第30話 部下を考えるに
桟橋襲撃から数日後。
ジョン・マクノエンの下には、噂を聞きつけたゴロツキ達が部下にしてほしいと集まっていた。
旧王国領では、大勢力である三港会の幹部である港代を討ったことは、彼らにとっても大きな衝撃であり、近場の者たちは早いところ傘下に入ろうと動き出していたのである。
「一気に人が集まったわね。元の三倍くらいいるんじゃない?」
外に集る者たちを見ながら、クラレット・シュナウがティーカップをジョンに手渡す。
「奴等は、名声に集まってきただけの輩さ。肉に集る蠅と同じだよ」
「でも、部下にするのでしょう? 今のボブスさんみたいに」
「部下にするのはそうなんだが、このまま入れるわけにはいかんからな……」
ジョンはクラレットから受け取ったハーブティーを口にした後、少し考え込んだ。
「そういえば、あなたが来た時に市長のところであった殴り合い。『ボクシング』だっけ? あれで決めたらいいんじゃないの?」
「そんなんじゃ、腕自慢しか集まらないじゃないか……」
何か閃いたように指を鳴らしたジョンは、羊皮紙に必要なものを書き記すと、これをクラレットに手渡した。
「こんなの、揃えられないか?」
「え? これくらいなら用意できるけど。何する気なの?」
「選抜試験だよ」
ジョンはクラレットに品物の用意を頼むと、外に出ていった。
「諸君。よく集まってくれた」
ジョンに出迎えられたゴロツキ達は、少し驚きながらも頭を下げる。
「うちは若い連中を強く欲しているものの、それ以上に《《チームワーク》》を重視している。そこで、君たち全員を対象に、一月後に選抜試験を行うことにした」
「選抜試験? どういうことですか」
「まずは、これを一月かけて練習してもらう。試験はそれからだ」
ジョンはそう言って、練習メニューを手渡す。
「スイング練習? ランニング?」
「この、キャッチボールって何ですか?」
各々が頭を抱えながら、渡された練習メニューについて質問する。
「これは、一月後に行う選抜試験において必要なものだ。練習の仕方については、これからスケッチで説明する」
ジョンはそう言って、地面に練習の仕方を書き始めた。
荒くれ者である彼とは思えないほどきれいなイラストを描く彼のもとには、日常業務をしていたエルフたちも集まって見ていた。
「……いいか? って、なんでこんなに人が集まってるんだよ」
「いや、意外な才能だなって思ってね」
「うるせぇよ」
クラレットの言葉に恥ずかしそうに顔を背けるジョンを見て、集まった者たちも微笑みだす。
「ところで、醸造所にいる者たちには、これを覚えてほしいんだが。今から書くのを写してくれないか?」
「これは、何?」
「その試験をする時に必要なものなんだよ。しっかり教えるから、聞いてくれ」
クラレットを含めて、集まっていたエルフたちは、首をかしげながら見ていた。
「あと、それなりに広い空き地を探さないといけないな」
「そんなに広い敷地がいるの?」
「ああ。走ったりすることになるからな」
「だとしたら、それなりに広いところがいるわね……そうだ!」
クラレットが閃いたように手を叩くと、ジョンの腕を引いて走っていった。
「おい、どこへ連れていくんだよ」
「いいから、付いて来なさい」
クラレットが連れていった先には、エルフたちが集会所としている建物があった。
「ここは、この町にある集会所じゃないか」
「そう。ここなら広い庭もあるし、周囲にも建物がないから騒ぎ声も気にならないわ」
「確かに。ここなら問題なく試験ができるだろうな」
クラレットに案内された場所を気に入ったジョンは、何か考えているのか、しばらく顎に手を当てていた。
「あそこに席を並べれば観客を入れることができるな。そこにラガーを配れれば……」
「何ぶつぶつ言っているの?」
「クラレット、ここの確保を頼めるか? 金の方は交渉してくれ」
ジョンはクラレットに集会所の確保を頼むと、どこかへと走っていった。
「ちょっと、何を慌てているのよ」
こうして、ジョン主催の選抜試験は、一月かけて準備されることになった。
≪現在のジョンが所持している物一覧≫
財布 チップ10枚
倉庫 --
所持 拳銃 M1905 1丁 コルト・ニューポケット1丁 モーゼルC96 1丁 S&WM10 2丁
短機関銃 トンプソン・サブマシンガン 4丁
その他 ライカ1カメラ 2台 火炎瓶 半ダース
弾薬 38口径 200発 32口径コルト 25発 7.63×25㎜マウザー弾 15発 .45ACP弾30発弾倉6本




