第16話 新たなたくらみ
ジョン・マクノエンとキャッシーが、隠れ家からカギとなる錬魔石を持って出てくると、車内に残っている子供たちの拘束を解いていった。
「もう大丈夫だよ。安心して」
「今解いてやるからな」
二人が子供たちを解放していると、クラレット・シュナウがマントを連れて駆け寄って来た。
「ジョン! その子たちはどうしたの?」
「納品物だったみたいだ。金品だけだと思ったが、人攫いまでやっているとはな」
ジョンは、少年少女たちを指し示しながら、クラレットへと説明する。
「まさか、あの子たちもアイツが……。でも、どうして」
「詳しくはわからんが、おそらく《《そういうもの》》に使うんだろうさ」
ジョンは、卑猥な手つきをクラレットたちに見せる。
「一体何してるの? その手の動きは」
「……いや、何でもない」
クラレットが分かっていない様子なのに、ジョンは呆れたように答えた。
「ところで。この子たちをどうするんだ? 正直、助けた後のことを考えてなくてさ。このガキどもの受け入れ先、心当たりはないか?」
「そうねぇ。私のツテでどこか探してみるわ」
クラレットとジョンが話していると、座っていたボブスがこちらに近づいてくる。
「それなら、儂が預かろうじゃないか」
「ボブスさんが!」
横にいたキャッシーが、驚いた表情で声を上げた。
「おっさん、あんた何を考えているか知らねぇが、信用もねぇのに任せられるかよ」
「でもジョン、私たちがどうこうできるわけでもないでしょう?」
「はぁ。それは、そうだが……」
ジョンとキャッシーが困り顔で、ボブスに視線を戻した。ジョンが口を開く。
「完全にお前さんに任せることはできねぇ。だが、人手が足りないのも事実だ。……キャッシー、お前も共にこのガキどもを見てやってくれ。頼むぞ」
「なるほどな。……まぁ、儂としては、この老いぼれを雇ってくれる者がいるなら構わないよ」
「決まりだ。じゃあ、お前さんの名前を教えてもらっていいかな?」
「流れ者のオーク『ボブス』だ。世話になるよ」
ボブスがそう言って手を差し出すと、ジョンが応えるようにその手を掴む。
「ジョン・マクノエンだ。よろしく頼む」
妙な笑みを浮かべる二人に、横にいるクラレットが少し不安そうな顔を向けていた。
「ボブスよ。お前さんの下にいた奴らを呼んできてくれるとありがたいんだが」
「いいのかい?…… ありがとよ」
ジョンがそう言うと、ボブスは驚いた表情でジョンの顔を見つめた。
「なんで、儂の下に人がいるって、なんで気づいたんだい?」
「お前さん、それなりに繋がりのある人間だろ。話し方や素振りから、そんな感じがしてな」
「何とも、驚かされる御仁だ」
ボブスが指を鳴らすと、後ろに控えていた者たちが現れた。
「儂が従えている、影読みの『ソウル・レコード』、先駆けの『ラピドゥス』だ。こいつらは儂が育て上げた子たちだから、十分に動いてくれると思うぞ」
「よろしくお願いします」
「よろしくです」
二人がそう言って頭を下げると、ジョンは二人の肩を叩く。
「よろしく頼むぞ、二人とも。……こいつらの面倒も頼んでいいかな?」
「もちろんだ。俺からしてみれば、動ける若手がいてくれるなら嬉しいもんだよ」
「それならありがたいな」
二人を迎え入れたジョンは、そのままボブスとシノギなどの話について言葉を続けた。
「すまねぇが、俺はこの世界で流行っている商売について詳しくねぇ。お前さんみたいなベテランに教えてもらえねぇか?」
「構わんよ。お前さんの下につくからには、それぐらい問題ない」
「ありがとな。まずは、この辺りで流行っているモノについてだ」
「そうだな。このエルフ国家においては、『飯屋』というべきだろうな。内陸国家で物流も乏しいこの辺りじゃ、ちょっとした飲食店でもかなりの利益を生むだろう」
「飯屋でか。ふーん……」
ジョンは少し頭をかいた後、何かを閃いたかのようにクラレットへ視線を送った。
「クラレットさんよ。輸送網について教えてくれるか?」
「いいけど、どうするの?」
「なに、俺なりにちょっと考えがあってな」
「なんですか? なんだか怖いんですけど」
ジョンが怪しげに微笑む横で、クラレットが不安そうな視線を送る。
「クラレット。あんたの所にいるマントを借りられるか?」
「マントを?」
「ああ。あいつがちょうどいい」
ジョンが考えているのは、一体何なのか――。




