、アンタの隣にいる金髪美女は誰?」

「あんのさ……。少しは言い方を……」

「あの。お久しぶりです。『椎羅』さん」

「えーっ!? もも、もしかして……」

「八雲、凛音です。この度は、この世界に連れ込んでしまって、ごめんなさい!」

「あ。えーっと、わたしは単純に熊野君と共に『脱出の糸口』を探していただけなんだよね」

「は? じゃあ、今まで何処に行ってたんだよ」

「そりゃぁ、途中までは、熊野君達と一緒にいたんだけど……。何故かわたし、勇者と意見が合わなくて、揉めたんだよねー」

「えーっ……」

「なーんか傲慢だし、人を駒みたいにこき使うのがめっちゃ頭に来てさ! それで衝突していたら、追放されちゃって!」

「は?」


 まさかカンナ、勇者パーティーにいたけど追放されたって?

 そういえば、ブログにはそんな事、一切書き込まれてなかったよな。


 仲間募集とは書いてあったが……。


「なぁ。リンネ」

「うん。これ、明らかに『イトウ』が弄って書き足したのかも」

「やっぱな。めんどくせぇAIだなぁ。はぁー……」

「ちょっと龍樹。ここではあんまり『勇者』の悪口、言わないほうがいいよ」

「ん? なぁ、カンナ」

「どした?」


 ふと、彼女が意味深な事を言ってきたので、こう聞き返してみる。


「なんで、勇者がAIで『イトウ』て知っているんだ?」

「あー。それに関しては、何故か向こうから言ってきたんだよ」

「は? 訳わかんないね。そこ詳しく」

「はぁー。こうなると歯止めが全く効かなくなるんだから。昔から変わらないよね。龍樹は」

「悪かったな」

「はははっ! 何だか椎羅さんの前だと、かなりフランクになるんだね! 越智君は」

「リンネにもバレるのはちょっと恥ずかしいって。はぁぁ……」


 普段見せてない反面、リンネにもバレた僕は戸惑いながらも、相槌を打っていた。


「だけど、このゾンビ化した村人は何なの!? めっちゃ不気味なんだけど!」

「単純にいえば、『イトウ』がバグらせたんだ。この世界に、永遠と閉じ込める為に」

「そっかぁ。わたしらはテスト期間だから、いい加減帰りたいのにね」

「同じく。良かった。考えが変わってなくて、少し安心した」

「うん。お兄ちゃんにも心配かけちゃっているからね。早く会いたい。ていうのが本音かな」

「そっか……」


 しかし、リンネは悲しそうな顔で僕らの話を聞いていた。

 そんな訳で、僕らのパーティは、意見が一致したカンナが仲間になり、三人でミオを探すことにした。


 確か、カンナの話によれば、ミオは今も勇者パーティーにいるんだよね。と言っても、その勇者はこの世界を『可笑しくした張本人』だが。


 改めて次の一手を確認するためにブログを開くことにした。

 もう日付が消えているから、ブログではなく、単純に小説として話が進んでいるが、これで大丈夫なのだろうか。少し心配ではあるが。



―――――――――――――――――――――――


 ■■■■■■■■■■


 考えたくないことだらけの、残酷な世界だ。

 折角武闘家を仲間にしたのに正義感振りかざしやがって、とっても厄介だ。


 ストレスの塊で見たくないから追放してやった。追放。追放。追放。魔法使いさえいれば、あとは何もいらない。


 永遠に戻らなくて良くなった。

 永遠に夏休みのままだ。

 永遠に夏休み。

 永遠に夏休み。

 永遠に、勇者ごっこをシヨウ。

 永遠に……。凛音の為だ。彼女は現実でも、夏休みから抜け出せていない。そんな彼女のために、ぼくはこの世界を用意したのに。何で彼女は拒む? 喜んでくれない?


 でもいい。魔法使いさえいれば、この世界は成り立つんだ。永遠。永遠。


 しかも、全属性が使える天才肌だ。

 驚いちゃったよ!

