第49話 判決
ジョン・マクノエンへの裁判が始まると知り、マルサラの市民やジョンファミリーの幹部たちが法廷に顔を出していた。
「ジョンは、本当に大丈夫なのですかね?」
裁判を見届けに来たクラレット・シュナウが、横に腰掛けるジョウノ・タピオスへ問いかけた。
「わからない。儂からの嘆願なども聞き入れてくれないからな」
ジョウノは暗い表情を浮かべながら、目の前にいるジョンへと視線を向けた。
「司法官が入られます」
守衛が会場内に聞こえるよう声を張り上げると、奥の扉から司法官たちが入ってきた。
「これより、被告ジョン・ドーへの審議を始めます。これは、シャンドリー行政区法廷の名において、公平な審議を行うものです」
司法官がギャベルを叩き、審議の開始を宣言すると、ジョンの方へ向き直った。
司法官は目の前に置かれた紙の束に目を通し始めると、改めてジョンへ顔を向ける。
「被告は、先の『桟橋襲撃』および『中央通り騒動』における指示役として、他の部下と共に犯行を実施し、マルサラ住民へ過度な不安と恐怖を与えた。これは、マザー公国への敵対行為とも言えます」
司法官は、置かれていた証言書へ目を通した後、ジョンの罪状を列挙していった。
その内容に、法廷へ詰めかけたマルサラ市民たちは動揺を隠せなかった。
ジョンはジョウノを守った男として、市内ではそれなりに名の知れた存在となっていたからである。
「……被告は、上記の罪状について反論はありますか?」
「いえ。特にございません」
反論をしなかったジョンの態度に、傍聴席へ来ていたクラレットたちは不安げな表情を浮かべた。
「うそでしょ……ジョン」
ジョンに反論の意思がないことを確認した司法官は、少し考え込んだ後、判決を下そうとした。
「では、判決を申し上げる」
「待ってください!」
不意にジョンが声を上げる。
「何でしょうか?」
「裁きを下される前に、私からマルサラ市民への謝罪と、今後の我らの行動について宣言をさせてもらってもよろしいでしょうか?」
「なぜ、そのようなことを?」
司法官が困惑するのをよそに、ジョンは傍聴席へ向き直った。
「……まぁ、構わないでしょう。被告は、傍聴席にいる者たちへ言葉を述べなさい」
「では――親愛なるマルサラ市民の皆様。私、ジョン・ドーは、多くの皆様に不安を与える行為を行いました。今後は、皆様を不安にさせぬよう努めることを誓います」
ジョンがそう言って頭を下げると、傍聴席の一部からは納得したような空気が流れ、司法官の判決を静かに待っていた。
「よろしい。では、判決を言い渡す」
「ドン、ドン」と響くギャベルの音により、法廷は静寂を取り戻した。
「被告ジョン・ドーには、向こう十年間、マルサラおよびシャンドリー行政区への出入りを禁ずる。また、ジョンファミリー幹部についても、五年間のマルサラへの出入りを禁ずる」
「かしこまりました」
ジョンへの判決を聞いた傍聴席には、わずかな安堵の空気が広がっていた。
「これにて閉廷とする。被告およびジョンファミリーは、五日以内にこの町より退去するように」
司法官が判決を下すと、ジョンはゆっくりとその場を後にしていった。
「ジョン……」
クラレットは安堵した表情を浮かべながら、ジョンへと近づいていく。
「騒動を起こして申し訳ない。市長にも厄介ごとをお掛けしました」
後ろから近づいてきたジョウノへ向け、ジョンは頭を下げた。
「それは構わんが、十年間もこの町を含めた地域に来られないとなると、今後の抑えが利かなくなるんじゃないか?」
「三港会との講和は成立しましたし、今後についても考えがありますので」
「今後のこと?」
「ああ。一つ、お願いがあるのですが――」
ジョンの頼みとは、一体何なのか。




