第28話 騒ぎの後
ジョン・マクノエンたちが桟橋にて三港会への襲撃を行っていた頃。ジョウノ・タピオスが主催するパーティーでは、クラレット・シュナウが愛想を振りまいていた。
「ジョウノ市長。先日は、本当に大人げないことをして申し訳ございませんでした」
「いえいえ。あの時は私も酒が入っていたので、声を荒らげてしまいました」
「では、お互い様ということで」
笑顔で会話をする二人を見て、周囲の者たちはホッと胸をなでおろしていた。
「ところで、あなたのパートナーであるMr.ジョンから、今日のパーティーにと特別な品を預かりましてな」
ジョウノが手を叩くと、腕自慢の使用人たちが大きな樽を運び込んできた。
「最近、旧王国領内で流行っている『ラギアエール』というものだ。今日、私の知人が大量に届けてくれたので、ぜひとも味わってもらいたい」
ジョウノがそう言うと、使用人たちが樽についている練磨石の力を込めて、一気に冷やされたレモン色の液体を蛇口から、流れ出していった。
「是非とも、皆様に味わってもらいたい。さあ、楽しんでくれ」
ジョウノがそう言いながら、率先して自身のグラスにラガービールを注いだ。
「まあ、なんて鮮やかなレモン色かしら」
「本当だ。この爽やかな香りも素晴らしい」
ジョウノに続いて、参加者たちも次々とグラスを手に取り、黄金の液体を注ぎ始めた。
「皆さんに喜んでいただけて、何よりですな」
上機嫌で客の反応を眺めていたジョウノだったが、そこへ一人の使用人が駆け寄ってくる。
「……何? それは本当か!」
一気に顔色を変えたジョウノは、慌ててクラレットを自室へ呼びつけた。
「やってくれましたな、クラレット嬢」
「一体何のお話でしょうか? 私はずっと、ここでパーティーに参加しておりましたけれど」
「冗談ではない! 君のパートナーのジョンが、桟橋で騒ぎを起こしているというじゃないか。しかも、桟橋と船舶が火事になっているそうだぞ!」
「まあ。それは大変なことですね」
クラレットがわざとらしく口元に手を当てて驚いて見せると、ジョウノの顔はさらに赤く上気した。
「桟橋に向かった警備隊が見たのは、縛り上げられたゴロツキどもの山だったらしい。しかも、ことごとく三港会の者たちばかりだというではないか」
「まあ、不思議なこともあるものですね。犯人が自分で自分を縛るなんて」
「そんなわけがあるか! 転がっていた死体も三港会の連中ばかりだったんだぞ」
「仮にジョンがそのようなことをしていたとして、私がそれを知っているとお思いなのですか?」
「それは……」
言葉に詰まったジョウノが机の前に腰を下ろすと、クラレットは彼に歩み寄り、一通の封筒を差し出した。
「ただ……これをジョンから預かっているのです」
「なんだ、これは」
ジョウノは封筒を受け取ると、ペーパーナイフで中身を確認した。
「……ほう。あいつに、こんな真似ができるというのか?」
「おそらく。……『主催はジョウノ市長の名前で行いましょう』と、彼は言っていました」
「わかった。その提案を受け入れよう。ただ、こちらからも一つ条件を付け加えさせてほしい」
「何でしょうか?」
「三港会との抗争を手打ちにすることだ」
「えっ?」
予想外の提案に、クラレットは驚きの表情を浮かべた。
「三港会の行いは目に余るものだったが、今となっては交易の重要な仲介役でもある。そこで、君のパートナーとも折り合いをつけさせたいのだよ」
「あの人が受けてくれるかしら……」
「そこは彼次第だ」
「……分かりました。伝えておきます」
ジョウノの回答に、クラレットは少し考えた末に承諾した。
「では決まりだ。今回の火事については、私が処理しておこう」
ジョウノは席を立つと、そのまま部屋を出て待ち構えていた使用人たちに対処を命じた。
「では、良い返事を期待しているよ」
「……あまり期待はなさらないように」
ジョウノの自信に満ちた笑顔に、クラレットは苦笑いで応え、彼を見送った。
≪現在のジョンが所持している物一覧≫
財布 チップ10枚
倉庫 --
所持 拳銃 M1905 1丁 コルト・ニューポケット1丁 モーゼルC96 1丁 S&WM10 2丁
短機関銃 トンプソン・サブマシンガン 4丁
その他 ライカ1カメラ 2台 火炎瓶 半ダース
弾薬 38口径 200発 32口径コルト 25発 7.63×25㎜マウザー弾 15発 .45ACP弾30発弾倉6本




