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第31話 海の影

 スベル・マーシュにより、マルサラの港代であるルキャンダが襲撃された事が報告された事で、三港会サイガンフの本部であるカリム島に多くの幹部が集められていた。


 「一体どういう事だ!うちに喧嘩を売ろうなんて輩は」


 勢いのままに船から降りて来たサイクロプスは、怒りの表情のままに奥へと進んでいった。

 

 「よくお越しになりました。ゾーイ様」


 サイクロプスのゾーイを彼の半分ほどの大きさであるエルフが出迎えてくれた。


 「おお!ザイガルじゃないか。わざわざ出迎えてくれたのか」


 「怒り任せで歩くあなたを止めるのは、私ぐらいしかいないでしょう」


 「それもそうだな。しかし、我らに喧嘩を嗾けて来た者とは、いったい誰なのだ?」


 「そのあたりは、マーシュに聞いてください。あの男が進めていたが持ってきた話なので」


 「あの、魚男か。あいつは、どうも好かん」


 「まぁ。彼を採用しているのは総代そうだいなのです。我らがどうこう言えるものではないのですよ」


 「わかっているよ!」


 ゾーイとザイガルは、他の港代こうだいかなめが待っている中央室に入っていった。


 「ゾーイ。ザイガル。遅刻だぞ」


 すでに席に着いていた蛇人間が、鋭い眼光で入ってきた二人を睨み付けた。


 「うるせぇぞ。ビゼン」


 「遅くなり申し訳ございません」


 二人をたしなめた蛇人間ビゼンに、軽く返すゾーイと反対にしっかり謝罪するザイガルであった。


 「それより、俺たちで最後なのか?」


 「いや。呼び出した当人が、いまだに顔を出してない」


 ザイガルがビゼンに聞くと空いている席を指差しながら、スベルがまだであることを伝える。


 「あの魚が。何してやがる」


 「呼んだ本人が未だだとは、我らを舐めているのですかね」


 不満を言いながら二人が席に着くと、奥の厨房室の扉からふてぶてしい魚面の男が入ってきた。


 「お待たせしました皆様。この後の酒宴に出す予定の料理を確認しておりまして」


 「おい雑魚!俺たちより遅れてきて、その態度は何だ」


 自身も遅れてきたにもかかわらず、ゾーイが怒声で出迎える。


 「まあ、そう言わないでくださいよ。あなた達をもてなすのも、呼んだ側の仕事なのですから」


 「相変わらず、調子のいいことばかり言うんだな。お前らしいが」


 「これは、要のビゼン様。お厳しいお言葉ですな」


 「まあいい。それよりもルキャンダが死んだというのは本当なのか?」


 「ええ。残念ながら」


 「そうか。あそこは、うちの縄張り担って日が浅かったとはいえ、何処が手を出したのだか」


 「話によると、最近内陸に出来た小さな組織な様でして。オーガをも素手で倒せる人間が仕切っているとか」


 スベルがそう伝えると、そこにいる一同が驚愕した表情で見ていた。

 

 亜人種の中でも最強格の一つであるオーガに、普通の人間が勝つ事すら難しいのに、それを素手で倒したというのだから、力は相当である。


 「オーガ相手に勝てる相手とはいえ、あそこには30名近い構成員がいるんだ。壊滅するなんておかしいだろう」


 港代の一人がスベルに問う。


 「その男は、怪しげな武器を使ったらしく、リザードマンなどを味方にしているらしく、徹底的に叩かれてしまったらしい」


 「なんという事だ。総代がどう思われるか……」


 スベルの発言に別の港代が呟く。


 「カリュウ・ダイフ総代がお越しになりました」


 若い衆の一人がカリュウの到着を報告すると、そこに集まっている者たちが立ち上がり出迎える。


 「諸君。今日は急な呼びかけにも関わらず、集まってくれて感謝している」


 カリュウが伝えると、集まった港代や要が頭を下げる。


 「今回は、厄介な事を起こしてしまいまして、申し訳ございません」


 スベルがカリュウの横について事情を説明する。


 「……そうか。ルキャンダが」


 「はい。おいたわしい限りです」


 スベルが涙を流しながらカリュウに告げると、横にある杯の中身を床に蒔いた。


 「これは、奴への手向けだ。偉大なる七星の下に行くことが出来るだろう」


 「総代!直ちに報復をせねばなりません」


 慰めの言葉を投げかけていたカリュウに、いきり立っていたゾーイが吠えた。


 「ゾーイ!貴様は、総代に命令できる身分か」


 ビゼンが大声で止めると、ゾーイの鋭い目が向けられる。


 「やめよ」


 短くも、ドスの利いた声で二人を止める。


 「実はな。マルサラ市長から、今回のいきさつについての手紙が来ておってな。彼が仲介してくれるから、和解せよと言って来たのだよ」


 「総代。それはどういうことですか?」


 少し慌てた様子のスベルが、カリュウに問う。


 「うん。どうやら、一番最初に手を出したのは、当方が割らしくてな。彼らの幹部が撃たれたことで、それを返しに来たようなのだ」


 「だからと言って、許す訳にはいかないでしょう。それを和解などと」


 カリュウの回答にヒゼンが渋い顔をして異議を伝えた。


 周囲にいる者たちも彼と同意見のようであった。


 「私たちの仕事は、面子が大事です。どこの馬の骨か分からない零細組織と講和せねばならんのですか?」


 「確かにその通りだ。しかし、深く受け入れる懐も必要であろう」


 ヒゼンやほかの幹部たちを納得させるような口調でカリュウが説得する。


 「……納得いきませんな」


 一番不満そうであったのはスベルであったようだ。


 「今、マルサラを手放せば、大陸側の港を全て失う事になります。そんなことをすれば、我が組織を維持するのは、不可能となるでしょう」


 「お主の不安は、よく分かる。しかし、ここで彼らと戦えば、更なる犠牲を強いてしまうだろう。出兵費も馬鹿にならんことになる。それならば、市長の提案を受けた方が利口だろ」


 「ですが……」


 スベルが何か言いたそうであったが、他の者たちが同調しない顔をしているのを見て引き下がった。


 「よいか。良き日取りを定めて講和の場を設ける。それまでは、手を出すことまかりならん。以上だ」


 「は!」

 

 一同がカリュウの声に応えるように首を下げる。


 納得した部下たちを見たカリュウは、少し見渡した後に食事を運ぶように指示した。


 「仕事の話は、ここまでだ。皆食事にしよう」

 

 カリュウは、戦争の早期解決に動き出したが。その陰では、怪しげに動き始める者たちがいた。

 

≪現在のジョンが所持している物一覧≫

 財布 チップ10枚

 倉庫 --

 所持 拳銃 M1905 1丁 コルト・ニューポケット1丁 モーゼルC96 1丁 S&WM10 2丁

    短機関銃 トンプソン・サブマシンガン 4丁

    その他 ライカ1カメラ 2台 火炎瓶 半ダース

    弾薬 38口径 200発 32口径コルト 25発 7.63×25㎜マウザー弾 15発 .45ACP弾30発弾倉6本

 

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