第29話 まとまらない話
「三港会と和解せよですと!」
モーの集会所にて、クラレット・シュナウの持ってきた話に、怒り口調で問うボブスの声が響いた。
「ええ。ジョウノ市長が出してきた条件が、それなのよ」
「ついさっきまで殺り合っていた相手との和解なんて無理というものですぞ。仮にできたとしても、どのような条件を付けられるか分かったものじゃありませんよ」
クラレットの話に不満を持っていたボブスは、自身が思う問題点を伝え、否定的な意見を述べた。
「このまま戦い続けていても、圧倒的な力で押さえつけられるだけですよ。今は、不意打ちを食らったことで驚いているだけで、すぐに反撃してくるんじゃないの?」
「だからといって、この状況になってから講和話とは……」
「二人ともそこまでだ!」
しばらく黙って聞いていたジョン・マクノエンが、二人に向かって一喝した。
「二人の言いたいことは分かった。まずは、三港会っていう組織がどういうものかを知らなきゃならない」
「確かに、そうですな」
ボブスは少し落ち着いて席に座ると、クラレットもゆっくりと席に戻る。
「ボブス。三港会について教えてほしい」
「三港会とは、ニービア海にある各諸島に点在する拠点や旧王国地域の港などで人夫募集や安全な海路の確保費などを主な収益としております。組織規模は300人以上とのことです。数隻のガレー船や砦などを所有していることから、かなり厄介な組織と言えます」
「船や砦を持っているとか、一つの軍隊みてぇだな」
ジョンの驚き顔を見たボブスは、少し呆れた顔をした後に言葉を続けた。
「三港会の頭目は『カリュウ・ダイフ』というノームなのですが、この男がさらに厄介なのです」
「と言うと?」
「彼の組織は、元々小さい穏健派の組織だったのですが、20年前に起こった親組織の崩壊に合わせて勢力を急拡大していき、今では『海運の長』ともいわれる存在となっていました」
「なるほどな」
ジョンはボブスに三港会のことを聞いた後、しばらく天井を見つめた。
ジョンたちが話題にしている三港会では、昨日の出来事が使いによって一番近い拠点に届けられていた。
マルサラから北に20海里離れた島にある港代のスベル・マーシュは、報告を聞いて震えていた。
「この報告は誠なのだな……」
「はい。私もその場におりましたが、報告せねばと思い、何とか逃げてきた次第です」
「これは大事だぞ! 直ちにカリム島にいる総代に報告せねばならん案件だ」
「総代への報告を! それは、私などではできません」
「大丈夫だ。私から総代には伝えておく。それよりも、他の港にはこのことは伝わっていないだろうな」
「はっ、はい。一番近い港はスベル様の港ですので」
「そうか」
スベルは酒のグラスを受け取ると、労いの意味も込めて彼に手渡した。
「よく頑張ってくれた。これは俺からの礼だ」
「ありがとうございます」
彼はもらったグラスを口に流し込むと、ホッとしたような表情をした後に違和感を覚えて首を押さえだす。
「うっ! ぐぅ……」
「俺の耳に入るのが最初で、本当によかったよ。こんなにありがたい話は、ほかにないからな」
スベルは手に持っている小瓶を軽く愛でた後、魚人族らしい口の広い顔でニヤけてみせた。
「誰か!」
「はい!」
「そこの恩人を片付けておけ」
「承知しました」
「あと、カリム島へ向かう船を用意せよ」
スベルに命じられた部下は、報告者を引きずりながら外へと出ていった。
「まさか、マルサラがこうも簡単に落ちるとは。世の中は、本当に面白いな」
スベルはにんまりと笑みを浮かべながら、少し荒れてきていた海を眺めていた。
≪現在のジョンが所持している物一覧≫
財布 チップ10枚
倉庫 --
所持 拳銃 M1905 1丁 コルト・ニューポケット1丁 モーゼルC96 1丁 S&WM10 2丁
短機関銃 トンプソン・サブマシンガン 4丁
その他 ライカ1カメラ 2台 火炎瓶 半ダース
弾薬 38口径 200発 32口径コルト 25発 7.63×25㎜マウザー弾 15発 .45ACP弾30発弾倉6本