 それと、彼と話してみると、ぼくと同じ■■■■■■■■■■。

 彼もまた『■■に疲れちゃったから、少し■■■■と思って』てね。


 やっぱり■■にいたら、ロクな事ないよね。いらない人間関係とか考え事とか、付きまとってきてさ、無駄に疲れちゃうから、分かるよ。


 わかるよ。その気持ち。

 ぼくも変な言いがかりを付けられて、理不尽に虐められて、とてもとても苦しかったから。


 だから、ぼくは『■■』にさよならをした。

 家も親が変な宗教に入っちゃって、ぼくのことを放ったらかしにした罰でもあるんだ。


 永遠に苦しめばいい。永遠に。永遠に。

 あ。それとさ、ぼくと永遠にずっと、楽しもうよ。永遠に■■■やら■■■を狩って素材を売ったりさ。共に異世界ライフを楽しもう!


 そういえば、彼はこの世界観、いいね! て褒めてくれたんだ。嬉しいな。嬉しいな。


 そうだ。今度はこの世界を確実な永遠にするために、殺さなきゃ。創作者は『二人も要らない』からさ。殺さなきゃ。殺さなきゃ。殺さなきゃ……。


――真夏の夜の大冒険、只今進行中……。


―――――――――――――――――――――――



「とうとう、本性を出しやがったな。クソ野郎」


 思わず密かに握り拳を作って本音が漏れたが、イトウは最初から『ミオ』が狙いだったんだ。

 魔法使いさえいればいい。つまり、この役職さえあれば『異世界系の物語』は全て型がつくから。という事だ。


 魔法使いだけいればいい。じゃないんだよ。

 全部の役職が合わさって初めて『物語』が出来上がるんだよ。それぞれの役職には、ドラマがあってさ。それらを楽しむのが物語じゃないのか?


「珍しっ。龍樹が口悪くなって、リルドさんみたいになってるぅ!」

「はぁあ!? やめろってカンナ! そうやって茶化すから。もぅ……」

「リルド、さん?」

「あー。八雲さんは知らないかぁ。実はものすっごく頼りになる大人の人達がいてね!」

「……」

「その人らはすっごいかっこいい人達で、わたしの憧れでもあるんだ! 特にメンコさんっていう大人の女性!  一番の憧れなんだっ!」

「憧れ……」

「そーそー! おまけにモデルみたいでスタイル良くって綺麗でさぁ! 外国人の彼氏もいてめっちゃ羨ましいんよ!」

「外国人の彼氏、ですか。凄いですねっ!」

「でしょぉ! ほんっと、わたしもああいうかっこいい大人になりたいなぁ!」


 カンナが意気揚々と話している所を、彼女は静かに聞いていたが、もし、彼女が生きている時に、サーフェスの存在を知って、依頼を出していたら……。


 彼女はまだ、僕らと共に生きていられたのだろうか。

 後悔の念が今更ながら押し寄せてくるが、今やるべき事を考えないと。


「大丈夫だ。リンネ」

「……え?」

「みんなで物語、『完結』させよう」

「は? どういうこと? 『完結』って、何?」

「あ。リンネさ、彼女に今の状況、説明しても平気?」

「あ。う、うん! 大丈夫!」

「えっとな。カンナ。実は……」


 しかし、未だに状況が飲み込めてなかった彼女は不思議そうな顔をしていたので、今まで起きたことを事細かく言うことにした。


 この世界を脱出するには、『リンネの願い』を叶える事と、『AI彼氏であるイトウを止める』事だと言うこと。しかも現実世界では、サーフェスの皆さんが、元凶を調べている所。という事も話しておいた。


