第33話 プレイボール 1
ジョウノ・タピオスの計らいによって、マルサラ南部にある旧闘技場を突貫整備して作られた会場には、彼の宣伝もあって多くの人々が来場していた。
「さすがジョウノ市長だ。人集めはお手の物ですな」
会場へと続く人の列を見上げながら、ジョン・マクノエンが率直な感想を述べる。
「何を言っている。あんたが撒いたビラのおかげだろうが」
ジョウノも笑みを隠せない様子で指摘した。
ジョンが撒いたチラシには、「来場客にラギアエール一杯無料」と書かれている。
「まあ、来てくれるきっかけ作りには、そういうのも必要ですからね。それに――一杯で済むわけないじゃないですか」
ジョンは不敵な笑みを浮かべてジョウノを見る。
「では、会場へ行きましょうか」
「ええ」
二人が会場へ足を運ぶと、先に入っていたクラレット・シュナウら、ジョンの部下たちが待っていた。
「お待ちしておりました。さあ、こちらへ」
「おお、クラレット夫人。出向に感謝するぞ」
ジョウノは出迎えに応じて握手を交わすと、そのまま上階にある会談用の席へ向かった。
会談スペースに着くと、先に来ていたボブスと、三港会の要であるビゼンが席についていた。
「初めまして。私は三港会の要、ビゼンと申します」
「初めまして。ジョン・マクノエンと申します」
「今回は、私と港代スベル・マーシュが代理として参りました」
二人は穏やかに握手を交わす。その融和的な空気に、ジョウノも背後で満面の笑みを浮かべていた。
「本日の余興は、ジョンさんが用意されたとか。どのようなものなのでしょう?」
「まあ、ゆっくりご覧ください。かなり熱狂できると思いますよ」
「ほう」
あまり感情を表に出さない蛇人間のビゼンは、丸い蛇の目を瞬かせながらジョンを見つめた。
「ジョンさん、そろそろ」
後ろに控えていたソウル・レコードが耳打ちする。
「すみません、ビゼンさん。少し選手たちを激励してきます」
「そうですか。では、こちらでお待ちしております」
「失礼します」
ジョンはそう言って下階へ降りていった。
一回戦を戦うメンバーは、闘技場の控室で出場の時を待っていた。
「おう! みんな準備はできているか?」
採用試験を前に緊張で固まっている者たちの中で、数人は余裕そうに道具の手入れをしている。
「頭目! 俺たちは採用されると信じて鍛えてきたんです。今さら尻込みはしません!」
威勢のいい森の民が真っ先に応じる。
「お調子者が。お前みたいなノロマを頭目が受け入れるわけないだろ」
座っているゴブリンがぼそりと呟く。
「何を! 青瓜が偉そうに!」
「やるか、カタツムリ!」
「やめねぇか! 頭目の前で恥ずかしい真似を――」
二人の言い争いに、ソウルの怒声が割って入る。
「今日はチームワークを見る試験だ。喧嘩に集中したいなら、よそでやれ」
「すみません……」
律儀に頭を下げるメンバーを見て、ジョンは小さく笑い、手を叩いて皆を鼓舞した。
「いいか! この一か月の成果を、ここに来ているマルサラ市民に見せつけてやれ!」
「はい!」
気合のこもった返事とともに、彼らは外へ飛び出していく。
「さあ……盛り上げてくれよ」
ジョンはほくそ笑みながら、その背中を見送った。
「ソウル。お前は誰が勝つと思う?」
「有力なのはベルシェン率いる『風車チーム』ですね。次点は『南の湖チーム』です」
それを聞いたジョンは笑みを浮かべながら紙に数字を書き込み、それをソウルに手渡した。
「ソウル、ラガービールの売店に行って、この紙を掲げろ」
「これは何の数字ですか?」
「オッズだ。賭けたチームが勝てば、その倍率で金が返ってくる仕組みだ」
「なるほど……ですが、そんな金はどこから?」
「賭ける時に先に金をもらうのさ。一口10スッド、ひとり10口までにしておけ」
「分かりました。やってみます」
ソウルは箱と紙を持って走り出した。
「試合が始まったら締めろよ。開始は正午だ」
ジョンはそう言って見送る。
上階へ戻ると、準備を終えたジョウノが見晴らし台の前に立っていた。
「お待たせしました、市長。開始の挨拶を」
「調子のいいことを言う」
呆れたように返しつつも、ジョウノは服を整え、前に出る。
「これより、マルサラ初の『ベースボール大会』を開始する! 参加者全員の健闘を期待する!」
「おおおー!」
「それでは――プレイボール!」
≪現在のジョンが所持している物一覧≫
財布 チップ10枚
倉庫 --
所持 拳銃 M1905 1丁 コルト・ニューポケット1丁 モーゼルC96 1丁 S&WM10 2丁
短機関銃 トンプソン・サブマシンガン 4丁
その他 ライカ1カメラ 2台 火炎瓶 半ダース
弾薬 38口径 200発 32口径コルト 25発 7.63×25㎜マウザー弾 15発 .45ACP弾30発弾倉6本




