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第25話 三港会

 ガティールたちが怪しげな一団による襲撃を受けたことで、宴の席に届くはずだったラガービールが入ってこなくなった。


 多くの取引先が品不足に困惑しており、そのうちの一人であるジョウノ・タピオスは、間近にパーティーを控えていたため、すっかり弱り果てていた。


 「なんということだ。せっかく採用した酒が入ってこないとは」


 「申し訳ございません。仲介業者曰く、納品トラブルがあったそうなのです」


 ジョウノにラガービールを紹介した使用人が申し訳なさそうに告げると、ジョウノの関心はその醸造元へと移った。


 「……のう。お主は以前、この酒が内陸国家で作られていると言ったな」


 「ええ。あくまで噂程度でございますが」


 「ただ、一つ頼める宛はある」


ジョウノが手元のベルを鳴らすと、一人のゴブリンが入ってきた。


「いかがなされましたか? ジョウノ市長」


 不遜ながらも礼儀を持って頭を下げるそのゴブリン、ルキャンダは「三港会サイガンフ」に所属する構成員である。


 彼は港を治める「港代こうだい」と呼ばれる大幹部であり、組織のトップである「総代」に次ぐ地位にあった。


三港会は、総代カリュウ・ダイフを頂点に、その腹心である「かなめ」、そしてニービア海の各諸島にある支部を任された大幹部「港代」たちが名を連ねる組織である。


 「貴様らの力を借りたい。最近、公国領内で流行っている『ラギア』を入手したいのだが、お主らに仕入れを任せたいのだ」


 「確か、レモン色のエールのことでありますな。私もどこから買い付けているかまでは存じませんが、内陸の品だとは聞いております」


 「そうなのだが……その話しぶりでは、お主も詳しくは知らぬようだな」


 ジョウノが残念そうなトーンで煽ると、ルキャンダが不機嫌そうに顔を歪めた。


 「無理なら仕方ない。ほかのツテを探すとしよう」


 「いいえ、私どもが用意いたしましょう。……ただし、支度金をいただきたい」


 「やってくれるか。ならば、これを持って行け」


 ジョウノが札束を机へ投げ出すように置くと、ルキャンダはそれを奪い取るように回収した。


 「ご用件はそれだけですな。では」


 ルキャンダが勢いよく扉を閉めて退出すると、外にいた付き人の頭を殴りつけた。


 「クソッ! なんとも生意気な市長だ。総代の覚えがめでたくなければ、とうに始末していただろうに」


 「これから、どうなさるおつもりですか?」


 「若い衆を集めろ! 最近流行りのエールを根こそぎかき集めるぞ」


鼻息荒く命じたルキャンダは、そのまま館内にある事務所へと戻っていった。


 同じ頃、ガティールの負傷を聞いたジョン・マクノエンは、自身の能力である「黄金の20年ゴールデントゥエンテース」の中にいた。


 「今日は一段と沈んでおられますね、Mr.ジョン」


 出迎えたリッチが、彼の顔を覗き込みながら尋ねる。


 「俺の準備が悪かったせいで、仲間に二人も怪我人を出しちまった」


 「それはお辛いことですね。しかし、このような仕事をしている以上、避けられないことではないですか?」


 「それはそうだ。だが、俺がしっかりと用心させていなかったことが、原因の一つであることは否定できない」


 落ち込むジョンに対し、リッチは氷の入ったウイスキーグラスを差し出した。


 「まあ、一杯飲んで落ち着きましょう」


 「すまないな」


 ジョンは受け取ったグラスを口に運ぶ。


 老舗の蒸溜所で作られたのであろう、焼き入れされた樽の香ばしい薫りが鼻を抜けていった。


 「上物だな。いいのかい?」


 「こういう時は、酒にでも慰めてもらいましょう」


 ジョンが琥珀色の液体を喉に流し込んでいると、背後の扉が開いた。


 「リッチさん、ご無沙汰していましたね」


 「いらっしゃいませ、ボニーさん」


 入ってきたボニーにリッチが挨拶を返すと、ジョンが鋭い眼光で彼の方を振り向いた。


 「ボニーさん、待っていたよ」


 「おや、ジョンさん。そんな暗い顔をしてどうしたのですか?」


 ジョンはボニーに歩み寄り、その肩を叩いて顔を上げた。


 「あんたから武器を買いたかったが、会えなくてな。その結果、仲間に危険な思いをさせちまった」


 「それは……なんとも災難でしたな。それで、私から護身用の武器を買いたいと?」


 「それもあるが、俺としては別のものが欲しいんだ」


 ジョンは手持ちのチップをすべてボニーに見せた。


 「頼めるか?」


ジョンがボニーに託した「依頼」とは――?


≪現在のジョンが所持している物一覧≫

 財布 チップ--枚

 倉庫 --

 所持 --

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