第17話 ファミリー
ジョン・マクノエンは、ガティールの帰還を出迎えた。
「ジョン。今帰ったぞ」
「ガティール。丸々任せてすまなかったな。こっちも紹介したい人がいるんだ」
ジョンは、ガティールを連れ、先のガイン達が使っていた隠れ家へと向かった。
「今度から、俺たちに協力してくれるボブス達だ。よろしくやってくれ」
「流れ者のオーク『ボブス』だ。後ろに控えているのは、儂の教え子である『ソウル・レコード』と『ラピドゥス』だ」
「それと、運送係を纏めてくれる『マント』君だ」
新たな4人を紹介されたガティールは、しばらく思考が停止した後に、慌てて頭を下げた。
「ガティールだ。ヨロシク頼む」
「何とも、利口なオーガだな。今後とも、よろしく頼むよ」
「ハイ。こちらコソ」
ガティールが礼儀正しく受け答えると、横にいるジョンが、くすくすと笑っていた。
「お前の方が兄貴分なんだ。年下であってもな」
「アニキ分?俺がデスカ」
「そうだよ直。今後とも頑張って行こうじゃないか」
ジョンは、ガティールの肩を叩いてニンマリと笑った。
「トコろで、どうしてクラレットさんの店ニいる使用人が、ここニ居るんデスカ?」
「彼には、表での運送業務を仕切ってもらう予定なんだ。今は、一人しか居ないがね」
ジョンの言葉に、マントは不満そうな目つきで睨み付けていた。
「奥様から、頼まれたので来ていただけです。あなたの為じゃありません」
「そんなことを言うなよ。仕事がうまく行けば、お前の雇い主も喜ぶと思うからさ」
「そんな、軽口を」
「お前さんが考えていた事とは、違うかも知れないが、『教えて、広める』ってことは、出来るんじゃないか?」
ジョンの説得に納得していないマントは、複雑な顔をしながら考え込んだ。
「では、ガティール。今後のうちの仕事について説明しよう」
「仕事?」
「ボブス君。頼むよ」
ジョンの言葉に答えるように、ボブスが地図を拡げて見せた。
「俺達が根を下ろした『五大樹連盟メルシェン』は、背後の山脈と北西にある広い湿地帯により、物流に大きな制限を受けています。更には、主要物流路であるマーゼン公国などの『旧南部王国』は、高い関税を敷くことで、圧力をかけています」
「確かニ。マーゼンに至ってハ、人の行き来にスラ税を設けテイルからな」
「関税は、多少なら物価の安定に寄与するが、掛け過ぎれば厄介な重荷になります。ここに、私とジョンは、金の臭いを嗅ぎ付けたのですよ」
「金の臭イ?」
話に追いつけないガティールが頭を傾げていると、ジョンが微笑みながら説明する。
「いいか。今交易で使われている街道は、俺たちが往来した道だけだ。だが、この街に伸びる街道を少し横に逸れれば」
ジョンが指差したのは、マーゼンとメルシェンにまたがる広大な森林地帯であった。
「『ジャンガラの森』を抜ケルっていうのカ!恐ろシイ事を考えル物ダナ」
「聞いているよ。森を仕切っている『レイロム』ってやつらがいるんだろ。そのへんは、これから話していくが、うまくこじ開けるつもりさ」
「だとイイノだが。あの者達ハ、自身の住処ガ荒ラサレるのを嫌ウので」
ジョンに説明されたガティールは、少し不安を抱えながら地図を見ていた。
「じゃあ。俺は、少し離れるから」
ジョンがそう言って、スピークイージーの扉を開けた。
「いらっしゃいませ。ジョン様」
入るなり、リッチが営業スマイルで出迎えた。
「その『ジョン様』っていうのやめてくれよ。店に入るたびに、こんなこと言われてるとこそばゆくて行けない」
「ですが、お客様を呼び捨てにするわけには……」
リッチが苦笑いを浮かべながら、ジョンの呼び方を考えていた。
「では、『Mr.ジョン』とさせていただきましょう。ところで、今日はどういったご用件でしょうか?」
「そうだった。実は、換金とこれを渡しに来たんだ」
ジョンは、装飾されたバックルを手渡した。
「こちらですね。ところで、今のチップ所持数について覚えていないのですか?」
「それが、財布とかを持ち合わせていないから、ポケットに直で入れてあるんだよ。いい財布とかないのか?」
「そうでしたか。でしたら、これをお使いください」
リッチは、茶色い革製の財布を手渡してくれた。
「こいつは?」
「試しにチップを入れてみて下さい」
リッチに促されるように、ジョンがチップを入れると、財布の表面に一本、斜め線の傷が入った。
「この傷って、財布の中身を示しているのか?」
「ええ。こいつは、あなたが入れているチップの枚数に連動して、傷が刻まれる形になります」
「何とも、分かりやすい財布だな。傷で示すってのは、ありがたい」
「是非とも活用していただきたいです」
ジョンが財布を眺めながら呟く。
「そして、こちらが換金したチップです」
リッチは、5枚のチップを手渡した。
「ありがとよ。……って、少し少なくないか?」
「それは、こちらに作った物の費用としていただきました」
リッチは、ガレージの横に新しくできた扉を開けて見せた。
「こちらは、今後Mr.ジョンが買われた商品を管理しておく倉庫となっております。どうぞ活用ください」
《ゴールデン・トゥエンティーズの倉庫について》
ジョンがゴールデン・トゥエンティーズにて購入した商品をしまう用の倉庫。
基本は、リッチが仲介した商品や、ジョンが持ち歩かない物を管理している。
ただし、正面のドアプレートに書いてある積載重量の制限があり、拡張するためにはチップを使い拡幅する必要がある。
また、ジョンが元の世界から持ってきたものを収納することはできず、入れた場合はチップへと換金される。
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リッチが開いてくれた倉庫を眺めながら説明を聞いたジョンは、さっそく持っていた拘束用の**錬魔石**を置いてみた。
すると、目の前に置いてあった石が、扉を閉めた後に一枚のチップに代わっていたのである。
「こいつは、換金所として使った方が楽そうだ。お前さんに通さなくていいから」
「冗談はやめてくださいよ。今後は、依頼された品物をこちらに置かせてもらいますので、活用してください」
「そうさせてもらうよ」
ジョンは、カウンターの席に戻ってから、少し真剣な顔をしていた。
「リッチ。交渉ごとに使えそうな小道具を用意してくれねぇか。出来れば、小さいのがいい」
「なるほど。でしたら、前回の依頼の品を持ってくるであろうお客様が、もう少ししたら来店なさいますから、その方にお話をされては?」
リッチの言葉に合わせるように、奥にあったベルが入店を知らせてくれた。
≪現在のジョンが所持している物一覧≫
財布 チップ6枚
倉庫 なし
所持 拳銃 M1905 1丁
弾薬 38口径 40発




