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第14話 略奪

 ラテラルから西南に50kmほど進んだところにある小さな農村集落「モー」。


 数枚の麦畑と粉砕用の風車が一台、数軒の民家が建っているだけの静かなモーに、似つかわしくない黒塗りのT型フォードが止まっていた。


 黄金の20年ゴールデン・トゥエンティースを使って入手したで馬草ガソリンを与えられ、快調に唸る愛馬の横で時間を潰していたジョン・マクノエンとガティールは、偵察に出しているキャッシーの帰りを待っていた。


「受け取りの馬車が来ました」


 向かってくる馬車を捉えたキャッシーが、ジョンのもとに戻る。


「そうかい。それじゃ、出迎えの準備をするか」


「はイ」


 ガティールは、脱いでいたジャケットを羽織り、ジョンから受け取ったバックルを身に着ける。ジョンも、オーバーオールの前ポケットにM1905を忍ばせた。


「いいか。一瞬で片を付けるぞ」


「了解です」


 二人はジョンに応えるように深く頷いた。


「よし! 配置に付け」


 ジョンの号令で、キャッシーが村の入り口にある馬小屋に音もなく忍び込む。ジョンとガティールは、こちらへ向かってくる馬車を平然と出迎えた。


 しばらくすると、ガラガラと木製の車輪を鳴らしながら入ってきた馬車が、ジョンの前で止まった。


「よう! ワザワザ遠いところスマナいな」


「なんだ? 酷い喋り方だな。いつもの奴はどうした」


「野暮用デ留守にシテイル。これが、証拠だ」


 ガティールがベルトのバックルを外して見せると、馬車の男が降りてきてそれを確認する。


「確かに。それで、納める品はどこだい?」


「隣の馬小屋に置イテアリます」


 ガティールがそう言って、馬車の男たちを案内する。


「おい、どこにあるんだ?」


「ココだよ!」


 ガティールが叫ぶと同時に、**血石ジャスパージャスパー**によって鋭く硬められた拳が、ついてきた男を殴り倒した。


「がはっ!」


「何しやがる!」


 もう一人の同行者が短刀を引き抜き反撃に出ようとしたが、次の瞬間、炸裂音と共に硝煙の香りが漂った。ジョンの放ったM1905が、男の眉間に大穴を開けていた。


「残念だな。おめぇ達に渡すもんはねぇんだよ」


 ジョンが吐き捨て、転がっている死体を見下ろす。


「キャッシー、この死体の片付けを頼む。ガティールは、俺と馬車に乗ってくれ」


「了解」


「あと、次話すときは俺がやる。ガティールの口調は癖が強いからな」


「すいまセン……」


 ジョンは男の帽子を奪って深く被り直し、ガティールを促した。


 暗闇が濃くなってきた頃、ジョンたちの乗る馬車にもう一台の馬車が近づいてくる。


「おお、待たせたな」


「遅かったじゃないか。どこかで迷子にでもなったかと思ったぜ」


「ちょっとしたトラブルがあったんだよ。それより、荷下ろしを手伝ってくれ」


「わかったよ。おい、手伝ってやれ」


 ジョンが合図し、彼とガティールが馬車を降りる。そのまま、相手方の男たちに牙を剥いた。


「な、何をする!」


「残念だったな。あっちの連中は、もう片付いてるぜ」


 ジョンが相手に組み付きながら告げると、ガティールが組み伏せた相手から「ボキッ!」という嫌な音が響いた。


「おいおい、いくら何でも早すぎだろ。まぁいい、こいつにはすぐ天国チェーロへ行ってもらうがな」


 ジョンはそう言って、組み敷いた男の喉元に拳を叩きつける。


「ごっ! はか……ッ」


 呼吸ができなくなった男は、もがきながらナイフを取り出そうとしたが、ジョンの腕がそれを封じる。


「お前さん、いいもの持ってるじゃないの」


 奪い取ったナイフを軽く吟味した後、ジョンはその刃を男の胸元へ一気に突き立てた。


「……ぅ、ぅ……」


 刃の隙間から溢れ出る鮮血が、次第に細くなっていく。


「ご苦労様だったな」


 ジョンは死体を地面へ転がした。


「ジョン! これを見テくれ」


 ガティールが、幌の掛かった馬車の荷台を検分していた。


「おやおや。金だけだと思っていたが、こんなものまでシノギにしているとはな」


 そこにいたのは、他種族の子供たちだった。

 彼らは「商品」として護送されており、手足に「光る輪」を嵌められ、力なく横たわっていた。


「これは、簡単に解けるものか? 前に言ってた『錬魔石れんませき』ってのを使ってるのか」


「その子たちの鎖を解くには、共鳴する錬魔石が必要になります。もしかしたら、隠れ家にあるかもしれないです」


「隠れ家って……ラテラルまで戻らなきゃいけないのか?」


「はい」


「そこまでこの状態ってのは、流石にかわいそうだな」


 キャッシーの説明を聞き、ジョンは少し考え込んだ後に持っているカギを握りしめた。


 「二人とも、子供たちを車の後ろの席に乗せてやれ。キャッシーは、助手席に乗れ」


 「一体何ヲスルんだ?」


「馬車より早い、こいつで行くんだよ。ガティールは、馬車に荷を積み替えてから戻ってきてくれ」


 「あ、アア」


 こうして、日が昇り始める麦畑の真ん中でジョン達が慌ただしく子供を運び入れることになった。

 



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