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第35話 プレイボール 2

 講和会談が終わったジョン・マクノエンは、三港会サイガンフのヒゼンとマルサラ市長ジョウノ・タピオスと共に、下にある屋根付きの特別席へと入ってきた。


 「それでは、これよりマルサラ・ダイヤモンドLG(リーグ)の第一試合を始めます」


 ジョン達が座る席の上に設けられた実況席より、キャッシーが共鳴させる練磨石を埋め込んだマイクを使って開始の挨拶を始める。


 会場の周囲には、キャッシーの声が聞こえるように設置された拡声器があり、会場の空気をさらに盛り上げていた。


 「一塁より『南の湖チーム』。三塁は『西の小屋チーム』です!攻撃側は一塁側からとなりまーす」


 キャッシーの実況に促されるように、三塁側ベンチから選手たちが飛び出していった。


 「それでは、第一試合を開始しまーす!プレイボール!」


 試合開始の声に合わせて、観客たちが歓声を上げる。


 「それでは『南の湖チーム』より、一番、ピッチャーのキャリフォート!」


 キャッシーの紹介で一塁側ベンチから出てきた魚人は、太陽の光に鱗をてらしながら、バッターボックスへと歩いていった。


 「へっ!ここ一月の成果を見せてやるぜ」


 キャリフォートは、意気込みと共にバットを構える。


 慣れないバッティングフォームは、ジョンにとって新鮮な風景に見えていた。


 相手側のピッチャーとして出てきたのは、鼠人グナーヴであるシャリウット。チトチトとマウンドに歩いてきた。


 「お。さっそく有力選手の登場だ」


 「そうなのか?どっちだね」


 「あちらにいる、ネズミ男ですよ」


 ジョンがジョウノ達にシャリウットのことを紹介したタイミングで、彼は思いきり投げ込んだ。


 彼の投球は、踏み込んで振るったキャリフォートのバットをかすめ、キャッチャーミットへ飛び込んでいった。


 「ストライーク!」


 審判がこぶしを振るって判定を下すと、マルサラの市民たちが大きな声で歓声を上げた。


 それは、特等席に座る者たちも同様であった。


 ジョウノ市長は、隣に置かれているラガービールと、つまみに用意された干し肉を口に運びながら、楽しそうに見ていた。

 

 先発の魚人が三振に打ち取られていった際には、盃を掲げて祝った。


 「何とも熱気のある娯楽ですな。私も、これほど楽しいものだとは思いませんでしたぞ」


 「いいものでしょう。試合が進んでいくと、もっと熱が入ってきますよ」


 「ほう。それは楽しみですな」


 ジョウノが楽しんでいるのを見たジョンは、後ろに控えていたクラレット・シュナウを指で招くと、何かを耳打ちした。


 「……分かったわ。持ってくる」


 クラレットはそのまま出て行き、気になったのかヒゼンが視線を向ける。


 「彼女は、どちらに向かうんですか?」


 「ああ。お二人にも試合を楽しんでもらおうと思いましてな」


 「何をしてくれるのか、楽しみですな」


 しばらくすると、クラレットがジョンの要望したものを持って帰ってきた。


 「持って来たわよ」


 「ありがとう。お二人にお配りして」


 彼女が持って来たのは、下にある売店などで販売していたリーグ表とオッズ表であった。


 「これは?今後の試合表と数字が記されていますな」


 「オッズ表ですか」


 「オッズ表?」

 

 「賭け事をする時の配当金額ですよ。うちでもボートレースをする際に付けていますから、分かります」


 「なるほど。これを手渡してくれたということは?」

 

 「我らも、このゲームの行方を見て賭けようということですな」


 二人がジョンの方を見ると、悪い笑みを浮かべている彼が、こくりと頷いた。


 「見に来ているマルサラの皆様には100スッドまでにしておりますが、こちらのお二人はメインのお客様です。もっといい賭けをしましょうよ」


 「と言いますと」


 ジョンが取り出したのは、ラテラルにて作られていた、エルフたちの木工彫刻が施された額縁であった。


 「先王時代に『メリューラの木』を加工して作られた額縁であります。私も聞いた価値しか知りませんが、こちらのクラレットが言うには、500レーニョロにもなるものだそうです」


 「なるほど。ジョンさんは、それを掛けに出すのか」


 「賞品としたいところですが、いかんせん我らは、あまり懐が豊かでないので」


 ジョンがそう言うと、ジョウノがゲラゲラと笑いながら膝を叩く。


 「おもしろい。儂は、同額の現金を用意しよう」


 ジョウノは秘書に金を用意するよう指示した。


 「ジョウノ市長とジョンさんが出しているのに、私がイモを引くわけにはいきませんからね。スベル」


 「え?」


 「お前さんは、かなり多くの密輸品を流していたんだろ。それを掛けに出そうじゃないか」


 「そんな!」


 「何か文句があるのかな?」


 「……いいえ」


 「決まりだな」


 納得のいかないスベル・マーシュは、ヒゼンを睨みつけていた。


 「でしたら、賭ける先を決めましょう」


 こうして三人は、自身の賭ける先のチームを決めて、後ろにいるクラレットへと手渡した。


 ≪マルサラ・ダイヤモンドLGでの賭け先≫


     チーム名     賭け品 


 ジョン 『西の小屋チーム』 メリューラの木を加工した額縁

 

 ヒゼン 『南の湖チーム』  スベルが持つ密輸品


 ジョウノ 『風車チーム』  500レーニョロ


 未投票  『中央畑チーム』

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