第43話 入港
先月の襲撃から修理を終え、再び使えるようになった桟橋に、三港会の船がゆっくりと入ってきた。
「ようやく入ってきたか。予定より遅れていたのではないか?」
到着した船を見ながら、スベル・マーシュはボソッと呟いた。
船から差し出された渡し板を、船長である魚人がゆっくりと歩いてくる。
「よう兄弟。待たせちまったかな?」
「兄貴。そんなことないじゃないですか!」
スベルが魚人の船長ブラフ・マーシュを出迎えると、後ろにいる船員たちを見つめた。
「しっかり連れてきたようだな」
「ああ。腕の立つ連中を50人ばかり連れて来てやったよ」
「上々。上々」
スベルがそう言って後ろにいる構成員に目配せすると、慌てて彼にパイプを手渡した。
「すまないな」
「いえ」
ブラフが二、三口パイプを吹かす間に、スベルが丸めていた町の地図を用意する。
「先日、うちの要であるヒゼンが亡くなったことで、連中のボスに当たるジョンは、治療所から自身の隠れ家に入ったそうなのだ。今は、部下たちを集めて臨戦態勢になっている」
「なるほどな。そいつらは、この地図のどこに居るんだい?」
「ここだ」
スベルは、赤いインクで丸を付ける。
「中央通りにある2階建ての建物だ」
「大通りじゃないか。かなり目立っちまうぞ」
「町は、この前起こった『市長襲撃事件』のせいで、夜中に外へ出ないようになっている。ちょっと騒動が起こっても問題ないだろうよ」
「よっしゃ。なら仕掛けに行くか」
ブラフはパイプの屑を捨てると、そのまま部下達へ出発の号令を出した。
その頃、ジョン・マクノエンが立て籠もる経営者ルートビッヒの屋敷では、ジョンファミリーの構成員が集められていた。
皆は、ジョンが用意した火器や火炎瓶などを念入りに手入れしており、やる気満々であった。
「頭。三港会の船が入港しました」
港を望遠鏡で監視していたキャッシーが、ジョンに報告する。
「よし。今夜は派手に暴れるとしようじゃないか」
報告を聞いたジョンは、キリッとした顔で立ち上がり、キャッシーへと持っていたG98を投げ渡した。
倍率スコープが取り付けられた特注品であるライフルを手渡されたキャッシーは、慣れない手つきで触ってみる。
「拳銃と同じだ。下手に銃口なんか覗くなよ」
「は……はい」
ぎこちなく扱うキャッシーがライフルをいじっていると、横から手が伸びてくる。
「こいつハ、こう使ウんだ」
そう言って、痛々しく包帯を巻いているガティールが手を伸ばし、軽く扱っていた。
「すまんな。けが人であるはずのお前まで呼び出しちまって」
「気にシナいで下さい。ボスの命令トあらば、駆け付けますヨ」
ガティールがニコッと笑みを浮かべると、横にいるキャッシーと共に外の監視に移った。
下に降りて行ったジョンを、迎え撃つ準備をしていた構成員達と、おどおどしていたルートビッヒが待っていた。
「今回は、場所を借りてしまいすいません。ルートビッヒさん」
「別に構わんが、私たちの安全は保障してくれるんだろうね?」
「もちろんです。おい、ラピドゥス」
呼ばれたラピドゥスは、ジョンの下へ駆け寄った。
「彼女が、ジェントル達をお守りしますよ」
「彼女が! 今回の騒動の張本人じゃないかね」
ルートビッヒが、彼女への不満を指さしながら伝える。
「大丈夫。彼女は優秀なのですから。それに、上にいる者たちも信用できる者たちです」
「そうですか。それならば……」
ジョンは、不安がるルートビッヒを落ち着かせると、そのまま外へ出て行った。
外には、ボブスやソウル・レコード達がジョンを待っていた。
「頭。皆、準備完了しました」
「そうか。では、敵を迎え撃つとしよう」
ジョンがそう言って、自身のフォードへ上がると、皆を見下ろして号令した。
「いいか、お前ら! あいつらは、せっかく市長様が用意してくれた講和の席を台無しにした挙句、因縁をつけて兵隊を向けて来たのだ」
ジョンの説明を聞いた構成員達は、持っている武器を見つめながら、険しい顔を浮かべていた。
「奴らの理不尽を許す訳にはいかない! ジョンファミリーの意地を見せようじゃないか」
「おう!」
下にいるボブスがそう言うと、他の部下たちも勇ましく声を上げた。
「行くぞ! お前ら」
ソウルを先頭に、ジョンファミリーの一団も戦闘配置についていった。




