第24話 襲撃
ジョン・マクノエンが心配していた輸送ルートを、マントとガティールが荷馬車を転がしながら進んでいた。
「次は、『これは、1樽1000ティール(統一通貨)となります』だ。言ってみろ」
「コレハ、1樽1000ティールとなります」
「もうちょっと、まろやかな感じで話してみないか? 今のだと、威圧的に聞こえるぞ」
ガティールとマントは、ここ一年近く酒運びを共にしていた。暇な時間や移動中に流暢な話し方を教えたり、譲り受けた銃の扱いを覚えたりしていたのだ。
ガティールの成長は顕著であり、今では交渉の場にもまともに出られるほど流暢になった。
「しかし最近は、ゴロツキや夜盗の類に絡まれることがなくなって、だいぶ楽になったな」
「油断ハ禁物だぞ。マァ、もし絡まれても大丈夫ナヨウに、俺が付いているんだがな」
ガティールが軽口を叩きながら、マントの肩を叩く。
最初の頃に比べて力加減を覚えたものの、マントにとってはかなり痛いものだ。
「いっつ! 力加減は、まだ勉強が必要なようだな」
マントが渾身の拳をガティールにお見舞いするも、子供がじゃれている程度の感覚で受け流された。
「ガハハハッ! そんなにカマッテ欲しかったのですかな。お前さんも、案外寂しがり屋だな」
ガティールは、マントの肩をもう一度叩く。
「この脳筋が。もう少し考えろよ」
軽口を叩きあうマントだったが、少し前にある中継地点に、待機しているはずの仲間の姿がないことに気づいた。
「あれ? ここにいるはずの奴はどこに……」
異変を察したマントがガティールを振り返らせる。
「伏せロ!」
ガティールはマントを庇うように体を前に出した。その瞬間、後ろから数本の矢が襲いかかった。
「うぐっ!」
「ガティール!」
マントは慌てて、ガティールの腰に下げていたモーゼルを抜くと、前方へ構える。
目の前にはクロスボウを構えるゴロツキたちがおり、次弾を装填しようとしていた。
「クソ野郎! よくもガティールを!」
マントが叫び、重たいモーゼルを撃ち放った。
銃弾がクロスボウの射手を打ち倒すが、残りの射手たちが構え直す。
「ガティール! 後ろに隠れろ!」
マントがもう一発撃つと、その威力に射手たちが怯んだ。
二人はそのまま荷馬車の陰に逃げ込み、ガティールの背中に刺さった矢を引き抜く。
「待ってろ! 今治してやるからな」
「お前、治療用の**練魔石**を持っていたのか?」
「持ってきたのだよ。小っちゃいがな」
ガティールの傷口にマントが手を当てると、ゆっくりと「リーレ」と唱えた。
「ありがと。少しマシになったヨ」
「どういたしまして。しかし、どこの連中だろう?」
「わからんが、ココデ待ち伏せているって事ハ、俺たちの荷を狙っているノハ間違いない」
マントから銃を受け取ったガティールは、クロスボウを撃ってきた者たちの顔を確認する。
「ただの荒くれ者じゃなさそうだが、どこの奴らでしょうか?」
「誰かは知らナイガ、ただの荒くれ者じゃナサソウだ」
ガティールがそう言って、射手たちに向かって銃を撃ち込む。
銃弾に驚いた射手たちが身を躱した隙に、ガティールとマントは馬車に飛び乗り、走り抜けていく。
「マント! そのママ森に入れ!」
ガティールは荷台に乗り、銃を撃ち続けた。
森に入った馬車は、ガタガタと荷台を揺らしながら突き進み、しばらくしてレイロムの居住地にたどり着いた。
「おい! 何があったんだ!」
「マントさんたちじゃないか! 一体どうしたんだ」
二人の馬車が飛び込んできたのを見て、レイロムたちが慌てて駆け寄ってくる。
「見たことのない賊に襲われたのだ。ただの野盗ではなかった」
マントが事情を説明すると、数人が森の外の様子を確認しに行った。
「ぐぅ……」
「ガティール!」
安堵したせいか、荷台の上で倒れ込んだガティールに、マントとレイロムたちが駆け寄った。
荷台から降ろされたガティールの顔は、真っ青だった。
「ガティールさん! しっかりしてください!」
「早く運び出せ! 気付け薬と毒消しを持ってこい!」
この襲撃者については、その後の調査をしても正体は分からないままであった。
≪現在のジョンが所持している物一覧≫
財布 チップ32枚
倉庫 なし
所持 拳銃 M1905 1丁 コルト・ニューポケット1丁 モーゼルC96 1丁
弾薬 38口径 40発 32口径コルト 25発 7.63×25㎜マウザー弾 15発
両刃ナイフ 4本




