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第21話 モーの村

 ジョン・マクノエンとボブスは、抜け荷の準備を進めるべく、以前訪れたことのある国境の農村モーに足を運んでいた。

 

 農村を仕切っていたエルフのおさは、彼らが来たことを知り、少し怯えた表情で出迎えた。


先月起こった荒くれ者たちの争いにより、複数の種族の遺体が数体放置されていたからであり、村全体が余所者をひどく警戒していたのだ。


 「お前さんたち、一体何をしに来たんだ」


 「怯えなくていい。俺は、お前さんたちが持っている小屋の一つを買いに来ただけだよ」


 「小屋を買いに来たですと? どういうことですか」


 「言葉通りだよ」


 ジョンの言葉に不安がる長の肩を叩きながら、ゆっくりと目的の小屋に近づいていく。


 「近く、マルサラとラテラル間で取引を行う予定なんだが、この辺りを中継拠点としたいのだよ。この農村は、休憩させるのにちょうどいい場所なんだ」


 「だとしても、この小屋は冬の蓄えを貯蔵するために必要なのですよ。おいそれと売れるものではありません」


 「そんなことを言わないでくれよ。ここ以外だと、本当に泊まれる場所がないんだ。畑仕事の邪魔はしないからさ」


 ジョンが下手したてに出るように長へ頼み込むのを見て、周囲にいるエルフたちは不快感を露わにした。


 「余所者のくせになんなの? 俺たちの小屋を欲しがるなんて」


 「本当だぜ。少しはこっちの身になれってんだ」


 村人たちは、ジョンに聞こえるように話し出す。


 あまりにも露骨な態度に、ジョン以外の面々は不満げな顔を浮かべた。


 「何とも煮え切らない態度だな。これだからエルフは……」


 ボブスが吐き捨てるように愚痴をこぼす。


 「お主らは、少し黙っていてくれんか。……ジョンさんでしたな。私の家で話しましょう」


 「いいでしょう」


 ジョンと村長が、連れ立って村長の家へと向かう。


 泥と藁を練り込んだレンガ造りの広い平屋には、光を取り込むための窓がいくつか取り付けられていた。ボロボロの煙突に付いている風見鶏が、村長宅の目印となっている。


 「村の者たちが失礼な態度をとって悪かったね。我ら種族は余所者を好まない上に排他的だ。どうしても当たりが強くなってしまう」


 「大丈夫ですよ。下手におべっかを使われるよりはマシですから」


 ジョンは、先ほどまでの卑屈な様子とは打って変わり、紳士的な、それでいて先の態度を皮肉るような口調で話し出した。


 「私は、この村をもっと栄えさせたいと思っているんです。街道から少し脇に逸れた農村ゆえに、往来する人々のほとんどをラテラルに持っていかれてしまう現状を変えたいのですよ」


 「それは余計なお世話というものです。国境の村というものは、常に隣国からの脅威にさらされる。規模が大きくなれば、より狙われやすくなるのです」


 村長が村の置かれた厳しい環境を説明すると、ジョンは渋い顔で彼を見つめた。


 「村長、無理強いをして申し訳ない」


 ジョンは立ち上がると、出された飲みを一気に飲み干した。


 「ご馳走様」


 「待ってくれ」


 村長が立ち上がり、ジョンに歩み寄る。


 「あの小屋は村の共有物だから売ることはできないが、あなたを手伝うことはできる」


 「どのような?」


 「村の出入り口にある風車小屋をお売りしよう。あれは私が個人的に所有しているものだからね。それに、あそこには浮浪者やゴロツキが寝床にしていて、不安だったんだ。もし、あんたらが管理してくれるなら助かる」


 村長の意外な提案に、ジョンは困惑した表情を見せ、しばらく扉のノブを握ったまま立ちすくんでいた。


 「そんなことをしていいのかい? 他の村人たちに嫌な顔をされるんじゃ……」


 「金を払ってくれるまっとうな取引だ。文句を言われる筋合いはない」


 「ありがとう。これで仕事がうまくいくよ」


 ジョンは交渉成立の証として、村長と握手を交わした。


 ジョンたちが外に出ると、村人たちが村長の周りに集まり、話がどうなったかを聞こうとしていた。


 「しかし……でも……分かりました」


 ジョンは、ボブスに村長からの提案を報告する。


 「拠点確保ができて重畳ちょうじょうですな。あとは荷馬車を持ってくるだけです」


 「その通りだ。町に戻るとしよう」


 ジョンとボブスは、村の入り口に繋いでいた馬に跨り、帰路についた。

 

≪現在のジョンが所持している物一覧≫

 財布 チップ0枚

 倉庫 なし

 所持 拳銃 M1905 1丁 コルト・ニューポケット1丁 モーゼルC96 1丁

    弾薬 38口径 40発 32口径コルト 25発 7.63×25㎜マウザー弾 40発

    両刃ナイフ 4本

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