第22話 配置決め
ラテラルの端にあるジョン・マクノエンらが屯している塒に、皆の配置を決めるべくクラレット・シュナウら全員が集められていた。
「よし。これから、俺たちの商売について説明する。まずは、この地図を見てほしい」
ジョンは、南部港区域から内陸国家である五大樹連盟メルシェン周辺を記した地図を広げた。
「我らは、マルサラから主要な農産物、特に醸造の出来る麦などを入手する。そして、倉庫代わりに使うモーの村にて幌付きの荷車に積み替え、この町に持ってくる。町に着いたら品物を醸造して樽に詰め、『ジャンガラの森』を経由して南部都市に売って回る――という手はずだ」
「なるほど。エールの密造を行うのか。だが、その程度の品なら、よそでも買えるのではないか?」
「そこで『ジャンガラの森』を抱き込んだ副産物が役に立つのだよ」
ジョンは、革袋から黄緑色の種のようなものを取り出し、皆の前に見せた。
「これは、確か『レイロム』の隊長たちが飲んでいた水に香り付けしていた物よね?」
「そう。『ホップ』って言うんだ」
半月前 «««
「まさか、頭目がお前たちの取引に乗ってくれるとはな。驚いたよ」
交渉がうまく行ったことを祝うように、隊長がジョンたちに水の入った器を手渡す。
「祝いの品が水かよ。もっといい物はないのか?」
「何を言っている。これほどいい物はないぞ」
隊長は、手に取った黄緑色の果実を指先でつぶし、水の器へ放り込んだ。
「ほれ。飲んでみろ」
ジョンたちは、隊長の差し出した水を口に含んだ。
「にっが! 何なの、これ」
「ソウカ? 俺は好きだゾ」
各々が味に文句をつけていたが、ジョンだけは何かに思い当たったかのように、無言でその水をすすった。
「なぁ、隊長。この実を少し分けてくれないか」
「これをか? 別に構わんが、何にするんだ」
「お前たちの上りに色を付けられそうな話だよ」
»»» 現在
「こいつは、苦みと香りを加えることができる香辛料でね。エールとかけ合わせれば、すごいインパクトになるんだ」
「そうなの? 私は苦すぎたから、すぐ飲むのをやめちゃったけど」
「調合の仕方については詳しくないが、時間をかける価値のある商売になると思うぞ」
ジョンの話を聞いた一同は、半信半疑といった様子で互いの顔を見合わせていた。
「まずは、マルサラにて商人との窓口になってくれる者だが……ボブスさん、あなたに任せていいか?」
「わかりました。ただ、同行者にラピドゥスを連れて行ってもいいですか?」
ボブスはラピドゥスを指差し、ジョンに確認した。
「いいだろう。次に、運送隊を率いるのはマント。お前さんだ」
「いいけど……俺はあいつらのように戦えないよ」
「わかっている。当分はガティールに護衛を任せるつもりだ」
指名されたガティールは、マントの肩を叩いて白い歯を見せた。
「次に醸造所の担当だが、当分は俺とクラレットで仕切ろうと思う。いいかな?」
「ここまで話を持ってきておいて、今更断れないでしょ」
クラレットは困り顔をしながらも、ジョンの提案を受け入れた。
「最後にソウル・レコードだが、中継地点に顔を出す浮浪者などの中から、使えそうなやつを勧誘してほしい。選別は任せる」
「了解。できる限り威勢のいいのを揃えておきますよ」
ソウルが拳を胸に軽く当て、自信満々に答えた。
一通りの指示が終わると、ジョンは「スピークイージー」へと足を運んだ。
「いらっしゃいませ、ミスター・ジョン。本日はどのようなご用件で?」
「まずは、これだ」
ジョンはリッチに対し、先の上納金から自分の取り分として確保していた宝石箱を差し出し、チップへの換金を要求した。
「これは、かなりいい品物ですね。チップ10枚と交換しましょう」
「加工と装飾からして相当なものだとは思ったが、それほどだったとはな」
「ええ。ところで、ほかにも用件があったのではないですか?」
リッチが滑らかな動きで棚からボトルを取り出し、グラスに注ぐ。
「ああ。実は、酒の作り方を教えてほしくてね」
「なるほど。でしたら、こちらをお渡ししましょう」
リッチは棚から数枚の紙束を取り出し、ジョンに手渡した。
「当店でも取り扱っているラガーの製法です。参考にしてください」
「ありがたい。チップ何枚だ?」
「そうですね。5枚ほど頂戴したいところです」
「足元を見てくれるね」
ジョンは少し不服そうな顔をしながらも、チップを手渡した。
「あと、ボニーに伝言だ。水平二連のショットガンと、その弾を手配してほしいとな」
「承知いたしました」
ジョンたちが怪しげな動きを始めるのは、それから二か月後のことであった。
≪現在のジョンが所持している物一覧≫
財布 チップ5枚
倉庫 なし
所持 拳銃 M1905 1丁 コルト・ニューポケット1丁 モーゼルC96 1丁
弾薬 38口径 40発 32口径コルト 25発 7.63×25㎜マウザー弾 40発
両刃ナイフ 4本




