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 闇の巨人の攻撃から逃げ続けたハルトだが、時間をかけても打開策は見つからない。スタミナか魔力のどちらかが切れると回避が間に合わないという状況で、魔装の魔力消費量の多さに焦りを覚える。


 そんな中、突然闇の巨人の動きが止まる。その様子にハルトは必殺技の予兆かと警戒を高めたが、結局相手は何もせず、それどころかまるで初めから居なかったかのように輪郭が解けて姿が見えなくなる。




「何が起きてるんだ? というか、ここに取り残されても自力の脱出手段はないんだよな……」


『おい、聞こえるか?』


「ようやく通じるようになったか。何があった? そっちは大丈夫か?」


『俺様の心配より自分の心配をしろ。俺様は大丈夫だ』


「それを聞いて一安心だ。……ところで、ここから出る方法は分かるか?」


『その場で横になって目を閉じろ。そしてしばらく何も考えるな。たぶんそれで何とかなる』




 この場所から出る方法をEが知っているのも妙だと思いながら、提案された内容は、失敗しても痛手のないものだったので特に拒否することなく受け入れる。




 その指示通りにしていたが、特に何か変化は感じない。騙されたり適当なことを言われたのだろうかと思い目を開くと、いつの間にか現実に戻ってくることができた。


「どういう原理なんだ」

『おまえが囚われていたのは精神世界だ。本来意識することが無い場所だから、ぼんやりしているうちに通常の状態に戻ってこれる。とはいえ、同じ空間に敵が入り込んでいる場合に同じようなことをすれば隙だらけになって負けるだろうが』


 異空間に囚われたと思っていたハルトだが、どうやらあの場所は精神世界だったらしい。とはいえ厳密な話は彼の専門外であり、なんとなくそういうものなんだと思ってその話は切り上げた。


「それで、今はどんな状況だ?」

『俺様が長老を倒した。あの黒い塊が長老で、なんであんな姿になっているかというと、おまえが戦っていた奴が治療しているからだな』

「動けなくなるほどってことは、相当酷く壊れたんだろうな。しかし、これが治療……」


 ハルトは、近くの床に倒れている黒い塊を見て、とても看病されている姿には見えないなという感想を抱く。とはいえ、下手に手出しをすればまた精神世界に引きずり込まれるのだろう。不用意に触れるものではないなと思う。

 しかしそうなると長老から話を聞くことはできない。復活した長老に再度襲われても困るため、この場を離れ未知の山脈に挑むしかないのだろうか。そんなことを考える。


『敵対したが、こいつらも必死なんだ。研究施設の話は聞いただろ。また悲劇が起こると分かっていて止めない奴はいない』

「それは分かってる。俺の行動が、自分が助かりたいという身勝手なものだってことくらい」

『違う。誰だって自分の命は大切だ。ただ死ぬのを待つなんて健全じゃない』

「……それでも他人を巻き込んでおきながらなんの罪悪感も感じないなんてできない」

『相変わらず真面目だな』


 その悲劇が何なのかを知りたいのだが、Eも具体的にどんな被害が出るのかは知らないらしい。

 やはり長老に聞かなければならない。闇の巨人の攻撃に対して耐性を得たわけでも、何か対応策があるわけでもないが、ここで彼らの事情を知らないまま先へ進むのは良くないと感じた。


『俺様は、おまえの意見を支持する。だが、本当にそれでいいんだな? 次は守り切れないかもしれないぞ』

「俺は彼らを傷つけたいわけじゃない。ここで良くない形で別れるのは本意じゃないんだ」

『わかったよ』


 会話の後、ハルトは椅子に腰かけて長老の回復を待つのだった。


~~~~


 時間が経ち、長老の体を覆っていた黒い塊が離れていく。


「んっ、私は……」

「起きたみたいですね」

「……まさかまだここに居るとは。なんです? 止めを刺すつもりなら回復なんて待つ必要なかったでしょう? 再戦をお望みですか?」

「案外好戦的なんですね。俺にそんなつもりはありませんよ。ただ、確認したいことがあっただけです。"悲劇"の具体的な内容について、まだ聞くことができていませんから」


 固い口調に戻り、ハルトは長老にそう告げる。


「あなたの持つ呪いに手痛くやられましたからね。差し違える覚悟ならもう一太刀交えることもできるでしょうが、"彼"には安静にしろと強く言いくるめられています。わかりました。敗者らしくあなたの要求をのみましょう」

『敵対的だな』

「(仕方ない。対話できないよりはマシだと思おう)」


 そうして、ひと悶着あったが、何とか対話できる場が整う。

 これからの事、そしてハルトは鍵の意味をより深く知るために、長老と言葉を交わすのだった。

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