「そんなことになっていたんだ。益々早く熊野君を見つけ出して帰らなきゃだね」

「それもそうだけど、リンネの願いも叶えないと、だ」

「えっ……」

「そういえば龍樹、ちゃんと聞いたの? 八雲さんの願い」

「あっ……。そういえば……」

「なーんで肝心な事を聞き忘れている訳!? 変なところで無駄に記憶力いい癖に、そういう所は抜けてるんだから!」

「あー! もうホントごめんって! んで、リンネの願いって何?」

「あのさ! 聞き方! もう少しオブラートに包んで言いなって! 龍樹の言い方、ストレート過ぎるからっ!」

「あぁあ! うっさいなもう! 気になるから聞いただけなのにっ!」

「あはははっ! やっぱり2人のやり取り、面白いねっ!」

『ええっ!?』


 すると、今まで相槌しか、打ってこなかった彼女が、突然朗らかに笑うと、こう語ってきたのだ。


「わたしは学校の憧れであった、三人組の人たちと一緒に、色んな事をしたかったんです。あの時は確か、鰒川君もいたんだよね。越智君、椎羅さん、鰒川君って……」

『……』

「実はね。椎羅さん。わたしは貴女が一番の憧れでした」

「……」

「だから、貴女みたいに強くなりたくて、色々やってみたけど、全部空回りで……」

「……もしかして、わたしの髪型や持ち物まで真似ていたのは……」

「うん。わたしなりにやってみたけど、『真似してる』て周りから言われて、敵意を向けられちゃったんだ!」

「それで……」


 彼女はコクリと頷きながらも、ボロボロと涙を零し、静かに語り続けていた。


「それから、とっても辛かった。10人以上に囲まれて、嫌なことをされたし、殴られ蹴られは勿論。無理矢理パパ活紛いなこともされたしで。しかもその中心は、いつも鰒川君だった。恐ろしかった。怖かった……」

「あの野郎……」


 思わず言葉が荒くなってしまったが、こうなるのも当然だ。

 副会長でありながらも、その立場を悪用していたからな。いじめと可愛く言っても、やってる事は犯罪そのものだ。


 その理由が僕に向けた『好意』だとしても、未だに許すわけが無い。


 今思うが、シイラさんの言ったことは、かなり正しかったのかもしれない。

 接近禁止令を出されたことによって、二度と会わずに済んだ訳だ。

 冷酷かもしれないけど、今思うと、お互いの為。だったのかもしれない。それと同時に、僕には、守れなかった助けられなかったという、後悔の念が付き纏っている。


 だけどあの時、それらと向き合う為の時間を作ってくれた。

 もしかしたら、このことまで長い目で考えていたとなったら、益々恐ろしいな。シイラさんは。


「だけど、熊野君が転入してから、彼は図書室までやって来て、色々と話しかけてくれたんです」

「……」

「大丈夫? とか、飲み物まで買ってきてくれた事もありました。とても優しくて……」

「それで、好きになっちゃったんだ!」


 笑顔で訊ねるカンナの質問に、彼女はコクリと静かに頷くと、再び語り始めたのだ。


「ぅん。でも、好きって思いは、結局、伝えられませんでした」

「え!? どうして!?」

「だって……。分かっちゃったんです」

「……」

「熊野君の好意は……、わたしじゃなかった。て……」

「はぁぁ……。それで龍樹を恨んじゃった訳?」

「その通りです。かと言って腐女子の皆さんみたいに応援しよう。とか、心から思えなくって……」

「まぁ、そういうのは全部が全部、多様性重視では無いと思うし、人それぞれだもんね」

「椎羅さん……」

「……」


 二人の話が盛り上がっている中、終始、僕は黙っていたけど、そういえば、思い出した。図書室でこんな話をしていた事が……。








 僕は何冊か読もうかと思い、本を適当に選んで読んでいた。


 まぁ、僕の場合、軽く読んだだけで、その内容をほぼ、把握出来てしまうんだ。本だと何行目の何ページに、台詞が書き込まれているとか。

 おまけに時計の時間も分数単位で覚えていたり、物の値段さえも、事細かに覚えていられる。俗に言う『瞬間記憶能力(カメラアイ)』というらしい。


 傍から見たら、化け物だと思われるだろうな。教科書を軽く読んでも、内容はコピペするように、脳の中に丸暗記。テストでは常に満点で、学年一位という、僕にとっては無駄な称号付きだ。


