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 Eは自身の持つ呪いの力を一時的に強め、ハルトを仮死状態にする。それから少しの間様子見をして問題ないことを確認すると、彼の体から抜け出して実体化した。


「奇妙なものですね」

「不満でもあるのか? まああんたの感想なんかどうでもいい。浪費していい時間なんて1秒たりともないんでな」


 実体化する様子を見ていたミオの感想に軽く返事を返したEは、実体化直後の不安定さ故に端から崩れ落ちるのも気にせずコンソールと向き合う。


「実態がない体は、こういうところが便利だな」


 人の形という枠にとらわれない彼の体は、指先が5本以上用意できる。Eはそんな特性を活かし、人型にはできない速度で情報を漁り始める。そんなタイミングで、彼らが下りてきた階段から足音が聞こえた。


「もう来たのか!?」

「その様子だと、パンドラについて知ったみたいだな。って、うおっと」

「この先は通しませんよ!」


 入ってきた男は姿を現すや否やEに対して親しげな口調で語りかけるが、その語りが終わる前にミオが男に攻撃する。それを男は躱しつつ、Eに再び声をかける。


「ずいぶんな歓迎の仕方じゃないか。なあE、こいつは何だ?」

「なんだよラルクか。来るなら一言くれ。焦る」

「知り合いですか?」

「そんなところだ。何考えてるかわからないのは不安だが、これまでの行動を見る限りは、こちらを害するような相手じゃない。矛を収めてくれ」

「……わかりました。私は警戒を続けますので、Eさんは作業に集中してください」

「いわれなくてもそうするよ」


 ミオはひとまずEの言葉に従ったが、その一方でラルクを信用できないのだろう。入り口を警戒しつつ、時折ラルクの様子を確認する。Eはそんなミオの態度も無理はないと考え、その様子を見ても何も言わなかった。

 実際のところ、ラルクはハルトの様子を見てくれる恩人ではあるが、その一方で不明な点も多い。なんの見返りもなしに人助けをする聖人かと問われれば違うと感じる。目的が見えない以上、急に敵に回ることがないとは言えなかった。


「それで、何しに来たんだ?」

「おまえが作業している間、こっちのプレイヤーの容態の確認だな。ヤバくなったら教えるよ。まあ、教えたところでできることなんてないが」

「それなら俺はハルトの容態を安定させるために戻って、おまえが治療法を探した方が効率的だと思うが」

「悪いが今の俺にその端末へのアクセス権限はない。下手なことをすればこの世界での俺の存在が消える」

「そうか。都合のいい話はないってことだな」


 Eはラルクに対して軽く探りを入れたが、これと言った情報は手に入らない。これ以上聞いても怪しまれるだけだと判断したEは会話を止めて作業に集中する。


「……あった。これだ」


 そうして遺産を漁ること数分。Eは漸く目当てのものを手に入れる。

 データを復旧し、研究施設の設備の一部を稼働させると、物音と共に人が入るサイズの筒が天井から降りてくる。


「俺は手がふさがってる。そこの2人のどちらかで構わないが、その筒の中にハルトの体を入れてくれ」

「ここは俺がやるよ。あんたは入口の警戒を続けてくれ」

「あなたに指示される云われはありませんが、仕方ありません」

「しかし、こんなものが神殿に隠された秘密の機材とはね。って、何か出てきたぞ?」

「培養されていた生物兵器だろ。とはいえ、もう腐ってるだろうが」


 筒には取っ手があり、それを掴んで筒を開いたラルクは慌てた様子でEに問いかけるが、Eには想定済みの反応だったのか動揺はしていない。

 筒の中から零れ落ちたのは、爬虫類のような皮を持つ人型に近い外見の何か。ただEの言った通り腐っているらしく、眼球や肉は泥のようになり、腐りにくい皮や骨でなんとか形を保っているような姿をしていた。


「……これ、衛生状態は問題ないんだろうな?」

「汚染はアバターの保護機能でどうにかなるレベルだ。ヒュドラーの毒に比べれば大した問題じゃない」

「割り切ってんな。こいつが起きてたら抗議されるレベルだぞ」

「抗議できるくらい元気になれば俺様の勝ちだ。罵倒だろうがなんだろうが受け止める。いいからその筒に彼を入れろ」

「ってことだから、恨むなら俺じゃなくてEにしてくれよ」


 そういいつつ、ラルクは筒にハルトを押し込め、筒に残っていたトカゲ人間の尻尾を筒から外す。


「よし、入ったな。それじゃあシステムを稼働させる。稼働中はハルトの体内に戻る必要があるから、もしパンドラの連中が来た時には2人に任せることになる。とはいえ、死なれても寝覚めが悪いから、無理そうなら逃げてくれ。研究施設が重要なら稼働中の施設に攻撃することはないだろうし、別にハルトを殺すとも限らないからな」


 Eはラルクの作業が終わったのを確認すると、端末を操作する。すると筒は天井に戻っていく。そんな中、Eはミオとラルクの2人に軽い説明をする。


「そろそろ始まりそうだ」

「一応無事を願ってる。俺のためにも」

「あの、ちゃんと戻ってきてくださいね」

「……ああ。ラルク、おまえの目的も聞けてないし、ミオ、あんたにはデミの話を聞きたいんだ。ここで永遠の別れになるつもりはないさ」


 その言葉を最後に、Eは人型を崩し、天井へと戻っていく筒の中へと入っていく。

 残された2人は、パンドラの警戒をしつつ神殿でハルトの帰還を待つのだった。

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