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第32話 ベースボール

 ジョンファミリーの採用試験が1週間前に近づく中で、トレーニングをしている構成員の様子を見に来たジョン・マクノエンとクラレット・シュナウは、少し楽しみにしながら彼らの練習場所であるモーの村に向かっていた。


 「あの連中は、しっかりやっていると思うか?」


 「さぁ?モーの村にいるソウルの話じゃ、結構熱心にやっているみたいですよ。ジョンさんが思っている以上に努力家たちばっかりですよ」


 「マジかよ」


 驚いた顔をしているジョンにクラレットは、悪魔的な笑みを、彼の前に見せる。


 「案外、あなた以上の人が見つかったりして」


 「そんなことあるわけないだろ。もしそうなら、俺が直々に指導してやるよ」


 ケラケラと笑いながら、T型フォードを走らせてモーに向かったジョン達は、いつもの場所へと駐車した。


 「おお!ジョンの頭。よくお越しくださいました」


 「おお。元気にしていたか?ソウル」


 「特に何もなく元気に過ごしていますよ。暇なときには、運動がてら畑仕事を若い連中を連れながら手伝いをしていたりしているんです」


 ソウル・レコードがそう言って、村の者たちに手を振ると、笑顔でそれを返してくれていた。


 村の者たちとの良好関係を作っていたのである。


 「仲良くするのは結構だが、ほどほどにしておくんだな」


 「はい。では、案内いたします」


 ソウルがジョン達を新人たちの練習場に案内されていった。


 農耕予定地である空き地に9人1組のグループが各々のメニューをこなしながら、採用試験えと体を整えていた。


 「ほー。本当に頑張っているとはな」


 「4チーム36名が在籍しております。種族も性別もバラバラな奴らですが、何故かみんな一丸となって練習していますよ」


 見張りをしていたソウルから報告を受け取りながら、目の前で頑張る試験候補者達を眺めていたジョンは、驚いた表情を浮かべていた。


 「特に頑張っているのは、西の家を纏めている鼠人グナーヴのシャリウット。風車小屋にいるオーガのベルシェン。南の貯水湖にいる動く鎧(ギアナイト)のヒグ・ボローマンといったこと頃ですね」


 「ふーん。こいつらがねー」


 ジョンが彼らの名前を羊皮紙のメモ帳にサインしていく。


 「採用試験は2週間後に迫っていますからね。さっき名前が挙げた人たちの活躍が楽しみね」


 「その件だが、クラレット。集会所の裏の場所、借りれたか?」


 「……そのことだけどね。実は」


 クラレットが、羊皮紙を手渡した。


 「使用を許すことが出来ないだと!」


 「ごめんなさい。なんでも先客がいるとかで、貸せないみたいなの」


 「借りれないなら、仕方ないな。しかし、どうしたものか」


 ジョンが頭を搔きながら、しばらく考えた後に、何かを閃いたように指を鳴らす。


 「あの市長って、新しい事とか好きな方だったよな」


 「え?ええ」


 「よっしゃ!」


 ジョンは、車に飛び乗ってから、セルキーをひねり上げた。


 「ちょっと!ジョン。どこに行こうって言うの?」


 「マルサラだよ!」


 「何?どういう事!」


 ジョンとクラレットは、街道をかっ飛ばしていき、夜中になる前には、ジョウノ・タピオスの屋敷に着いた。


 「ジョウノ市長に会いたいのだが、繋いでくれないか?」


 ジョンが、屋敷の使用人に伝えると。彼は、すぐさま屋敷に入っていった。


 しばらくして、使用人がジョウノを連れて出て来た。


 「こんな夜分遅くに何だ?」


 「遅くにすまないな。ちょっと、儲け話を持って来たんだ」


 ジョンがそう言うと、ジョウノは眉を動かした。


 「儲け話ね。……まぁ、中で話そうじゃないか」


 「失礼するよ」


 ジョンとクラレットが中に入っていくと、夜分遅くでありながら、使用人が軽食を用意してくれた。


 「まぁ。軽いものでも食べながら話を聞こう」


 「実は、広い会場を借りたいのです。出来れば、闘技場みたいな場所だとありがたいのですが」


 「会場ね。……一体何をするつもりかね?」


 「私も、採用試験としか聞いていないわ?どうするの」


 二人がジョンに顔を近づけていく。


 「お前たちの世界でやっていない娯楽を持ち込もうって腹だよ」


 「娯楽?」


 ジョンは、軽食を並べられた机に、自身が羊皮紙に書いていた娯楽について見せた。


 それは、アメリカ伝統のスポーツである「ベースボール」である。


 「これは、何?」


 「『ベースボール』って言うんだ。俺たちがよくやっていた体を使う娯楽だよ」


 「へー。それって、どういうものなの?」


 「9人一組のチームが、攻守に分かれて革製の球を投げて打つあそびみたいなものだ。攻撃側は、守備側の投げてくる球を打ってから4つある『ベース』を順番に踏んで帰ってくるんだ。逆に守備側は、球を決められた場所に打たれないように投げるか、その球を取って『ベース』を踏まれないようにするのを3人抑える事にする。これを攻守9回行われる競技だ」


 ジョンが書きながらルールを説明する。


 「ルールや広い会場がいるのは分かったが、これが金になるのか?」


 ジョウノが、しっかり手入れされた髭をボリボリといじりながら訊ねた。


 「これは、1ゲームを行うのにかなりの時間が掛かる。その間に、軽食や酒の消費は欠かせないでしょう。それに、入場費が入る費用でかなりのものになると思いますぞ」


 「入場費と飲食費か……確かに、それなりに盛り上がりそうだ」


 ジョウノが揺らいでいる事を見たジョンは、少し笑みを浮かべて、話を続けた。


 「そうですね。市長への会場を借りる費用として、これだけを渡そうと思います。クラレット」


 「はい、はい」


 クラレットは、一枚の羊皮紙を取り出して、ジョウノに手渡す。


 「……収益の2割か。こんな夜中に来て借りるんだ。もうちょっと色を付けてくれるか?」


 「どれほどですかね?」


 「前金に1000レーニョロ(王国通貨)と会場収益の3割。この辺りが妥当じゃないかな」


 レーニョロは、旧王国時代の通貨であり。現在市場に使われている通貨スッド(南部硬貨)の100倍の価値を有している。

 

 ちなみに、一般市民の年収が3レーニョロにである。


 「前金で1000レーニョロ!そんな大金、用立てることが出来るわけ……」


 「そうですか。だったら、この話は、無かった事にしましょう」


 「そんな……」


 クラレットが困った顔をしていると、ジョウノがニヤリとした顔で一枚の紙を持ってくる。


 「金で解決が出来ないのであれば、会談の余興として貸し出すのは、どうでしょうか?」


 「……なるほどね。あんたも食えないやつだな。それでいいだろう」


 「決まりだな」


 ジョウノとジョンが握手をしているのを。何もわからなかったクラレットがキョロキョロしていた。


 「会場整備は、私がしておこう」


 「ありがとうございます」


 「あんたも、礼儀正しい挨拶が出来るんだな」


 「当たり前でしょ。私だって大人ですから」



≪現在のジョンが所持している物一覧≫

 財布 チップ10枚

 倉庫 --

 所持 拳銃 M1905 1丁 コルト・ニューポケット1丁 モーゼルC96 1丁 S&WM10 2丁

    短機関銃 トンプソン・サブマシンガン 4丁

    その他 ライカ1カメラ 2台 火炎瓶 半ダース

    弾薬 38口径 200発 32口径コルト 25発 7.63×25㎜マウザー弾 15発 .45ACP弾30発弾倉6本

 

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