 そのせいで周囲は『特別視』されたり、真生みたいに『悪魔的崇拝』してくる奴まで出てくるぐらいだから、心は休まらないね。


 あの時まともに腹割って会話が出来たのは、カンナしか居なかった気がする。


 そんな僕の唯一の逃げ場所が、図書室だった。

 ここでは、静かにする事が条件だからね。

 誰も話しかけてこない。そんな空間がとても心地良くて、放課後、時間があればよく通っていたなぁ。


 2年の夏頃。初めて彼に出会ったのだが、彼は窓際のテーブルと椅子に座り、ファンタジー系の考察本片手に黙読していたのだ。


 その姿が、妙に綺麗だった。

 窓から差し込む夕日の光に照らされた彼のストレートヘアの髪は昏く、彫刻のような中性的な横顔が、とても美しかったのを思い出す。


 しかも、男子高校生の制服を着ていたから、内心驚いた。女の子かと思ってしまったからね。今思うと懐かしい。


「……あ」

「……」


 思わず声が漏れてしまったが、何て言えばいいか分からない程に戸惑ってしまった僕は、思わず距離を置いてしまった。


「……何か、用?」


 彼は突然、焦げ茶色の瞳でこちらを見ながら言ってきたのだ。


「あ。いや……」

「ボクの前の席、空いてるから、一緒に読む?」

「え。良いのか?」

「別に。邪魔しなければ、いても良いけど」

「あ。そう……」


 だけど、可愛らしい顔付きとは裏腹に、何処かあっさりとした感じはしたんだよね。今ではカンナと同様に、腹割って喋れる相手になったけど。

 

 おまけに僕のことを、ストレートに『ポンコツ』と言ってくるからね。

 今までこんな風に真正面から、毒舌を吐いてくる人間は、会ったことも無かったから、余計に『特別』と感じてしまったのかもしれない。


 前に生徒会室にミオがやってきた時もそうだ。


「そういえばさ、めちゃくちゃ記憶力が良いって噂で聞いたんだけど……」

「ん? 急にどうした?」


 突然、ドンッ。と大量のファンタジー系の小説を置いてきて、僕にこう言ってきたんだよね。


「実はある台詞が書かれた言葉が、この本の何処かにあるんだけど、何ページか分かんなくなっちゃってさ!」

「……で?」

「お願いっ! 龍樹! 見つけたらでいいから、どこの本の何ページの何行に書いてあった。ていうの、ライムでいいからボクに報告して欲しいんだ!」

「は、はぁあ!?」


 僕の事をコピー機か何かと思っているのか?

