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第39話 アイアンハート 2

 砂利道から石畳の奇麗な道に代わっていったコーンヒルの通りに、フォードT型がガタガタと車体を揺らしながら走っていった。


 植民地時代に敷設されたこの通りを挟み込むようにレンガ造りの低層住宅や小ぢんまりしたレストランやデリが建ち並んでいた。


 「もうすぐ着くぞ」


 フォードを運転していたマロリー・ドミニクが助手席にいるジョン・マクノエンに向かって告げる。


 ジョンは、握りしめていたコルト・ニューポケットを見つめていた。


 「ビビってるのか。銃ばっかり見て」


 「う、うるせぇ!お前こそ、ハンドル握る手が震えてるぞ」


 「何をいってる。これは、武者震いだ」


 お互いにビビり切っていたカチコミに、どうしようもなく憂鬱な思いであったのであろう。


 二人とも口数が徐々に減っていき、目的地に着くまで冷や汗を襟に溜めていた。


 目的のギャングが経営している地下カジノに着いた二人は、何とか怪しまれないように服などを整えた。


 ジョンは、銃をパンツの中にしまい込んだ。


 「腹くくったか」

     

 「当たり前じゃねぇか」


 二人が顔を向き合って、いつものように儀式を行い、覚悟を決める。


 地下カジノの入り口に立つドアマンが、ボディチェックをしながら店に入れるかどうかを判断していた。


 「ボディーチェックがあるなんて聞いていなかったぞ」


 「そんなの知るかよ!」


 予定外の事に困惑する二人だったが、並んだ以上後には引けない。


 順番が次第に近づいて来るたびに、緊張感が高まっていく。

  

 「次だ。そこの若いの」


 ドアマンが、指でジョンを招く。


 ジョンが彼の前に立つと、ドアマンが軽く体を叩き始める。


 「よし。入っていいぞ」


 安堵してジョンは、中に入っていくもその後ろにいたマロリーは、少しもめてから入っていった。


 中に入れば、時間と金を持て余した小金持ちたちが、テーブルを仕切るボーイ達との真剣勝負をしていたり、奥にあるバーカウンターにて色鮮やかなジュース(お酒)を口に運んでいた。


 ジョンとマロリーは、ビクつきながらギャング達のたまり場を探していた。


 「おい。あれじゃないか?」


 マロリーが指さした先には、唯一の丸机を囲ったC型ソファーに溜まるぼろ服の一団であった。


 「あれだ!」


 ジョンがそう言って、パンツにしまっていたリボルバーを取り出すと一気に近づいていった。


 「……なんだ。お前ら?」


 護衛の男がジョンとマロリーを止めようとする。


 「どけ!」


 ジョンは、コルト・ニューポケットにて、護衛の頭を吹き飛ばした。


 銃声がカジノ中に響き渡り、今まで真剣に駆け引きをしていた金持ちたちが、慌てて外へ走り出していった。


 「何しやがる!てめぇ」


 「うるせぇ!死ね」


 銃声に反応したギャング達は、懐から拳銃を、机に固定してあるショットガンを取り出す。


 しかし、ジョンとマロリーの二人による奇襲は、彼らに反撃をさせる機会を与えずに発砲し続けていた。


 二人が撃った銃弾により、席に着いていたギャング達を次々と仕留めていった。


 「おい!そろそろ行くぞ」


 空になった拳銃を投げ捨てて、ジョンとマロリーが出口へと走り出す。


 だが、撃たれっぱなしであったギャング達が、このまま黙って逃がす訳がなかった。


 奥から武器を取ってきた構成員達が、見境なく弾丸をばらまいてくる。


 「うぐっ!」


 ばらまかれた弾丸の一発がマロリーの肩を撃ち抜く。


 「大丈夫か!」


 ジョンは、直ぐにマロリーの傍に駆け寄ると、彼を立ち上がらせて出口へ走っていく。


 ジョンとマロリーが、車に飛び乗ると、キーを力いっぱい回す。


 ギュルルルルとセルが回る音が響いているものの、エンジンが掛からずに空回りしていた。


 「くそ!早く掛かれよ」


 ジョンがそう言ってエンジンと格闘していると、外に飛び出してきたギャングの構成員が持っていた拳銃を向ける。


 「ジョン!伏せろ」


 マロリーの大声と同時に放たれた拳銃の弾が、フロントガラスを突き破りジョンの胸へと突っ込んでいった。


 「ぐっ――!」


 フロントガラスが割れてしまったフォードは、ようやくブルルとエンジンを唸らせて排ガスを噴きながら走り出した。


 「おい!ジョン」


 「黙ってろ――!」


 ジョンは、アクセルを吹かしながら、街道を走り抜けて行くも徐々に意識が遠のいていった。


 「くそ……意識が……」


 「おい!……しっかりしろ」


 マロリーの声が遠のいていき、徐々に意識がなくなってきたジョンは、そのまま瞼を閉じてしまった。


 (そうだ。俺は、ここで意識を失っちまって、マロリーが代わりに運転してくれたんだったっけ)


 「……ン……帰っ……ジョン!」


 はっきりとしないながらも女性の声にジョンは、ゆっくりと瞼を開けた。


 「早く起きなさいよ!ジョン」


 ジョンは、ゆっくりと意識を戻すと、クラレット・シュナウが眼前にて涙目になっているのを見つめていた。


 「……大声で呼ぶなよ。恥ずかしいじゃないか」


 「ジョン!」


 ジョンは、ゆっくりと起き上がると、クラレットの方を見て少し微笑んだ。


 「ただいま」


 ジョンに復活したジョンファミリーの一同が安堵した顔を浮かべていた。


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