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第27話 お礼参り

 ガティールが襲撃されて数日経った頃。


 ジョウノ・タピオスは、この日開かれるパーティーの出迎え準備をしていた。


 「結局、ラギアは届かなかったか」


 「申し訳ございません。私どもも、あちこちに声を掛けて探させたのですが」


 「準備できなかったのなら、仕方ない。とりあえず、今あるものでもてなす事にしよう」

 

「畏まりました」


 使用人がそう言って、後ろに下がって行く。


 「手に入らなかったとは、まったく頼りないな」

 

 ジョウノは独りごちて、手元に残っていた貴重なラガービールを口にした。


 「喜んでいただけて、幸いであります」


 不意に横の窓から聞こえた声に、驚いたジョウノは大事なラガービールを吹き出した。


 「そんなに驚くなよ。久しぶりに顔を出したんだからさ」


 「お前! クラレットの所にいたジョン・ドー!」


 窓から顔を出しているジョン・マクノエンを見たジョウノは、グラスを落としながら後ずさりしていった。


「何をしに来たのだ!」


 「いやね。お宅のお膝元に少しお邪魔することになるから、ご挨拶に寄せてもらったんですよ」


 「いったいどういう事だ?」


 「まぁ、詳しく聞かないで下さいよ。外に『口止め料』を持ってきたのですから」


 「何?」


 ジョウノが窓の外を覗くと、馬車にはラガービールの樽が山積みにされていた。


 「多少騒ぎになるかもしれませんが、こちらでご容赦頂きたい」


 「何をするか知らんが、下手な事をすれば牢に叩き込むからな!」


 「おー怖。そうならないうちに、退散するとしましょう」


 ジョンは窓から飛び降りると、そのまま馬に乗って去って行った。


その日の夜。


 ルキャンダ率いる三港会サイガンフの面々は、ラガービールに代わる酒を届ける準備をしていた。


 「慎重に降ろせよ。市長様から頼まれた大事な品なんだからな」


 ルキャンダの指示で荷下ろしに従事する作業員と、周囲を見張る構成員たちが慌ただしく動き回る。


 「パーティーに間に合わなかったら、面子が丸潰れだぜ」


 「港代、間もなく積み終わります」


 「そうか」


 ルキャンダが町の方を向くと、何かがこちらに向かってくるのが見えた。


 「あの光は、いったい……?」


 「さぁ、うちの馬車ではないですよ」


 妙な違和感を覚える彼らの耳に、聞き覚えのない排気音が轟いてきた。


 「近づいてくるぞ!」


 「馬車じゃない、なんだあれは!」


 慌てふためく構成員たちの目の前に、黒い鉄の塊が滑り込み、中から火のついた瓶が投げ込まれた。

 

 炸裂した瓶から中身が引火し、激しい火炎と火花が飛び散る。

 「なんだ! いったいどこの野郎だ!」

 

 憤怒したルキャンダは、首にかけていた錬磨石を取り出して構えた。


 しかし、彼が術を発動させるよりも早く、その腕が吹き飛ばされた。


 「ぎゃあぁ!」


 ルキャンダが苦痛に悶える中、黒のT型フォードから降り立ったジョンが、M1905と火炎瓶を手に姿を現す。


 「よう皆さん、ご挨拶に来たぜ!」


 ジョンは火炎瓶を投げつけると同時に、拳銃でルキャンダの喉元をぶち抜いた。

 

 火炎瓶は酒を積んだ馬車に引火し、パニックに陥った馬たちが暴れだす。


 「お前らが誰の部下に手を出したか、教えてやるぜ! 野郎ども、出てこい!」


 ジョンの号令で周囲に潜伏していたキャッシーたちが姿を現し、トンプソン短機関銃を乱射する。


 「一人も逃がすんじゃないわよ! 撃ちまくれ!」


 轟音と共に弾丸が降り注ぎ、ルキャンダの部下たちが次々と沈んでいく。


 混乱しながらも、敵は錬磨石を使い火炎魔法や光魔法で反撃を試みた。


 「逃げろ! 船を早く出せ!」

 

 船に残っていた者たちが、慌てて桟橋の渡し板を投げ捨て、岸を離れようとする。


 「どこに行こうというんですか?」

 

 船乗りたちが声の方を見ると、そこにはソウル・レコードとラピドゥスが火炎瓶を持って立っていた。


 「お前ら、どこから……?」


 「そんなの関係ないだろ? だって、あんた達が自分の港に帰れるわけじゃないんだからさ」


 ソウルが口から軽く火を吹くと、火炎瓶の導火線が赤く燃え上がった。


 「それじゃあな!」

 

 二人が火炎瓶を投げつけると、木造船は瞬く間に火だるまとなった。


 「やべぇ! 海に逃げろ!」


 甲板の者たちが次々と海へ飛び込んでいく。


 しかし、水中で彼らを待っていたのはさらなる絶望だった。

 

 ドラゴニュートのソウルが上空から火の息を吐きかけ、魚人のラピドゥスが水中から槍で串刺しにしていく。


 桟橋からその光景を眺めていたジョンに、ボブスが近づいてきた。


 「しかし……鉄屑を入れただけで、あれほどの威力になるとはな」


 「あれは鉄じゃなくて『アルミニウム』っていうものだよ」


 数日前 黄金の20年ゴールデントゥエンテース «««


 「アルミ屑が欲しいって?」


 久しぶりに店を訪れた武器屋のボニーは、ジョンの頼みに驚きを見せた。

 

 「油を入れた壺を使う放火術があるだろ。その時にアルミを使うとよく燃えるって聞いてな。一度試そうと思っていたんだよ」


 「確かに欧州大戦の時、戦車相手や塹壕制圧に兵士が自作していたらしいが……本当にやるのかい?」


 「布切れと酒瓶はあっちにあるから、こっちでは灯油とアルミがあれば十分だよ」


»»»現在


 「そのアルミって言う物がこれほどの威力だとはな」


 ジョンが驚きながら燃えた桟橋と船を眺めていた。


 「しかし、この騒ぎをどう治めるおつもりですかな?」


 ボブスが困ったような顔を浮かべながら、ジョンへと顔を見る。


 「まぁ。その事は、クラレットに任せるとしようじゃないか」


 ジョンがそう言って、上にあるパーティー会場を見つめていた。


≪現在のジョンが所持している物一覧≫

 財布 チップ10枚

 倉庫 --

 所持 拳銃 M1905 1丁 コルト・ニューポケット1丁 モーゼルC96 1丁 S&WM10 2丁

    短機関銃 トンプソン・サブマシンガン 4丁

    その他 ライカ1カメラ 2台 火炎瓶 半ダース

    弾薬 38口径 200発 32口径コルト 25発 7.63×25㎜マウザー弾 15発 .45ACP弾30発弾倉6本

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