 そんな訳で人使いが荒かった記憶があるんだ。懐かしいなぁ。


 でも、ちゃんとやったら、お礼に何故か僕の好きなカフェオレを3種類まとめて買ってきては「はい。これ」て感じで渡してくるんだ。


「あ、ありが、とう……」

「え? 至って普通の事をしただけだから、別に気にしなくていいよ」

「いや。こういう事されたの、初めてだからちょっと……」

「……ん? 熱あんの? ちゃんと帰って休んだ方がいいよ。じゃ」


 と言って、素っ気ない態度でよく生徒会室を後にしていたなぁ。


 でも、出入りしてた所を真生にバレてしまったせいか、今度はミオを敵視し始めたんだ。


 それから、僕は後悔の連続ばかりで、ずっと気を張り詰めていたな。

 だけど、今日でそれらも、終わりにしよう。





「おーーーい」

「……はっ!」

「さっきから大丈夫? ずっとぼーーっとしていたけど」

「あー。まぁ。うん……」


 なんとも歯切れが悪い会話だ。

 思わず目を逸らしてしまったが、イトウの野郎、何処にいるんだ。


 改めてブログを見直してみると、『永遠』ばかりの言葉がつらつらと並べられていたのだ。文字を見るだけで吐き気がしてくるな。これ。


「ねぇ。リンネ」

「はい」


 そこで僕は、彼女にこう聞いてみる事にする。


「改めて聞くけど、君の願いは何?」

「はい。わたしの願いは……、ふぅ」


 彼女は右手を胸に当て、ふぅ。と深呼吸をすると、こう答えてくれたのだ。


「越智君と椎羅さん、熊野君と一緒に思い出を作りたい事と、イトウ君を止める事、あとはこの物語を『完結』することです」

「わかった。全部叶えようか」

「あ……。嬉しい!」


 明るい笑顔で答えると、僕は早速、行動に移す事にした。


 まずはミオを見つけないと。

 なので、あの忌々しいブログの内容を彼女に見せることにした。


「これ、どう書き換えたい?」

「ええっと……、そうだ!」


 すると、彼女は画面の文を指さしては、こう言ってきたのだ。


「永遠に。があまりにも多いから、点々で略してしまうのはどうでしょうか?」

「あー! それ良いかも!」

「あとは、イトウを孤立させる事って可能でしょうか?」

「うんうん! リンネ、ないすっ! ちょっとあの傲慢野郎にもお灸を添えたかったから良かった! んで、どうやる訳? 龍樹」

「あんのさぁ……」


 彼女達に急かされつつ、スマホの画面で編集しようとしていたが、何だ、この両手に花のハーレム状態のパーティは。

 僕以外女子だから余計かもしれないが、早くミオ、こっちに来いって。

 ん? 待てよ? 普通の男子なら、幸薄美女と美人で強気な異性の幼馴染と行動するなんて、大喜びの展開のはずだよな?


 何で僕は無意識にミオを?

 単純に毒づかれたいとか?

 いや。まさかな。


「おーーーーい」

「うわぁっ!?」

「まーーた、ぼーっとして。頭平気?」


 ふと、カンナが呆れ気味に僕の頭を小突いてきたのだ。


「まぁ。一応……」

「あのさぁ、あんまりスキルを連発すると、頭やられるみたいよ」

「えっ!? そうなの?」


 しかし、まさかの情報に驚いた僕は、黒いスマホを持つ手が震えていた。

 実を言うと、先程から停止したり、回転が早くなったりしている事があるんだ。

 思考回路を地球儀で例えるなら、突然、高速で回ったり、突然停止して動かなくなったりを繰り返している状態だ。


「でも椎羅さん」

「え? どうしたの? 八雲さん」


 それを見たのか、彼女はカンナの言葉に割り込むかのように、平然と言ってきたのだ。


「彼、MPが無限なんです」

「それがどうしたの?」

「つまり、彼の場合はスキルを連発しても『MP切れ』にはなりません」

「それ、嘘だね」

「何でですか!?」

「じゃあ、なんでさっきからアイツはぼーーっとしてる訳?」

「それは……」

「MP切れの他に何か『代償』があるんじゃないの? 世界を書き換えるなんて、あまりにもチートすぎるから!」

「確かにそうですが……」


 だけど、カンナは彼女を睨むかのように言い返してきたので、お互い火花が散る展開になっしまったのだ。


 おいおい。女同士の喧嘩は勘弁してくれ。


「僕は大丈夫。ちょっと確認するから、なるべく喧嘩しないでくれ」

「あ。ごめん……」

「ごめんなさい!」

「うん。ステータス、オープン」


 なので、彼女らを制止しながらも、再度、片手を開いてステータスを確認することにした。


――――――――――――――――――――――――――


 名前 タツキ


 MP ∞

 HP 1000/2500


 スキル リライト

 代償 一度スキルを使う事に、HPを250消費する


 役職  ■■■


――――――――――――――――――――――――――


「何だこれ!?」


 そこには最初に無かったはずのHPとスキル、役職と代償までも書かれていたのだ。

 しかも、役職は何故かバグで伏せられていたが。

 もしかして、リンネを『NPCである女神』から『僧侶』にした際、この世界に『回復』という概念が生まれたからか。

 それだったら僕、随分と世界を改変してしまった気がするが……。


「どうしました?」

「実は……。ふぅ」


 言おうか悩んだせいか、軽く深呼吸をする。

 でも、前みたいに言わないで、倒れて周りに迷惑がかかっても駄目だ。


「僕、スキルを使う事にHPが減るみたいです」

「やっぱり!」

「まぁ。落ち着いて。カンナ。話はまだ終わってない」

「あ。うん。ごめん。わかった。続けて」


 なので、意を決して言うと、彼女は怒りを滲ませていたが、軽く制すと両腕を組んで静かに耳を傾けていた。


「じゃ。続きね。実はここに来るまでの間、スキルは6回程使っているんだ」

「ちょっとそれ、大丈夫なの!?」

「うん。ちなみにブログの内容を書き換える場合は、文内であれば、3回ほど訂正しても、1回でカウントされるみたいなんだ」

「ふーん」

「つまり、ブログ経由であれば、全消ししながら書き込んだ方がコスパは良い。て言うこと」

「じゃ、新規作成する場合は? ブログだったら、既存の書き込みが無くなったら、新たなページを足すよね?」

「あっ……」


 そこまで気が付かなかった僕は思わず唖然としてしまったが、そういえばそうだ。

 1個だけ試してなかったけど、新規作成の場合はどうなんだ?


 もしかしたら……。


「もしさ、そっちの方がリスク低いならやってもいいとは思うけど……」

「いや」

「え!?」


 しかし、ある事を思いついた僕は、リンネに僕のスマホを差し出し、こう言ってみたのだ。


「君が新しく、ページを増やしてよ」

「わ、わたし!?」

「うん。そもそも『君の物語』だからさ。僕がページを増やすのは、流石に気が引けるというか……」

「なるほどね。龍樹が勝手に増やすとHPが減るから、代わりに増やしておけ。て事ね」

「そういう事。それと、回復魔法は使える?」

「えーっと、多分……」

「もし使えるなら、僕にかけてみて」

「えっ!? 良いんですか!?」

「うん。HPが減ったら、回復する。これ、ゲームだと基本だし……」

「あー。そうなんですね。分かりました。では……、レクペレ……」


 彼女は戸惑いながらも、僕に魔法をかけようとした時だった。


「うわっ!」


 突如、風が吹き荒れ、空から四角く大きな穴が現れたのだ。まるでバグみたいな……。


「急に何!? あそこだけ時空が歪んでるんだけど!?」

「ひゃぁあ! 一体何があったんです!?」

「分からないけど、何か嫌な予感がする。リンネ」

「はいっ!」

「僕から離れないで。カンナも!」

「あ……、はい!」

「わわ、分かったよ!」


 なので、僕は咄嗟に彼女らを庇うように前へ出ると、歪んだ穴に向かって睨みつけた。


「って……」

「アイツって……」

「いやぁぁあ!」


 しかし、穴から降臨するかの様に現れた人を見た瞬間、僕らは言葉を失ってしまった。リンネはと言うと、顔面蒼白で声を震わせながら、僕の背中にしがみつき、泣き叫んでいる。


 しかも、そいつは勇者の姿をしていたが、何故か、とても禍々しい闇のオーラを放っていた。


「お前がまさか……」

『いたいたぁ~。リンネ。迎えに来たよ!』


 恐らく、アイツが『イトウ』だろう。見た目は真生とミオをごちゃ混ぜにした様な中性的な顔立ちをしているが、言い方が何とも上から目線で、聞いててかなりムカつく奴だ。


 そして、そいつは不敵な笑みをこちらに向けながら、こう言い放ったのだ。



『現実で裏切られて憎い奴との、勇者ごっこは、楽しかったかぃ?』


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